いつでもどこでも便利に使えるスマートフォン。携帯電話会社によって、利用できるエリアに違いはあるが、NTTドコモはエリアや通信品質などで常に高い評価を受けてきた。ところが、この半年ほど、各地で「ドコモがつながらない」という声を多く耳にするようになった。NTTドコモのモバイルネットワークに何が起きているのだろうか。
SNSやWebページが表示されない?
日々の生活や仕事に欠かせないスマートフォン。アプリやブラウザを起動すれば、すぐにWebページやSNSが表示され、最新の情報を知ることができる……と言いたいところだが、この半年ほど、NTTドコモのユーザーから「リンクをタップしてもWebページが表示されない」「つながっているはずなのに、データが流れてこない」といった声を聞くことが増えている。なかにはビジネスユースにおいて、「仕事に影響が出るので、他社の回線のスマートフォンを併用することにした」といった話も耳にする。2022年、KDDIで起きた全国的な大規模障害と違い、この半年間のNTTドコモのトラブルは、利用する場所や時間帯によって、つながったり、つながらなかったり、通信速度にもかなりバラツキがあったとされる。
NTTドコモと言えば、国内でもっとも古くから携帯電話サービスを提供してきた会社であり、エリアや通信品質などでは常に高い評価を得てきた。他社は郊外や山間部で圏外になってしまうのに、NTTドコモだけはつながって、連絡ができたといったエピソードもよく聞かれ、多くのユーザーにとって、『信頼のブランド』に位置付けられていた。そんなNTTドコモのモバイルネットワークがどうしてつながりにくくなってしまったのだろうか。
NTTドコモが挙げた「つながりにくさ」の理由
こうしたネットワークがつながりにくいという状況に対し、NTTドコモは2023年4月に開催された「5Gネットワーク戦略説明会」で、はじめて言及した。説明会は今後、同社がどのように5Gネットワークを進化させていくのかを説明するためのものだったが、質疑応答では2023年に入ってから、同社のネットワークがつながりにくいと指摘されていることについて、質問が集中した。
NTTドコモはネットワークがつながりにくくなった理由として、「コロナ禍が終息し、人流が大きく変化したこと」「街の再開発などによって、基地局の撤去や新設、人流の変化があり、エリアが変動したこと」「瞬速5Gのエリア展開が順調に進んでいないこと」「特定の周波数帯域が混雑していること」を挙げていた。ちなみに、「瞬速5G」とはNTTドコモに割り当てられている5G用周波数帯域を使って展開されるエリアを指す。
2023年4月の説明会では「つながりにくい」理由として、コロナ禍が明けたことによる通信量の増大、再開発などによるエリアの変動、瞬速5Gのエリア展開の遅れなどが挙げられた
説明会において、NTTドコモがつながりにくさの原因として挙げた課題は、確かに説明されてみれば、その通りだが、冷静に考えると、納得できない部分もある。たとえば、コロナ禍が明けたことによる人流の変化や再開発によるエリア変動は、NTTドコモだけが影響を受けるものではなく、他社でも同じように起こり得るはずだ。しかし、KDDI(au)やソフトバンクではNTTドコモのような「つながりにくさ」を訴える声は、あまり聞かれない。後発で自社ネットワークのエリア展開がまだ途上中の楽天モバイルは、単純に比較できないものの、エリア内であれば、普通にデータ通信が利用できており、NTTドコモのような問題は起きていない。
こうした状況に対し、NTTドコモは4月の段階で、4G LTEを提供中の800MHz帯がカバーするエリアを調整し、混雑しないようにしつつ、ユーザーのトラフィックを2GHz帯、1.5GHz帯、1.7GHz帯へ分散するように制御する方針を打ち出していた。
複数の周波数帯域の電波が利用できる場所においては、周波数間の分散を制御することで、混雑を緩和しようとしている