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南極で1045本のアンテナをネットワーク化し大気研究を支える三菱電機の大型大気レーダー「PANSY」

2023.08.31

三菱電機

気候変動に影響を与える最大の要因とされている大気大循環。地球規模での大気の循環のことで、南極はこの出発点であるとともに終着点でもある。気候の未来予測のために大気大循環の観測が続けられている。

三菱電機南極では気象隊員が1日2回、ゴム気球を付けた観測機器を上空30kmに飛ばし、気温や風速などを測定。気候変動の監視に利用されている。

巨大システムは隊員の手作業によって完成

 南極研究の柱のひとつである大気の研究。それらを支えるのが、大気観測レーダー・PANSY(南極昭和基地大型大気レーダー計画)だ。アンテナ以外の全装置は三菱電機が製造。同レーダーの特徴を、同社の電子通信システム製作所の松田知也さんに聞いた。

「気象用観測レーダーはパラボラアンテナでの観測が主流ですが、PANSYは、昭和基地に設置された1045本のアンテナをネットワークでつないだ大気レーダーです。空間を瞬時に立体的に観測でき、雪や風などの気象現象から、地上数百㎞上空の超高層の大気現象まで調査できます。毎年、運転とメンテナンスのために社員を派遣し、東京大学と京都大学と国立極地研究所が中心となって行なうPANSYを使った大気観測の研究をサポートしています。観測データがさらに蓄積されれば、気候変動解明の一助になるはずです」

 レーダーの特徴のひとつは、過酷な環境にも耐えられる点。

「昭和基地はもっとも寒い8月の平均気温がマイナス20℃程度。度重なる試験の結果、マイナス35℃でも稼働できるレーダーを実現しました」(松田さん)

 ただ、輸送の関係で限られた重機しか持ち込めないため、1045本のアンテナはすべて手作業で設置。隊員として設置に携わった、同社の池田満久さんは語る。

「アンテナは、地面に深さ1mほどの穴を掘削機で掘り、そこに支柱を埋めて基礎とします。ただ、想定以上に岩盤が固い箇所もあり、1時間で数センチしか掘れないことも。『期限内に設置できるか』と不安でしたが、期限ギリギリに作業が終わった時は、メンバーで涙しました。大変ではありましたが、大気の観測データは人類の大切な財産。その蓄積に関われたことを誇りに感じます」

 その後、5年をかけて全システムの調整が完了。日々の観測も同社のメンテナンス技術が支える。

三菱電機アンテナ基礎の掘削以外はすべて手作業。また、大気レーダーは膨大な電力を消費するが、基地では発電能力に限界があり、従来の3分の1に消費電力を抑えるシステムを開発。

三菱電機三菱電機電子通信システム製作所の池田満久さん。前職で南極観測隊に参加。同社に転職後、2010年に第52次隊として南極へ。PANSYの設置などに携わる。

三菱電機データ処理装置や変復調装置などが並ぶ、通称「PANSY小屋」。点検・整備を隊員が担う。

三菱電機雪でアンテナが曲がると、観測結果に影響を与えてしまうため、レーダー周辺の除雪も隊員の大切な仕事。

取材・文/藤村はるな 写真提供/国立極地研究所、三菱電機

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構成/DIME編集部

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