VTuber「にじさんじ」の運営を行うANYCOLORが、6月8日にグロース市場からプライム市場に市場区分を変更しました。新規上場からわずか1年での市場区分の変更は異例と言えるでしょう。メルカリですら4年かかりました。
飛ぶ鳥落とす勢いのANYCOLORの強さはどこにあるのでしょうか?競合であるカバーやUUUMと比較しながら、強さの源泉に迫ります。
【参考記事】ショート動画の流行で収益性が悪化したUUUMに復活の道筋はある?
キズナアイから始まったVTuberの歴史
VTuberはアバターで動画配信を行うVirtual YouTuberを指します。2016年に最初の動画を投稿したキズナアイが元祖と言われ、一時は絶大な人気を誇っていました。キズナアイはActiv8という会社が生み出したキャラクターで、ゲーム会社のgumiなどから資金調達を重ねていました。
Activ8は人気の絶頂期だった2019年に分裂騒動を起こしてファンの不安を煽るなど、マネジメントを十分に効かせることができませんでした。キズナアイは最も登録者数の多いVTuberでしたが、現在は活動を休止しています。
ANYCOLORは黎明期の2017年5月に設立され、2018年2月から「にじさんじ」の活動を開始しています。1期のメンバーには、2022年12月に登録者数100万人を突破した月ノ美兎がいます。
YouTuberのマネジメント会社であるUUUMの営業利益率は、業績が好調だった時期でも7%には届きません。その一方で、ANYCOLORの2023年4月期の営業利益率は37.1%。2024年4月期は38.5%となる見込みです。
一見すると、両社のビジネスモデルは近い印象を受けます。
収益力で圧倒的な差を生んでいる主要因が、知的財産権(IP)。にじさんじに所属するキャラクターのIPはすべて会社が保有しています。すなわち、VTuberの声優はそのキャラクターをANYCOLORの手の届かないところで展開することができません。
これがUUUMとの違いです。UUUMはあくまでYouTuberのマネジメント事務所であり、YouTuberが契約に違反しない限りは、会社から離れるのを引き留めることができないのです。
かつてUUUMは人気YouTuberの離反を引き起こし、そのリスクを露呈しました。