「えっ?これ人が書くよりすごいじゃん」――多くの人が衝撃を受けたChatGPT。米国発のOpenAIが開発した自然言語処理AIだが、簡単に誰でも試すことができるうえに、APIやプラグインによってサービスが簡単に作成できるのも特徴だ。日本でもChatGPTをはじめとしたOpenAIによる自然言語処理AIモデルを利用した新たなサービスが増えている。
今回は、中でも工夫された切り口で展開されている3つを取り上げる。
INCLUSIVE〜有名人のチャットボットとAI音声技術を活用したロボット
メディア企業のDXを支援するINCLUSIVE株式会社は、今年6月、ChatGPTなどの生成系AI技術をメディア運用とコンテンツ制作に応用する研究に取り組む「INCLUSIVE AI Lab」を設立した。
同ラボではOpenAIによる自然言語処理AIモデルGPT-4のAPI連携を用いて実業家・堀江貴文氏による過去10年分のメルマガやインターネット上にあるテキストのアーカイブから、堀江氏の性格や知見を学習させたチャットボット「堀江貴文ChatBot」を開発。今年8月上旬から1ヶ月間、メルマガ購読者を対象にβ版の運用を行っている。
さらに「AIホリエモン」として、堀江氏の声を元に作成した合成音声や、静止画を写真にしゃべらせるAI技術などを活用したデジタルヒューマンの制作も行っている。
ChatGPTやGPT-4とは異なるが、先日は人気放送作家、ラジオパーソナリティでもある小山薫堂氏の考えそうなことを発言するAI「クンドロイド」を開発し、ラジオにおいても本人欠席の中、「声のフォント」を活用して小山氏が発言するという試みを実施。クンドロイドには、株式会社CoeFontが提供する AI 音声プラットフォーム「CoeFont」が使われている。
同社の代表取締役社長 藤田誠氏に、「クンドロイド」開発に至った背景を聞いた。
「AIホリエモンを開発していることを知った小山氏から『自分が夏休みをとる際にAI小山薫堂で放送できるか?』と打診されたことをきっかけに開発が始まりました。2023年8月5日のFM横浜のラジオ番組『FUTURE SCAPE』で試験的にクンドロイドを使用。準備期間が短かったこともあり、十分な音声データを確保できなかったので、放送中の音声品質には若干の物足りなさが残りましたが、現状の技術の限界を把握した上で、運用面での工夫を随所に取り入れました」
●今後の展望
今後の展望について、藤田氏は次のように述べる。
「AIと音声合成の技術を活用することで、企業や個人の日常的な音声コンテンツ制作の自動化と省力化を推進するほか、構築したデジタルアナウンサーをIP(知的財産)として収益化するビジネスモデルの構築も視野に入れています。例えば、合成した音声を会社の決算発表動画に使用するサービスや、サイト上からユーザーの探している情報を見つけて、サイト上の『案内人』が音声で案内してくれるようなサービスなども構想中です」