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なぜドコモのネットワークはつながらなくなったのか?「つながりにくい」に見え隠れするNTT再編の影響

2023.10.20

ソフトバンクの説明会で明かされた各社の5Gネットワークの違い

 国内各社は2020年3月から5Gサービスの提供を開始しているが、現在の5Gネットワークは「NSA(Non Stand Alone)」と呼ばれる方式が採用されており、既存の4G LTEのコアネットワーク(携帯電話網の中核をなす設備)を組み合わせる形で構成されている。NSA方式はすでに運用中の4Gコアネットワーク設備を流用できるため、5Gサービスを導入しやすいというメリットがある。将来的には、5G専用のコアネットワークで構成する「SA(Stand Alone)」方式に完全移行する予定で、NTTドコモはごく一部でスポット的にSA方式での接続を実現している。

 現在、提供されているNSA方式による5Gサービスでは、まだエリアが狭く、スポット的に利用できる場所が多いため、既存の4G LTEの帯域を無線通信の制御のための「アンカーバンド」として使い、ユーザーの接続状況に応じて、5Gネットワークにつないだままにしたり、5Gエリアから外れると、4G LTEに切り替えるといった制御を行なっている。

国内各社の5Gモバイルネットワークは現在、4Gコアネットワークを利用する「NSA」方式で運用されている。「SA」方式が利用できる場所はまだごくわずか(2023年9月に開催されたソフトバンクの説明会の資料より抜粋)

 ソフトバンクが開催したネットワークの説明会では、NSA方式で運用される5Gネットワークにおいて、いくつかの課題があることが挙げられていた。たとえば、当初は5Gのエリアが狭いこともあり、エリアの端(セルエッジ)では通信品質の低下が起きやすく、データが流れない『パケ止まり』や『パケ詰まり』といった事象が起きやすくなっている。その結果、4G LTE方式のアンカーバンドに通信が集中したり、4G LTE方式の通常のエリアも混雑してしまう。

 ソフトバンクでは早くからセルエッジの通信品質に注目し、アンカーバンドを面で展開したり、ユーザーの端末の電波状態に応じて、通信を5GとLTEでバランスさせるなどの対策を採ってきた。通信品質についてもネットワーク側の品質だけでなく、ユーザーの端末側の品質データを、100mから1kmのメッシュ単位で全国を区切って集めるなど、ビッグデータを積極的に活用した解析と対策に取り組んできたという。

ソフトバンクによれば、過渡期の5Gでも面展開することで、5Gを積極的に利用できるようにネットワークを構築しているという

 ここでひとつカギを握るのが前述の「DSS」を利用した転用5Gエリアの存在だ。ソフトバンクはアンカーバンドを面で展開しつつ、ユーザーの状況に応じて、転用5Gエリアを含む広い5Gエリアに接続したり、4G LTEに切り替えるなどのリバランスを採ることができた。ユーザーの端末が4G LTE対応ばかりであれば、4G LTEのネットワークが混雑するが、幸い、ソフトバンクは5G対応端末のラインアップが豊富で、ユーザーが転用5Gエリアを含めた5Gネットワークに接続できれば、順調にデータが流れるため、4G LTEのネットワークの混雑もある程度、抑えることができたわけだ。

ユーザーの端末を5Gネットワークに導くためのアンカーバンドにトラフィックが集中してしまうため、ユーザーの状況(電波状態など)に応じて、ユーザーを制御し、トラフィックをコントロールしている

 これに対し、サービス開始当初、5G用の周波数帯域でのエリア展開を重視したNTTドコモは、5Gのエリアがスポット的だったうえ、アンカーバンドも十分に面展開ができなかったため、より混雑が顕著に表われてしまったわけだ。

 ソフトバンクはこうしたネットワークの品質について、同社の子会社「Agoop」が開発したアプリやSDK(ソフトウェア開発キット)を通じ、ユーザーの端末から情報を得ており、対策に役立てているという。ソフトバンクではユーザーの端末が通信を要求し、インターネット上のサイトからデータが流れてくるまでの時間などを分析することで、ユーザーの体感速度が可視化できると考え、ソフトバンクのネットワーク説明会では、Agoopが提供する各社の通信品質の分析結果が示されたが、4社のうち、ソフトバンクがもっとも通信品質が優れていることが明らかにされた。他の3社については、「A社」「B社」「C社」という表現だったが、グラフのカラー分けから、A社がKDDI(au)、B社がNTTドコモ、C社が楽天モバイルと推察され、4社のうち、NTTドコモの通信品質がもっとも芳しくないという結果が示されることになった。

ソフトバンク独自の評価指標で通信品質を評価したところ、ユーザーの体感が快適と推定される青い部分はソフトバンクがもっとも多く、A社(KDDI)とB社(楽天モバイル)がこれに続き、B社(NTTドコモ)は全体的にレスポンスが低調であることが明らかになった

 また、ソフトバンクは2023年の夏、各地で開催された夏フェスのX(旧Twitter)での反応をAIで分析したところ、ソフトバンクとA社(KDDI)はネガティブな投稿が少なかったものの、B社(NTTドコモ)は2社の30倍以上、C社(楽天モバイル)は4倍前後のネガティブ投稿があったことも明らかにされた。ちなみに、こうしたSNSの反応に対する分析は、各社のネットワーク運用センターを見学したときにも見えており、KDDIは数年前から、運用センターの巨大なメインスクリーンにSNSのネットワークに対する投稿を表示するなど、積極的に情報を取り込んでいた。

ソフトバンクは夏フェスでSNSの反応を調べたところ、ソフトバンクとA社(KDDI)にネガティブな投稿が少なかったものの、B社(NTTドコモ)が30倍前後のネガティブ投稿が見られた。C社(楽天モバイル)は夏フェスが郊外で催されるため、エリアが不十分で、ネガティブな投稿がやや多いようだ

 通信品質で明確に差が見えてきた背景には、5Gネットワークのエリア展開の違いだけでなく、各社が販売する端末ラインアップや販売への取り組みなども少なからず関係している。ソフトバンクはより多くのユーザーが5Gへ移行できるように、高価格路線のiPhoneだけでなく、シャープやGoogle、シャオミ、OPPOなどの端末も採用し、リーズナブルな端末も積極的に拡販してきた。auは端末ラインアップを絞り込む傾向にあるが、やはり、手頃な価格の端末を増やし、ユーザーが自然に5Gへ移行しやすい環境を整えている。

 対するNTTドコモは、NTTグループの方針からか、シャオミやOPPOなどの端末を採用できず、シャープやサムスン、Google、ソニーの端末を中心に採用している。リーズナブルな価格の端末は、選択肢がそれほど多くないうえ、5Gエリアが限られているため、残念ながら、ユーザーが積極的に5Gに移行したくなる環境を醸成できていないのが実状だ。

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