高齢化と労働人口減少が進む我が国日本では、企業の「人が採れない」問題が深刻になりつつある。とりわけ地方では労働力不足が顕著だが、副業やフリーランス人材に活躍の場を提供することで、活性化につなげたいと意気込む企業がある。
大手人材サービス企業で、転職サービス「doda」などを手がけるパーソルキャリアが、2023年5月25日に「HiPro」というプロ人材活用サービスの事業戦略を発表した。同サービスでは「スキル循環社会」の実現を目指し、地方へプロ人材などのスキルを“還元”する「スキルリターン」を実施していくという。
果たして地方創生に一石を投じられるのだろうか。また副業やフリーランス人材、プロ人材の活躍の場は本当にあるのだろうか。これらの人材が活躍するために必要な課題は何か。本記事で整理した。
スキル循環社会に求められる人材とは?
HiProとは、“可能性を広げたい個人と、複雑化する課題に対応したい法人の、タレントシェアリングサービス”と銘打ち、プロ人材や副業・フリーランス人材と企業とをマッチングするサービスである。提供元のパーソルキャリアによれば2022年度は対前年比125%のマッチング成約増があり今後も増加傾向である。また、企業が求める事業スキルテーマでは、①新規事業、②DX推進、③人事、④マーケティング、⑤営業の5領域の相談が増えているという。
■スキル循環社会(上)とスキルリターン(下)のイメージ
引用元:パーソルキャリア/HiPro
HiProが目指す社会の姿が「スキル循環社会」で、それを実現するための手段のひとつがスキルリターンである。
■プロ人材と企業をマッチングする「HiPro」
引用元:HiPro/パーソルキャリア
副業・フリーランス人材の必要性は高いと言えるが、理解のある企業はまだまだ少ない
令和4年版高齢社会白書によれば、2021年の生産年齢人口(15~64歳)は約7,450万人なのに対し、2060年には約4,893万人と3分の2に減ってしまう。約40年かけて3分の2となるので人手不足は中長期の課題と思いきや、2023年の今、すでにこの問題が深刻化しつつある。
帝国データバンクが2023年5月2日に発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)では、約半数の企業で正社員が不足しているという。(下図)
■人手不足に対する企業の動向調査
引用元:帝国データバンク
コロナ禍後の需要回復が見えてきているが、供給が追い付かないという条件があるとはいえ、正社員の人手不足だと答える企業の割合は「51.4%」と、過去10年を振り返ってみても割合が最大となった。
写真:パーソルキャリア「HiPro」事業戦略発表会より
登壇者:パーソルキャリア 「HiPro」編集長 兼 「HiPro」事業責任者 執行役員 鏑木 陽二朗さん
「日本企業が直面する人手不足に対し期待した成果を短期間で得られる即戦力を、いかに確保できるかという課題に対し、個人に帰属する『スキル』を活用できる企業が、日本経済の突破口を開くと言えます」(パーソルキャリア 執行役員 鏑木さん)
と、政府が後押しする働き方改革によって、副業を解禁する企業が増え、個人が持つスキルや経験を1社のみで活用する時代は終わった。本業と副業とで互いのスキルを循環させての生産性向上が必要だということがわかる。
しかし、経団連が発表した「副業・兼業に関するアンケート調査結果」では、企業の副業人材の受け入れを許可している企業は、全体の2割に満たない。(下図)
■社外からの受け入れを認めている企業の推移
引用元:経団連
2012年以前から比して、受け入れ割合の増加率が低い。人手不足とはいえ、副業やフリーランス人材にとっては企業側が優位な買い手市場となっているのが現状である。HiProの視点では、企業側の理解を得て、受け入れ先をどれだけ増やせるか。が事業成長のポイントだともいえる。業種別では、ITや金融・保険業、不動産業での受け入れ比率が高く、受け入れたことで、人材の確保のほか、新規事業創出や社外からの客観的な視点の確保ができたという効果の感じる企業が多かった。