ヒットアニメに見るの出資方式の変化
アニメ業界では長らく主流だった製作委員会方式だが、ここ最近はその傾向に変化が見られる。
代表的なタイトルが、2018年に第1シリーズが放送されたテレビアニメ『ポプテピピック』だ。「とびっきりのクソ4コマ!!」として知られる4コマ漫画が原作で、内容や声優(パートごとに異なる声優を起用していた)のみならず製作委員会方式をとらずキングレコードが単独出資した点にも注目が集まった。
また、アニメプロデュース会社であるツインエンジンでは、2019年放送の『どろろ』他、複数のテレビアニメを単独で出資・プロデュースしている。
冒頭でも話題に出した『鬼滅の刃』は製作委員会方式をとっているが、2019年の放送開始からシリーズ通して集英社・アニプレックス・ufotableの3社のみで製作されている。これは、出資企業が多くなることで生じる制約や不便さを回避するための策だったということだ。キー局が介入せず原作の出版社・アニメ企画会社・アニメ制作会社の3社のみで取り回しを行ったことで、『鬼滅の刃』は自由な表現や独自のプロモーション戦略を実行することができたといわれる。結果として国内外で大ヒットを飛ばし、少数精鋭製作の成功例として名を残すことになった。
さらに、アニメ製作現場の革新として注目を集めているのが、動画配信サービス=VOD(Video On Demand:ビデオ・オン・デマンド)の出資だ。米国発のVODプラットフォーム「Netflix(ネットフリックス)」では、制作会社やクリエーターと直接契約を結ぶ「パートナーシップ方式」の起用に力を入れている。これにより、アニメ制作会社(またはクリエイター)は自らが主体となって表現の制限や時間枠にとらわれないクリエイティブを叶えることができるという。
テレビを見ない世代が増え、Blu-rayやDVDなどのパッケージの売り上げが伸び悩む現代だからこそ今後の展開が期待される手法だ。
多様化していくアニメ製作の形
「製作委員会」をメインテーマに、日本のアニメ製作の仕組みについてお伝えした。
プラットフォームや視聴デバイスの多様化を含め、急ピッチで進化しているエンタメ業界だが、それに伴ってアニメの製作プロセスや現場の在り方も少しづつ変わりはじめているという。
『鬼滅』や『スラダン』以外にも、実写化が話題の『ONE PIECE』、世代やデバイスを超えて愛される『ポケットモンスター』、劇場版が軒並みヒットを飛ばす『名探偵コナン』など、日本で「人気アニメ」というと絞るのが困難なほど数多くある。
海外からも熱い視線が集まる日本のアニメ業界の変化は、今後も何かと話題になりそうだ。
文/黒岩ヨシコ
編集/inox.