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処理水放出問題で中国に進出している日本企業への影響は?

2023.10.02

中国の日本企業は大丈夫?

現在広州に住んでいるが、こういった動きは一部のような気がする。実際に私は日本人と分かっていながらも中国人から嫌な行為をされたことはなく、広州の人は親切で、よく助けられている。また、日本が好きな人も多く、特に日本のお菓子、文房具、食べ物は非常に人気だ。

日本の水産品は非常に高く気軽に食べられるものではなく、一部高級日本食屋が取り扱っており、気軽に買えるようなものではない。

以下、中国で身近となっている日本企業にどのような影響が出ているか紹介する。

■ FOOD&LIFE COMPANIES(銘柄コード:3563)

国内首位の回転ずし「スシロー」を展開する会社で、中国に積極的に進出している。

広州にもたくさん店舗があり、広州では他の回転ずしチェーンがほとんどないためスシローの独占状態で、私自身も大変お世話になっている。中国大陸の店舗数は2023年8月時点で20店舗、香港は5店舗となっている。物価が高いのもあり、価格は10元~(200円~)で日本のスシローよりは高い。

他の日本回転ずしチェーンに比べて、中国での出店数が圧倒的に多いスシローは、処理水問題の影響を受けているだろうか。

まず、中国に出店しているスシローは日本からの水産物輸入停止により、日本産水産品が輸入できなくなる調達リスクがある。24日に処理水を放出した日は売りが先行し株価は一時下落したが、すぐにプラス圏に戻った。

実際にスシローに行くと回転している寿司ネタは、日本国内の店舗と少し異なっており、日本産のものが少なくそこまで調達リスクは低いように感じる。

そもそも前述した通り中国で日本産の水産物は高いため、目玉として値段の高い日本産の寿司ネタを期間限定で出されるのは時々見かけるが、常にあるメニューではあまりない。

また、風評被害による客足が少なくなったかどうかは、広州市内繁華街にある店舗の予約欄を見ると、8月24日以降土日のごはんどきの時間は20時頃まで常に満席となっている。さらに、中国では宅配が主のため宅配で頼んでいる人も含めると、処理水の影響で客足が遠のいているようには見えなかった。

■ 資生堂(4911)

処理水の問題は、なぜか日本化粧品にまで飛び火。水産品のように直接輸入停止となるような措置はないが、不買運動として中国ソーシャルメディアでトレンドとなった。

資生堂は中国を第2の拠点とするぐらい中国に注力している。実際2022年売上構成比で中国が24.6%と、日本22.6%、アジアパシフィック6.2%、アメリカ13%、ヨーロッパ10.5%と比較して最も高い。2023年には中国売上高比率は30.4%まで上がる予定で、非常に大きい成長源となっている。特に中国でのEコマースは伸びが大きく、ソーシャルメディアでのインフルエンサーなどの投稿も重要だ。

処理水の問題で、インフルエンサーが資生堂に関する投稿を控えるようになったとも報道されていたが、9月時点で中国版ツイッター微博(ウェイボー)の投稿を見ると、フォロワー100万人超のインフルエンサーが資生堂化粧品の正しい使い方や紹介をしており、不買運動があった処理水放出直前に比べると落ち着いてきたようだ。投稿のすぐ下には、資生堂の公式ショップのリンクがあり、すぐにネット購入ができるようになっている。

一方、科学的根拠はなさそうだが、日本の化粧品や日焼け止めのデメリットを挙げ、中国国内品のメリットを挙げる投稿も散見される。その背景として、中国国内の化粧品メーカーが成長してきており、中国国内化粧品が若い世代を中心に人気となってきている影響だろう。

ただ、日本の化粧品は、ドラッグストアで比較的安く購入できるような化粧品でも、インターネットショッピングサイト「淘宝(タオバオ)」で約1.5倍、実店舗で約2倍の価格。さらに、高級な資生堂の化粧品ともなればさらに高く、中国国内化粧品を購入する層とは全く異なるように感じる。そもそも、処理水の問題は化粧品と全く関係なくこのような不買運動は一過性に過ぎないと考えられる。

さらに、中国からの日本への団体旅行客が解禁され免税で安く購入できる免税店などの「トラベルリテール」の増加が期待できる。中国では9月29日から始まる大型連休では新型コロナウィルス感染症拡大前の2019年比と比べて国内線が17%増と、国内旅行がかなり好調で、国際線も2019年の5割の水準とかなり戻ってきている。国際線でなくても、中国では海南島、マカオのように免税店が充実していることからトラベルリテールの増加は見込めると考えられる。

また、中国国内では街中ではマスクをしていない人が増えてきており、国内の化粧品需要はさらに増えそうだ。

中国の国内景気にリスク

以上により処理水の問題はそこまで深刻ではないように感じるが、中国で展開している日本企業のリスクとして中国国内の景気がある。

不動産市場や消費がコロナ後思ったように回復しておらず、支援をしようにも地方政府が大きな債務を抱えており、大幅な財政出動をしにくい。また、金融緩和をすればさらなる元安で元が国外に流出する恐れがあるため大幅な金融緩和にも踏み切りにくい状況となっている。

繁華街でも所々廃墟となっているビル、工事が途中から進んでいないマンションを見かけることがあり、都心を離れると住んでいない新しいマンションも見かける。

実際、2023年8月の新築住宅価格は、52都市が前月から下落し、上昇したまたは横ばいの年は18都市で、2023年3月以降下落する都市の数の割合が多くなっており、過剰債務の不動産市場がどうなるかは不安の種ではある。

(参考)
処理水ポータルサイト | 東京電力 (tepco.co.jp)

文/大堀貴子

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