勤務地は南極！サラリーマン南極観測隊員はどんな1日を過ごしているのか

SDGsやESDへの関心が高まる中、極地観測が注目を集めている。しかし、最新の研究を日本企業の技術と人が支えていることは意外と知られていない。越冬隊の場合、南極での暮らしは14か月に及ぶ。サラリーマン隊員はどんな日々を送るのか。平日の勤務や休日の過ごし方、気分転換するためのお気に入りスポットなど気になる暮らしぶりを聞いてみた。

サラリーマン南極観測隊員に聞く南極ライフ

夏作業の白夜とは「一日中太陽が沈まない現象」、冬作業の極夜とは「一日中太陽が昇らない現象」。白夜だと作業時間は長くなる人が多いそう。

TAK-GRIT（竹中工務店より出向中）（第64次 夏隊）
田邊裕介さん
極地建設研究でCFRP素材の使用を見いだし実験や各種検証に従事。現地建設の状況も調査したいと、南極行きを志願。今年3月帰還。

三菱電機（第46次、第52次 越冬隊）
池田満久さん
2度目の夏作業は悪天候に大苦戦。「越冬中盤には生野菜がなくなるので、越冬明けに新鮮なキャベツが食卓に並ぶと歓声が上がりました」

ミサワホーム（第53次、第63次 越冬隊）
堀川秀昭さん
越冬隊として2度南極へ。未知の世界へのチャレンジを家族も後押し。「子供たちは無邪気に地図で南極の場所を探していました」

KDDI（第63次 越冬隊）
三井俊平さん
大学時代に南極に興味を持ち、院での修士論文はオーロラがテーマ。同社に入社し、念願かなって第63次隊として赴任。今年3月帰還。

ヤンマーパワーテクノロジー（第56次、第63次 越冬隊）
高木佑輔さん
2回目の越冬が終了し、今年3月に帰還。「越冬後半に衛星回線の性能が向上しスマホが大幅につながりやすくなったのが印象的でした」

　多くの隊員は下のようなスケジュールで日々を過ごし、休日は週に1〜2日。オフの過ごし方は人それぞれだ。

「隊員たちで『島めぐり倶楽部』というサークルを作り、天気のいい休日に基地の近くの島々を探検しました」（三菱電機・池田さん）

「好きなギターを練習したり、隊員でバンドを結成して演奏を楽しんだりしました」（ミサワホーム・堀川さん）

　昭和基地内にはバー、カラオケ、筋トレルームもある。

「極夜期はよくバーに集まってみんなで酒を飲んでいました。希望者がバー係としてバーテンダーに。お酒は飲み放題というわけにはいかず、在庫調整しながら飲んでましたね」（KDDI・三井さん）

　雪上車生活が主だった隊員も。

「移動が多く、任期の半分近くを雪上車で過ごしました。シャワーや洗濯は2〜3週間なしということもありましたが平気でしたよ」（竹中工務店・田邊さん）

　仕事でのやりがいは各ページで触れたが、それ以外で強く印象に残っていることを聞いた。

「やはり壮大な自然です。澄んだ空気、音のない世界、極夜前後の転がる太陽、空一面の星空、オーロラ。どれも強く印象に残っています」（KDDI・三井さん）

「基地ではシェフが豪華な料理を作ってくれるので何でもおいしいのですが、極寒な屋外で作業した後に雪上車の中で食べるカップラーメンもまた格別。忘れられません」（ヤンマー・高木さん）

「一緒に南極に行った16人と密に過ごした経験ですね。朝起きてから作業し、お酒を飲んで寝るまで、常にこのメンバーと一緒に過ごしました。年齢、職種、経歴などは全く異なります。40歳になって、これほど密に関わり仲良くなるということはなかなかない。おそらく一生連絡を取り合う仲間だと思います」（竹中工務店・田邊さん）

　深い経験は濃密な時間を物語る。

ミサワホーム・堀川さんのスケジュール。

基地内には理髪室があり、国内で講習を受けた理髪係が隊員の髪をカットする。髪を染める人やあえて伸ばし続ける人もいるとか。

お風呂は24時間いつでも利用できるようになっている。

様々なメーカーが食品を提供

森永乳業は長期保存可能な『森永とうふ』など自社製品8品目を第62次隊へ、フジッコは『手づくりカスピ海ヨーグルト™種菌セット』など自社製品50品目を第64次隊へ寄贈。

フジパングループは第8次観測隊から直近64次隊まで、57年間にわたり「冷凍パン」などを寄贈。南極でおいしく食すために、隊員に対して同社施設で冷凍パン作りの事前研修も行なっている。

取材・文／百瀬康司

写真提供／国立極地研究所、ヤンマー

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