こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
今回は【解雇裁判に勝ったときのビッグボーナス】について解説します。
億が一、解雇されたときのために頭に入れておきましょう。
法律は弱いもんの味方をするんやない。知ってるもんだけに味方するんや。
(「ミナミの帝王」の萬田銀次郎)
これは私が心にタトゥーしている言葉です。トイチの違法金貸しですが、メチャクチャ真理を突いてきます。最高の法律の教科書です。
法律知識は武器になるので、働く方に向けて知恵をお届けしています。
では参ります!
解雇ストーリー
だいたいこんな流れです。
会社
「チミ、仕事できないから解雇ね」
Xさん
「え!(・・・納得できないよ)」
「弁護士さーん!助けてー!」
弁護士
「へい!」
「解雇無効の裁判をしましょう!」
舞台は法廷へ。
裁判官
「開廷!起立!礼!はよ!」
(こんなエラそうではない)
弁護士
「解雇はやりすぎです。合理的理由がありません」
「以下の条文に基づき、解雇無効を主張します」
労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
会社
「いやいや、Xさんには色んな問題点があって、たとえば先日こんな……」
弁護士
「ねぇよ。あったとしても解雇はやりすぎだろ」
会社
「きさま!口の利き方!」
みたいな攻防が・・・1年くらい続きます。裁判は長いんです。
そして、1年後、判決!
裁判所
「解雇は無効!」
「1年分のバックペイを支払いなさい!」
会社
「アベシ!」
バックペイって何?
バックペイとは、ビッグボーナスみたいなものです。だって、過去にさかのぼって給料がもらえるからです。具体的には【解雇された日から → 訴訟になって → 判決が確定する日までの給料】をもらえるんです(民法536条2項)
解雇された日〜判決確定までに1年かかった場合。単純計算すると、月収20万円であれば、240万円もらえます。
▼ ホントウにあった裁判例
約600万円のバックペイをもらえました。この事件では、会社が「キミ、営業成績わるいから解雇ね」と通告。裁判所は「解雇はダメ(無効)!」と判断。理由はザックリ以下のとおり。
・コロナで対面営業できなかったのに
・ガンバッて3件受注したじゃん
・これから伸びるかもじゃん
・上司も応援してたじゃん
で、裁判所は、1年3ヶ月分の給料の支払いを命じています。600万円くらい。判決文はこんな感じ。
どうやって生きていくのか?
Q.
1年も裁判している間、どうやって生きていけばいいんですか?
A.
転職して下さい。転職したとしても裁判できます。で、裁判に勝てばば6割の給料をもらえます。たとえば、解雇された日〜判決確定までに1年かかった場合で単純計算すると、月収20万円であれば【(6割の12万円)×12ヶ月=144万円】もらえます。
メガトン注意点
しかし!
これには条件があります。「解雇されたけど、前の会社で働く意思がまだある」と裁判所から認定されなければなりません。
ザックリいえば、解雇された人は「転職したけど、それは生きていくために仕方なかっただけです。解雇無効を勝ちとれば、自分まだ前の会社で働く気持ちあるっす!仕事する能力もあるっす!」と鼻息フンフンでいなければならないんです(難しい言葉で言えば【就労の意思および能力】と言います)
本当に戻るつもりはあるのかい?
会社はバックペイを喰らわされたら数百万円の打撃なので、裁判では必死です。
会社
「この人、転職してるじゃないですか!もう弊社に戻るつもりないですよ!(就労の意思ナシ)」
と主張してきます。就労の意思ナシと認定されたらバックペイは発生しないからです。
こんな感じで「本当に戻るつもりはあるのかい?」が争われた裁判を1つご紹介します。
▼ 裁判官で意見が割れた
トラック運転手が解雇された事件です。解雇された後、訴訟を提起し、3回転職を繰り返していました。
ーーー 裁判所さん、転職してますけど、Xさんはまだ戻るつもりありますかね?
地方裁判所
「2回目の転職の後、戻るつもりは失せたと判断しました(その時点からは就労の意思ナシ)」
「なので約389万円だけ認めます」
高等裁判所
「いやいや、転職を繰り返してるけど戻るつもりはまだあるでしょ」
「判決確定まで認めます(約759万円)」
というわけで、裁判官によって判断が変わることが多いので、若干、出たとこ勝負感はありますね。【就労の意思】って解雇されたその人にしか分からないですからね(新日本建設運輸事件:東京高裁 R2.1.30)
さいごに
▼ 退職届けを出したらTHE・END
バックペイがもらえるのは、解雇されて、裁判所が「この解雇は無効だ!」と判断したらもらえます。
会社は「解雇して訴えられたら大体負ける」ことは分かるので、「ユー、退職届け出しなよ」「なぁ」「はよ!」と詰めてきます。これに屈して退職届を出してしまうとほぼ戦えないのでご注意を!
納得できないなら「私から退職届は出しません。辞めさせたいなら解雇の手続きをとってください」と伝えましょう。
▼ 相談するところ
もし会社にオラつかれてる方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。
労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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