「ただ砂糖を抜くだけ」では無糖の商品は完成しない
無糖のミルクティーの開発に、8年もの時間を要したという。「甘さ控えめ」でも「微糖」でもなく、「本当に甘くない無糖」の商品を作るために苦戦した点について、佐々木さんはこう語る。
「『単純に砂糖を抜けば無糖のミルクティーが完成するわけではない』という点が一番大きなハードルでした。商品として無糖を謳うには、法定の基準を守る必要があります。実は、ミルクの中にも乳糖という糖分が含まれていおり、それが基準値を超えてしまうだけでも、無糖とは言えないんです」(佐々木さん)。
市場にないものを作ることの難しさ
メインでこの開発に携わったメンバーは、マーケティング担当2名、開発担当2名の計4名。開発のプロセスについて、佐々木さんは次のように振り返る。
「無糖の基準をクリアするためのミルク原料や、茶葉の選定がスタート地点として必須でした。今まで市場にない商品を開発するため、無糖のミルクティーをどのような味わいにしていくか、どのようなお客様に手に取ってもらいたいのかを明確にしていく過程に難しさがありましたね。ミルクが濃厚な無糖のミルクティーもあれば、すっきりとした味わいのものもあるように、幅広い味わいの方向性があると思うんです。我々はどういう商品を作って、どのようなお客様に、どうやって飲んでもらいたいのかを、初めてのカテゴリーの中でも明確に指示を出していくことが必要でした」(佐々木さん)。
紅茶を飲むシーンをさらに広げていきたい
2011年に「おいしい無糖シリーズ」が誕生して以来、佐々木さんは「紅茶を楽しむシーン」が広がっていると感じるという。
「無糖シリーズは、食事のシーンや仕事中の水分補給に水やお茶の代わりとしても飲めるような『紅茶の可能性』を広げてきました。今回のミルクティーも、これまでのおいしい無糖シリーズ同様、日常で飲むシーンをどんどん広げていけたらなと思っていたんです。そのために、すっきりとした味わいのものを、魅力的に仕上げていきたいという開発の狙いがありました」(佐々木さん)。
無糖の基準値は、法で定められているものの、それを達成するのは容易ではなかったという。そうした開発時の苦労について、佐々木さんは次のように振り返る。
「開発の方から、『今まで試飲していたものは無糖じゃなかった』と言われたことがありました。基準としてはクリアしていても、作っていく中でどうしても多少の誤差が生じます。『100%無糖と言い切れるものを作るため、糖の基準値を我々の中でもう少し下げた方がいい』という話になったんです。商品としては美味しいと思っていましたが、1からやり直しをしたこともありましたね」(佐々木さん)。
〝午後の紅茶らしさ〟を大切に
では、「おいしい無糖ミルクティー」に引き継がれている〝午後の紅茶らしさ〟とはどのような点にあるのだろうか。佐々木さんはこう回答してくれた。
「茶葉にしっかりとこだわりを持って作っている点が、『午後の紅茶』の大切な要素です。有糖の商品でもスリランカの有名茶葉を使用するなど、茶葉の産地にもこだわっています。原料やおいしさへのこだわりは、午後の紅茶が一貫して大切に守っているブランドの価値ですね」(佐々木さん)。
イギリスのアフタヌーンティーの文化を日本にも取り入れようとしたのが「午後の紅茶」の起源。今回の開発にも、原料へのこだわりの姿勢が引き継がれていた。