マリコンから自律航行船まで高度な技術をどう育てるか
ここ数年で洋上風力発電の開発が急ピッチで進められているが、その背景には日本政府が、2050年までにCO2の輩出をゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指していることがある。その工事を行うのは「マリコン」と呼ばれる海洋工事を専門とするマリンコントラクターたちで、会場では最新の技術や設備がいろいろ紹介されていた。
洋上風力発電の建設には高い技術力を持つマリコンの存在が不可欠になっている。
宇宙より過酷な現場で働くダイバーのスーツは宇宙服よりもいかつい。
船は法律で定められているため基本的に人が操船する必要があるが、人手不足は海の分野でも深刻なことから、自動車と同じく自律航行技術による自動化が進められている。
世界ではエネルギー資源を運ぶタンカーを無人化する実証実験が始まっているが、接岸だけでも自動化されれば、船を操縦できる人は増やせる可能性がある。そうした技術の登場によって公共交通として水上ルートを用いるという話もあり、まずは遊覧船での実証実験が始まっている。
自律航行船は効率良く運行できることから、カーボンニュートラルにもつながると言われている。さらに一歩進んで、商船三井は軽量なグラスファイバーでパネル状の帆を作り、自動で操作できる現代版の帆船技術「ウインドチャレンジャー」の実証実験を始めている。帆は後付けができ、1枚でも省エネ効果があることがわかっている。また、その帆を複数積んだ無人船で水素を製造するという、斬新なアイデアも計画が進められている。
商船三井は最新テクノロジーを活用した次世代の帆船を造ろうとしている。
海を取り巻くテクノロジーは最先端のディープテックとして価値が高まっており、それを活用したビジネスはブルーオーシャンになりつつある。日本でも市場を盛り上げるために新規参入を後押ししたり、人材育成に力を入れたり、いろいろな動きはあるがまだ認知度は低く、TONが展示会を無料公開しているのも、海に関心を持つ人たちを1人でも増やしたいという思いが感じられる。世界とつながる海がレッドオーシャンになる前に、もっと多くの人たちが海洋テクノロジーの重要性に着目してほしいものである。
テクノオーシャン2023(Techno-Ocean 2023)
取材・文/野々下裕子