モバイル事業に薄明かりも
楽天モバイルはキャリア4社のなかでも圧倒的に安く、無料キャンペーンを行っていたこともあり、2022年まで利用者は大きく増えた。
しかしながら、その後新規契約者は横ばい、そして解約する人も一定数いる。その解約理由の大半が通信品質の悪さだ。
楽天モバイルはこれまで基地局を増やし、データ無制限エリアは2023年3月までに4G人口カバー率は98.4%までとなった。しかし、繁華街や屋内、高層ビルの中ではつながりにくく、データが制限されることがあった。
通信品質を大幅に向上させるため、KKDIとローミング協定を組みau回線を借りることでカバー率が99.9%まで上げることになった。このことにより自前で設置するよりも基地局設置費用を3年間で3,000億円削減させ、当面の財務基盤の悪化を防ぐ。
将来的にはプラチナバンドの獲得も目指している。プラチナバンドは障害物等があっても回り込んで電波を届けることができる周波数帯をいい、現在3大キャリアにしか割り当てられていない。現在、楽天モバイルは再割当てを総務省に要望している。
現状、楽天モバイルの売上自体は延びているものの、他の好調な楽天グループの収益で補い切れないほどの設備投資による損失が出てしまっている。まだまだ設備投資は継続されるため、楽天グループの他セクションの収益で楽天モバイルの損失を補う状況は続く。
現在、本業がうまくいっていること、増資により資本が厚くなったことから、今すぐ債務超過に陥るということはなくなったが、長期的に見ると将来景気悪化により本業の業績が悪化すれば今でも不安定な財務基盤は揺らぐ可能性はある。
(参考)
日経新聞 2023年5月30日「ネット銀の預金、5年で2倍 高金利・ポイント武器に」
日経新聞 2022年10月8日「みずほが楽天証券に出資、勢力図はどう変わる?」
格付・社債情報|楽天グループ株式会社 (rakuten.co.jp)
楽天グループ株式会社 2023年度 第1四半期 決算説明会 (irwebcasting.com)
2022年度決算短信・説明会資料|楽天グループ株式会社 (rakuten.co.jp)
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文/大堀貴子