■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、Nothing、モトローラから発売された新型スマートフォンについて語りつつ、2023年秋スマホの展望を話し合っていきます。
メーカー第2弾スマホNothing Phone (2)の評判
房野氏:Nothing Technologyから、第2弾スマートフォンとなる「Nothing Phone (2)」が発表されましたね。
石野氏:端末の良し悪しはさておいて、事前に情報提供を受けた際に結ぶNDA(秘密保持契約)を勝手に変更する、広報の姿勢にちょっと疑問を感じました。
石川氏:Nothing の広報に関しては、昨年の段階から言われていたよね。発表会の会場に行くかどうかも迷ったくらい。
石野氏:今回に関しても、発表会から石川さんが帰られた後にNDAの内容が変わりましたよね。Nothingからは端末の情報解禁日と、レビュー内容の情報解禁日が決められていましたが、どこまで情報を出していいのかのタイミングが変わっています。
石川氏:そもそも、記述した内容を変更するのがNGなNDAを、簡単に文字が消せる鉛筆で書かせちゃダメでしょ。コピーをくれって言ったら、なんとか電子データでくれることになったけど。
石野氏:結果として、こっちがサインしたNDAを、同意もなく3回も無断で書き換えているんですよ。
石川氏:こういうことがトラブルの元になる。
法林氏:Nothingに関しては、端末自体は悪くないけどね。
石野氏:端末価格も安いですしね。
法林氏:そう。うまく作っていると思う。ただ、それでも昨年のNothing Phone(1)が出て以来、約1年間でこれだけメディアでの露出が少ない理由は何かというと、PRの段取りが悪かったからとしか思えない。
石野氏:マーケティングがどれだけ大事かという話ですよね。アップルやサムスンはマーケティングにかなり力を入れています。
石川氏:マーケティングも過渡期に来ているというか、ただ単にメディアを相手にしていればいい時代ではなくなってきている。Nothingも、発表会の前段階で有名なYouTuberに端末を貸し出していて、動画が出ていたりします。それを許すなら、我々が結ぶNDAはなんなのかという話にもなる。公開情報じゃんっていうね。結局、情報解禁日になってみたら、日本だけは発表会の情報しか出せないのに、世界中に貸出機を持ってレビューできる人がいる状態だった。
今はもう、紙媒体やWebメディアだけを相手にするのではなく、インフルエンサーのような人たちとうまくやらないといけないのが、メーカーや広報の悩みどころだと思うし、我々の立ち振る舞いも考えないといけない。
石野氏:コントロールをうまくやってくれればいいですけど、いかんせんそれが下手。結局、Nothingは日本支社がなくて、Nothingの本社が、PR会社を遠隔でコントロールしている状態ですから、うまくいくわけがないですよね。
石川氏:これまでいろいろなメーカーが日本に参入してきましたけど、こんなにひどいケースは記憶にないです。
法林氏:発表会だけやって、端末は発売されなかったメーカーとかもあったけどね。
石野氏:ありましたね。
石川氏:PR会社や広告代理店が自分たちの思い込みでやってみたけれど、メディアにいまいちはまらないってこと、結構ありますよね。