物販による売上を大幅に引き上げた要因
ANYCOLORの収益性が高いのは、IPを活用して物販で稼いでいるためです。YouTubeの広告であるアドセンスは収益分配になるため、この領域をいくら伸ばしても利益率の改善には結びつきません。
2024年4月期第1四半期のにじさんじは、売上高のおよそ7割を物販で稼いでいます。アドセンスなどの動画配信による収入は1割程度と高くありません。なお、UUUMはアドセンス経由の収入が売上高全体の4~5割を占めています。
※決算説明資料より
にじさんじが販売しているキャラクターグッズは、ボイスと呼ばれる声優の会話劇が収録されたデジタルグッズや、缶バッジ、キーホルダーなどの原価のかからないものが中心。こうしたグッズを買うファンを引き付けていることにANYCOLORの強さがあります。
上のグラフを見ると、物販の売上が2024年4月期第1四半期に急伸しているのがわかります。ANYCOLORは既存のVTuberのコラボユニットであるROF-MAOや、VOLTACTION、ChroNoiRのプロモーションを強化しました。
新たなファン層を開拓し、物販の購入に結びつけたのです。
カバーはIPをフル活用する仕組み作りの構築が成長のカギ
ANYCOLORの競合で、「ホロライブ」の運営を行っているのがカバーです。ビジネスモデルはほぼ同じ。ホロライブには宝鐘マリンや兎田ぺこら、白上フブキなどの人気VTuberが所属しています。兎田ぺこらは日清食品のテレビCMにも出演しており、一般の人々にも認知度の高いキャラクターです。
カバーの2024年3月期の営業利益率は17.4%。高収益体質なのは間違いありませんが、ANYCOLORと比較をすると見劣りがします。カバーは営業利益率の長期目標水準を30%に設定しており、その目標を達成してもANYCOLORを超えることができません。
カバーの物販は売上高の4割程度。配信で3割を稼いでおり、収益分配が基本となる広告や投げ銭経由の比率が高くなっています。
また、ホロライブが展開する商品は、受注生産の原価がかかりやすいものが多くを占めています。大量生産品を売りさばいて効率的に稼ぐANYCOLORとは売れ筋商品が違うのです。
カバーは現在、ぬいぐるみなどの大量生産品の販売に力を入れています。また、IPを活用して企業とコラボレーションを行い、効率的に稼ぐ方法を模索しています。