オーストラリアには定期運航している豪華寝台列車がいくつかある。そのうち最も人気と言えるものが大陸中央部南オーストラリア州の州都アデレードから、途中中央部の小都市アリス・スプリングスを抜け、ノーザンテリトリー(北部準州)の州都ダーウィンまでの2979キロメートルを走破する「大陸中央部縦断列車」の「ザ・ガン」だ。
青空に生える真っ赤なディーゼル機関車。ボディー中央には「ザ・ガン」のロゴマーク。
料金は2泊3日(所要時間は54時間)で最低でも2475豪ドル(約23万3000円)、最高で5475豪ドル(約51万6000円)。座席車はなく、すべて寝台車(昼間はソファー風座席になる)。全席個室(1人用または2人用)。
食堂車での3食、食堂車やラウンジカーでの朝から晩までアルコールを含む全飲料飲み放題、途中3ヵ所での下車観光がつくとはいえ、それなりの額と言えるだろう。
だが2004年の運航開始以来、これが売れに売れている。実際に乗車してその秘密を探ってみた。
停車中でも線路内は立ち入り禁止。これは特別な許可をとって撮影したもの。
豪華なだけでなく大勢乗車の長ロング列車
ここまで読んできた読者の中には「JR九州のななつ星のほうが高いだろう」と思われる方もいるだろう。確かに「ななつ星」は3泊4日で一人115万円から(雲仙コース。2023年10月~2024年3月)。だが「ななつ星」は機関車を除く7両編成で、乗車定員はわずか20名。限られた「富裕層向け」の特別列車と言えるだろう。
一方オーストラリアの「ザ・ガン」はどうか。客車は全部で36両(平均値。繁忙期と閑散期で増減する。以下同じ)。これには客車以外に、食堂車、ラウンジ、電源供給車などが含まれる。
全長は902メートルとほぼ1キロに近い。分速80メートルとして端から端まで歩くのに10分以上かかる。
ちなみに日本で最長の列車は「旅客」の場合東北・秋田新幹線の「はやぶさ」「こまち」の17両編成。長さでは東海道・山陽新幹線の「のぞみ」などで使われるN700系とN700Sの約404メートルとのこと。
乗車定員は283名。ツイン個室の個人利用などもあるとはいえ、少なくとも200名くらいは乗車しているだろう。
これを週2往復。つまり週800名している。1泊2日のコースも含めて最大で月5回程度運行の「ななつ星」の乗車定員は月合計100名だから、オーストラリアではその何十倍もの人たちが豪華寝台列車の旅を楽しんでいることになる。