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ビルの一角で人知れずスタート!?三菱地所がアート×ビジネスでめざす実験的プロジェクトの中身

2023.09.27

アーティストが集まり街と交流することで、イノベーションを起こす。

そんな実験的プロジェクトが、有楽町で行われている。三菱地所とNPO法人大丸有エリアマネジメント協会、一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会による有楽町アートアーバニズム「YAU(ヤウ)」だ。

大手町や丸の内と隣接する日本有数のビジネス街として知られる有楽町で、なぜこのような取り組みをしているのか。アーティストと街との交流を促すには何が必要なのか。

有楽町の街づくり第一弾の記事に続いて、今回はYAU実行委員会の一人である三菱地所 プロジェクト開発部 有楽町街づくり推進室 チーフで大丸有エリアマネジメント協会の中森葉月さん、YAUの運営に関わりながらパフォーミングアーツのプロデュースなどを手掛ける一般社団法人ベンチ代表理事の武田知也さん、現場でYAUの運営にあたるアートマネージャーの金森千紘さんに詳しく話を聞いた。

(写真左から)舞台芸術プロデューサーで一般社団法人ベンチの武田知也さん。三菱地所 プロジェクト開発部 有楽町街づくり推進室/大丸有エリアマネジメント協会 アートアーバニズムマネージャーの中森葉月さん

有楽町に現れた“多様でゆるい”1200㎡の広大なオフィス兼アートスタジオ

作品制作に取り組む人のいる横で、オンラインのビジネスMTGの声が聞こえる。別のエリアへ足を向けると、身体を動かしポーズを確認する姿や、資料をみながらPCで文章を綴る姿もみえる。

JR有楽町駅と地下鉄日比谷駅に挟まれた有楽町ビル10階に「YAU STUDIO」がオープンしたのは2022年5月のこと。足を踏み入れると、冒頭のように竣工から50年以上が経過したの建物の外観からは想像も及ばない“多様でゆるい”空間が広がる。

このようなアーティストとビジネスパーソンの共存する特異な空間は、なぜこの有楽町の地に立ち上がったのか。

YAUの内観。アーティスト作品の展示がされるなど自由に活用されるほか、フロアは緩やかに区切られアート関連職と大丸有のビジネスパーソンと多様な人が入り混じる(写真/加藤 甫)

「YAUはプロジェクトです。ビジネスではありません」

そう話すのは同プロジェクトをまちづくりの立場から牽引する、三菱地所 プロジェクト開発部 有楽町街づくり推進室の中森葉月さん。

YAUが掲げる「アートアーバニズム」とは、ビジネス街の都市活動にアートが持つ創造性を結集するまちづくりの指針のこと。単に「アート作品がある街」にしていくのではない。アーティストを街に呼び込み、大丸有のビジネスパーソンや企業と出会い、アーティストの活動に触発されることで都市のクリエイティビティと多様性が向上する。そんな仮説を検証するプログラムとしてYAUは有楽町を舞台にスタートした。

目指しているのは、いわば有楽町を舞台としたアート×ビジネスの実験的な取り組み。施設としての営利を追求するためのビジネスではない実証実験という性質をもつプロジェクトのため、具体的な着地点は定めていない。そこに化学反応が起きる余地がある。そう考え、オフィス街にアーティストの居場所をつくる「YAU STUDIO」や、そこにビジネスパーソンなどエリアの人々を招き入れるSALONイベント、有楽町各所にて展示・パフォーマンスなどをおこなう「YAU TEN」、東京藝術大学による社会人も参加できる公開授業、アート相談窓口、など数多くの施策を行うことで、あらゆる種まきをし続ける。

大企業の新規事業、舞台や保育園のワークショップまで創出

舞台『今ここから、あなたのことが見える/見えない』(2022年11月公開)の一場面。YAUを介して倉田翠さんと大丸有エリアのワーカーとの密接なコミュニケーションから生まれた(写真/加藤 甫)

そうした取り組みの結果、有楽町ならではの共創がすでに生まれている。

1つは、2022年に有楽町のオフィスビルを舞台とした、演出家・振付家・ダンサーの倉田翠さんが演出したパフォーマンス『今ここから、あなたのことが見える/見えない』。同作品はYAUが開催し「大手町・丸の内・有楽町で働く人たちとパフォーマンス? ダンス? 演劇?をつくるためのワークショップ」と大丸有エリアで働く30名以上のビジネスパーソンへのインタビューをもとに創作された。

出演者もこのエリアで公募されたビジネスパーソンたち。企画・プロデュースをした武田知也さんによれば、「オフィスで仕事をした後にYAUにやってきてパフォーマンスの練習に参加し、終わるとまた仕事に戻っていく」ビジネスパーソンもいたという。一人ひとりの人生や仕事内容、パーソナリティが色濃くパフォーマンスに反映された。

企業とのコラボレーションも進む。全日空商事の新規事業開発における美術鑑賞プログラムが一例だ。新規事業のテストケースとしてYAUでつくられた本プログラムは、参加者が鑑賞方法や作品の背景を教えられないまま二人一組となり、「この作品から何を感じたか」を自由に語りあうというものだ。

全日空商事はANAグループにおける唯一の総合商社。新規事業としてアート販売に乗り出しながら、「アーティストと協働する」道を模索していた。そんな同社にYAUはアーティストを紹介したほか、プログラム開発にあたってのアドバイスやコーディネートを行った。

「YAUをきっかけに今回全日空商事と協働したアーティストの佐藤悠さんは、対話しながらアートを鑑賞する独自のプログラムを手掛けている方。『アートを社会により広く浸透させるには、アートへ感じる難しさのハードルを下げる取組みが必要なのでは』ということで、佐藤さんと全日空商事とが組み、新たに鑑賞プログラムを開発することに。

一般的に大企業は、新規事業を立ち上げるにも『なんとなく、小さく試してみる』というのがやりづらいのだと思います。ビジネスとしてアートを手掛ける際も。最初から大きな予算や目標を立てることを課せられてしまいがちではないでしょうか。

でも本来、実験的な事業であるほど小さく始め、少しずつ手応えを得ながら立ち上げていくのがいい。YAUならその『なんとなく』の段階から相談に乗り、伴走できるのも特徴ですね」(中森さん)

YAUと有楽町の保育園でコラボレーションしたワークショップ。講師役のアーティストもアサイン

さらには有楽町の保育園と共創したワークショップを行うなど、地域社会への貢献も目指すと語るのは、YAUの運営にあたるアートマネージャーの金森さん。きっかけは、「有楽町『Slit Park YURAKUCHO』」経由でYAUに届いた相談だった。

「その内容は、有楽町エリアに勤めながら子供を預けることができる保育園から『アクティビティの時間に何かできないか』という相談でした。このあたりは子どもが遊ぶ場所といっても皇居や日比谷公園を散歩するぐらいしかありませんから」(YAU運営金森さん)。

そこでSlit Parkを会場に企画されたのが、自分が着たTシャツの背中をキャンパス替わりにして絵を描く「背中で語ろう」ワークショップ。アーティストの村田峰紀さんと一緒に、子供たちは「自分が着ている服に絵を描く」という非日常を楽しんだ。

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