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モノからコトへ、自動運転モビリティで双日が目指す商社の新しいビジネス像

2023.09.29

 千葉市にある千葉動物公園の広さは東京ドーム約7倍超の約34万㎡、展示動物は111種585点(2023年5月現在)。特にゴリラの飼育は国内動物園では最多である。

 千葉動物園では、10月から数カ月に渡り自動運転歩行速ロボ「ラクロ」(ZMP提供)を使った園内ガイドの実証実験を開始する。国内初のプロジェクトを推し進めるのは、昨日の記事で紹介した園長の鏑木一誠(61)と、総合商社の双日である。なぜ総合商社が自動運転ロボを使った園内ガイドを仕掛けるのか。その思惑は何なのか――。

前編はこちら

社会問題解決に自動運転の役割は大きい

 双日株式会社 自動車本部 自動車第三部 担当部長の金子雅昭(59)は、自動運転ロボットの開発・製造・販売のベンチャー企業ZMPの出向社員でもある。もともとロシア、ウクライナで機械やプラントの輸出、レアメタルの調達、日本車の販売ビジネスに30年ほど携わった。駐在員生活が終了し、日本に戻ったのが2016年4月。

さて、日本でどんな商売を手掛けるか。金子雅昭は言う。

「帰国してすぐに、多くの若者が犠牲になった軽井沢のスキーバス事故や、福岡ではタクシーが病院に突っ込む事故が起きまして。いずれも高齢化問題が背景にあります。地方の路線バスの縮小や廃止、買い物難民がクローズアップされたり、労働人口の減少が深刻な問題となっている。それら社会的な課題の解決に自動運転車が担う役割は大きいと」

自動運転車を活用したビジネスモデルの構築を目指し2017年、自動運転ロボの開発・製造メーカー、ZMPにビジネスパートナーとして手を組むことを持ち掛ける。2019年には第三者割当の増資に応じ、双日がZMPの株を取得し、金子がZMPに出向した。

自動運転ロボ、ラクロの手ごたえ

 千葉市動物公園での自動運転ロボ、ラクロの実証実験は、当時の熊谷俊人千葉市長(現千葉県知事)との話し合いが最初だった。「自動運転車の実証実験をやりましょう」そんな双日側の提案に、千葉市役所内の“国家戦略特区推進課”と協議が重ねられた。2019年10月頃だ。当時は道路交通法改正前で、自動運転車の実証実験の申請手続きが複雑だったが、動物園等の限定したエリアなら手続きのハードルは低い。

その頃、ZMPの役員が千葉市動物公園の鏑木一誠園長と、前職で知り合いだったことから、将来を見据えた動物園内での自動運転ロボの実装の話が交わされていた。二つの案件が重なり、動物園とZMPと双日が意気投合。自動運転ロボを使った園内ガイドが実現する。

使用するラクロは1台。来園者の安全の妨げにならないよう時速は4km。コースはゾウ、キリン、カンガルー等の展示舎を回る一周約350mの「草原ゾーン」。展示舎の前でタブレットを操作すれば、園のスタッフが作成した音声ガイドが聞ける。

ところが、新型コロナウイルスによる非常事態宣言で2020年3~5月は臨時休園に。鏑木園長の熱い思いで、家にいながらラクロの臨場感が味わえるオンライン動物園を2020年5月17日に実施。視聴回数約2万回、PCからのラクロの遠隔操縦2千人以上と、予想以上の高結果を得た。

2020年6月、動物園開園とほぼ同時に4日間にわたる来園客が乗車しての実証試験を開始、1日に35人乗せることができるラクロはほぼフル稼働。翌年の21年6月、6日間の2回目の実証実験は新たにレッサーパンダ等の展示舎加えたコースを増設し予約サイトも新設。それらの詳細は昨日アップした千葉市動物公園の項でも触れた。

2回目の要は70km離れた遠隔操作

実証実験の費用と人を全面的にバックアップしたZMP側の双日、金子雅昭は言う。  

「園内のポニーに乗るのに、料金設定を500円にしている。自動運転ロボのラクロの乗車は初体験だし、500円以上は取れると」

 一人800円、ペア走行が1600円、この料金設定も実証実験の一つだった。

「2回目の実験ではラクロを1台増やして2台にしました。多くの来園者に楽しんでもらいたかったし、1回目の実験ではラクロの後ろにスタッフが付いて、PCを通して操作しながら園内を回った。2回目は70km離れた文京区内のZMPの社屋から、複数台のラクロの遠隔操作の実証実験をやってみたかったんです」

 結果は上々、アンケートでは再乗車の希望が98%。満を持してこの秋から開始する実証実験は、来年3月末までの長期間が予定されている。

“物売り”から“コト売り”へ

双日が費用と人材を投入して、自動運転車を動物園で走行させるには、どんな理由があるのか。実証実験が意味するものは何だろうか、金子は話を続ける。

「千葉市動物公園での長期の実証実験で、ビジネスモデルの基礎が蓄積できれば、それをもとに応用できるわけで」

双日としては動物園だけでなく、水族館、テーマパーク、美術館、博物館等、さらに観光地や地域の活性化、スマートシティの移動等にも、自動運転ロボを導入する事業展開を模索している。それらがビジネスとして成立するのか、データを取り、クリアすべき数値に達しているかを可視化し、改良すべき点を炙り出すためにも、動物園での実証実験は大きな意味を持っている。

「商社は今まで物売りをやってきましたが、時代は大きく変わってきています」

物売りから“コト売り”へ――。

最新のアイテムを駆使したビジネスモデルのセールス。商売もまた、イノベーションの波に即して、加速しているというわけである。

取材・文/根岸康雄

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