人間が生み出したものとの差別化が必要
さらに「もしもAI利用を規制するとしたらどのような規制が望ましいと思いますか?」の問い(複数回答可)に対しては図7の通り、「学習元として利用することに了承した著作物のみを使用し、無断学習に罰則を設ける」および「AI生成物であることを明示する」を約80%の人が選択しており、ここでも著作権への意識の高さ、また人間が生み出したものとの差別化が必要だとの意識がうかがえる。
(図7:「もしもAI利用を規制するとしたらどのような規制が望ましいと思いますか?」)
各設問に対する回答をアニメ業界従事者のみに絞ると、非アニメ業界従事者と比べて全体的にAIに対する期待が強いことが数字に表れている。
それでも全体の数字としては規制を強めるべきとの見方が優勢ではあるが、非アニメ業界従事者の75.5%が「全面的に/例外を除いて規制すべき」であると答えた一方で、アニメ業界従事者で同様に回答した割合は57%にとどまり、新しい技術への期待が見て取れる。これは、常に人手不足、長時間労働といった環境に置かれている業界だからこその結果と言えるかもしれない。
(図8:「AIの使用に関する規制について、あなたはどのように考えますか?」アニメ業界従事者/非アニメ業界従事者の比較)
ただし手放しに新しい技術を歓迎しているとは言えないことが、フリー記述欄からわかる。アニメ業界に従事する人たちのフリー記述欄の意見に目を移すと、最も多く使われた語句は「期待」と「懸念」であり、生成AIそのものに対する懸念の声もある一方で、現場の人手不足解消、負担軽減を期待する意見も多くみられた。
ただ、効率化のためのAI活用を希望する人でも「著作物をほぼ無規制に使用しているような現状では、むしろ文化や市場の破壊、衰退につながる」「学習元の著作権問題をクリアにしない限り商用では使えない」などの声が多く、現状のままでのAI活用を期待するという声はほとんど見られなかった。先述の規制すべきか、の設問(図5、6)へ「どちらとも言えない」が多く選択された背景はこの辺りにあるものと推察される。
さらに著作権や学習元データに関しては海外の動向にも意識が向けられており「海外で規制が進む中で日本のみ規制がされなかった場合、日本製の創作物へ偏見の目が向けられる可能性がある」との声も複数見受けられた。その一方で「日本だけ規制をしても海外がしていなければ意味がない」との声もあり、両方の意味で海外と歩調を合わせることが重要であるとの意識がうかがえる。
加えて、アニメ業界従事者のコメントから読み取れる懸念としては「創作性、創作意欲の低減」が多く見られた。
(図9:「人間がAIを活用して創作する上で、あなたがAIに期待していること、懸念していることを教えてください」の回答をタグクラウドにしたもの
総じて、アニメ業界従事者は非アニメ業界従事者と比べてAI技術への期待は高いものの、「一部又は全面的に規制すべき」との声が過半数を占めることがわかった。AIの活用により制作現場の負担が減ることを期待する声も多くある一方で、学習元データの権利関係があやふやな現状でAIを早急に制作現場に投入することについては懸念が残る人が多いこともわかった。
<調査概要>
・調査期間 :2023年6月9日〜6月30日
・調査主体: 一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)
・調査対象:NAFCA会員およびSNS利用者
・有効回答数:3,854件
・調査方法:Webアンケートツールを用いたオンライン調査
出典元:NAFCA
構成/こじへい