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企業が新卒の採用で「密度の濃い競争が生まれる環境」を作るために必要な条件

2023.05.26

■連載/あるあるビジネス処方箋

4回連続で2024年、25年の新卒(主に大卒、大学院修士)採用をテーマに取り上げてきたが、今回はそのまとめとする。

大企業vsメガベンチャー、勝つのはどっち?就活戦線に異常あり!?
優秀な学生ほど「攻める就活」をしない理由
企業が多数の就活生エントリーを集めるのは時代錯誤?
理系エリートの獲得を競う大企業とメガベンチャーの本音

中途のほうが「定着率が高い」

そもそもなぜ、企業は新卒採用をするのか。大企業やメガベンチャー企業はもちろん、

知名度があまりない中小ベンチャー企業まで多数の企業が熱心に取り組む。一部のメディアや識者は「もう、新卒採用の時代じゃない」と言うが、実際はそれとは正反対の状況になっている。

結論から言えば、新卒者のほうが中途採用者よりも定着率が相対的に高く、いわゆるチームビルディングがしやすいからだ。部署や会社全体をつくりやすくなる。社外の世界を知らないだけに、経営風土や社員教育の影響を受けやすい。例えば、ベンチャー企業は創業期には中途採用者が大半を占めるが、売上10億円前後から新卒採用をはじめる。新卒者は定着率が高く、組織に染まりやすく、組織をつくりやすいからだ。

少子化が進む以上、新卒者に限らず、中途採用で獲得したい人材に巡り合う可能性も低くなる。多くの会社が囲い込むはずの優秀なミドル層(30~40代)の採用は、一段と難しくなる。それを見据え、新卒採用に力を入れるのは当然。「もう、新卒採用の時代じゃない」ではなく、「今こそ、まさに新卒採用の時代」と言える。

では、なぜ、母集団形成をするのか。1回目、2回目、3回目の記事でも説明したとおり、大量の学生の中から基礎学力や適性の潜在的な能力が高く、自社に合うキャリア(小中高、大学などでの経験など)、性格、気質、考え方の人材を見つけ出したいからだ。こういうハードルをクリアした一定水準以上の人材は得てしてその企業に定着しやすい。多数が定着すると、「密度の濃い競争の空間」が出来上がる。
 
母集団形成が成功し、ある程度の人材を雇うと、定着の柱が立つ可能性が高くなる。逆に言えば、採用で失敗すると辞める人が増え、定着率が下がる。この2つの柱が立つと、育成の柱が立ちやすくなる。つまり、次の流れをつくるのが大きなポイントだ。

採用→定着→育成

「密度の濃い競争の空間」で、一例を挙げよう。以前、全国紙やキー局に入社を希望するマスコミセミナー(専門学校)で10数年教える機会があった。有名私立大学の学生が7割を超えていた。全国紙の記者職に内定となるのは、年間で約500人の受講生のうち2人程。1980~90年代に比べると難易度は下がったようだが、特に2つの新聞社は依然として相当な倍率ではある。

このくらいのハードルをクリアする学生は、確かにその新聞社のカラーに合う。筆記試験(作文、時事問題、英語)やエントリーシート、面接などの点数も相当に高く、政治や経済、社会に対しての視点や問題意識も含めて合っている。結果として、私が知る限りではこのセミナー出身者で、30代半ばまでにその新聞社を辞める人はほとんどいない。「密度の濃い競争の空間」が出来上がっているのだろう。

彼らは30代半ばになると、同世代の業界紙や地方新聞、出版社の社員に比べると、仕事力(企画力、取材交渉力、取材力、原稿執筆力など)は総じて高い。フリーランスのライターを雇い、雑誌(ムック)や冊子を編集制作する。全国紙で20年以上にわたり、記者の仕事をしてきたフリーランスはほかのライターよりも確実にレベルが高い。20代前半に新卒として入社し、競争に次ぐ競争の中で、もまれてきただけに優れている。

人を育てるうえで「密度の濃い競争の空間」とは大切だ、とつくづく感じる。新聞業界は大きな曲がり角であり、斜陽産業になりつつあると指摘する声はある。だが、高倍率を潜り抜け、鍛えられてきた人材の価値が高いことには変わりはない。

「密度の濃い競争の空間」をつくるためには高い定着率が前提になり、その前提には「一定水準以上の人材を多数採用することが必要になる。だからこそ、大企業やメガベンチャー企業は新卒採用に力をますます入れる。「今こそ、まさに新卒採用の時代」ではないだろうか。

なお、「密度の濃い競争の空間」に長くいる人は総じて仕事力のレベルが高い。例えばプロ野球やプロサッカー、大相撲だ。10代の頃の野球で言えば、甲子園出場の常連高校やリトルリーグも、その一例だろう。

読者諸氏の職場は、密度の濃い競争になっているだろうか。

文/吉田典史

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