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女性トラックドライバーが語る、現場を知らない人々が招いた物流「2024年問題」の舞台裏

2023.08.26

過去にはドライバー歴3年で家が経つ時代も

橋本さん 今では信じられないかもしれませんが、お店をもったり、すぐに家を建てようと思ったら、トラックドライバーで稼ぐという時代がありました。某大手運送会社では「3年走れば家が建ち、5年走れば墓が立つ」と言われたぐらい、稼げる職業だったのです。

それが1990年の規制緩和により、4万5000社程度だった運送会社が6万3000社まで激増します。当然、荷物の奪い合いとなり、運賃の値下げが始まります。ドライバーへのしわ寄せも大きく、荷主の下で検品、仕分け、棚入れ、棚卸し、陳列といった付帯業務作業まで、ドライバーが無料で行うようになったのです。

さらに条件やスケジュールの関係で、自社で運べない荷物を同業に流す行為が横行。見事なまでの多重下請け構造が出来上がり、ピンハネに次ぐピンハネで実際に荷物を運ぶ会社は走っても赤字。赤字だけれど、次の仕事につなげるために断れないケースまで発生するようになったのです。

それだけではありません、休憩・休息期間尊守の徹底や、「安全走行のため」と言いながら現場を知らない人が作ったルールが定められて、トラックドライバーは稼げなくなりました。こうした現状についても、新刊書では詳しく紹介しています。

トラック職はしがらみなく働ける

――最後に橋本さんから、トラックドライバーという職業の魅力について教えてください。

橋本さん 紹介してきた通り、過酷な労働環境ではありますが、それでも彼らがドライバーを続ける理由は、「その仕事が好きだから」。過酷な労働環境の話ばかりが先行しがちですが、トラックドライバーたちから言わせれば「この仕事は天職だ」という声がとても多いんです。

ホワイトカラーからの転職組も実はかなりいて、「営業ノルマに追われる日々に比べたら天国でしかない」「絶景絶品を楽しみながら、しがらみなく働ける環境はトラック職を置いてほかにない」という意見をよく聞きます。かく言う私も、今までの仕事のなかでトラックに乗っていた時間が一番好きです。

大きな車両に(なぜか定着している)コワモテのドライバーのイメージから、なかなか近寄り堅いという声も聞くんですが、彼らの多くは人恋しがり。道を聞いたらナビより詳しく教えてくれると思います。シャイな人もいるので一概には言えませんが(笑)

もっと彼ら企業間輸送のトラックドライバーたちが世間と身近な存在になるといいと思います。

――ありがとうございました!

「長時間労働の解消」を狙った労働改革なのに、当事者であるトラックドライバーの方は長時間労働には問題を感じていないなど、この本ならではの問題提起もたくさん。感動したり、ホロっとしたり、笑いながら読んで、トラックドライバーがちょっと好きになる一冊。物流の今を知る最高の参考書となっている。

橋本愛喜(はしもとあいき)
ライター。大阪府出身。父親が経営する工場でトラックドライバーとして日本各地を走る。日本語教師などを経て渡米。現在は日本の社会問題、ブルーカラーの労働問題を主軸として幅広いメディアで取材/執筆を行う。
Twitter:@AikiHashimoto
HP:https://aikihashimoto.com

やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます
KADOKAWA刊/定価1450円+税別

文/柿川鮎子

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