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優秀な学生ほど「攻める就活」をしない理由

2023.05.17

■連載/あるあるビジネス処方箋

前回と今回で、主に大卒、大学院修了の新卒(卒業予定者)の採用の裏側をテーマとする。主に2024年4月入社予定と25年4月入社予定を対象とする。私がオンライン取材を試みたのは、採用コンサルティング業の株式会社プレシャスパートナーズ取締役の矢野 雅氏。

矢野氏は1980年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、法律事務所での勤務を経て2008年に株式会社プレシャスパートナーズの創業に参画。管理部門の立ち上げに携わり、その後、人財紹介事業の立ち上げに携わる。これまで1,000人以上の転職・就職を支援している。

Q.中小のベンチャー企業は、どうなのでしょうか?

矢野:少子化が進み、学生が減るとエントリーの数も減りますから、苦戦をしているケースがあります。(前回の記事で)説明した通り、母集団形成は大切な手法ではあるのですが、中小企業には様々な事情でそれができない企業が多数あるのです。求人を出す前に想定していた数に達しないために、多数の新卒者が登録する人材紹介会社に依頼し、ここから紹介を受け、採用活動をするベンチャー企業はここ3~5年増えています。

これらの企業は、ブログやFacebookやTwitter、YouTubeのSNSにも熱心です。内容を見ると、大企業やメガベンチャー企業とは違う手法でアプローチをしているのです。「大企業やメガベンチャー企業にない、私たちの魅力は何なのか」とよく考えたうえでアピールしているように見えます。中には、採用担当者から獲得したい学生に直接、FacebookやTwitterを通じてダイレクトメッセージを送る場合もあります。

私は、これらもエントリーを募るという意味では母集団形成と言えると思います。

大企業やメガベンチャー企業が自社のホームページで求人を載せ、エントリー者を集める、いわば「待ちの母集団形成」と呼ぶならば、中小ベンチャーは「能動的な母集団形成」と言えるのではないでしょうか。特に「大企業やメガベンチャー企業にない魅力」をアピールしている点が、ポイントです。そして、自分たちの会社に合う人を選ぼうとしているのです。

Q. 学生の動向で、新しい動きはありますか?

矢野:景気が多少上向きになり、売り手市場にはなっています。学生はそのことをよく心得ていますから、安易な思いで自分から売り込む就活をしません。企業からの誘いの声を待っているのです。私は氷河期に就活をしましたから売り込むのが当たり前と思っていましたが、今は違います。時代は、変わりつつあるのです。

新卒者を企業に紹介する人材紹介会社が運営するプラットホームに学生が自らのプロフィールを登録し、それを見る企業からのスカウトの連絡を待つのです。このような人材紹介会社が増え、今や大きなビジネス市場になりました。

このスタイルは、企業が学生をスカウトするので「スカウト型」(ダイレクトリクルーティング)と言われています。メリットの1つは、欲しい人材にピンポイントでアプローチできるので、自社に合う人材を採用できる確率が高くなります。もう1つはその企業のことを知らない学生にも、アプローチできること。ブランド力がまだ弱い中小ベンチャーにもチャンスがあります。

これまでは学生から企業にアプローチするのが主流でしたが、「スカウト型」はその逆と言えるでしょう。「スカウト型」もまた、エントリー者を増やすという意味では母集団形成と捉えることができます。

ほとんどの企業はプロフィールだけを見て、内定を出すことはしていないと思います。自社に合う人材であるか否か、などの精度を高めるために人事部が起用するリクルーターを、入社してほしいと思った学生に会うようにさせる場合もあります。そこで面談をして、さらにどこかのタイミングで人事部員が会い、そのうえで採否を決め、最終的に内定を出す企業が多いのです。

「スカウト型」をするのは採用力に多少の課題がある中小ベンチャーが目立ちますが、メガベンチャー企業もはじめています。特にターゲットになるのが、(前回の記事で)すでに触れた優秀な理系の学生。プロフィールに例えば、ITエンジニアの資格や実績を書いておくと、採用担当者の目にとまりやすいようです。

Q.中小ベンチャー企業は「スカウト型」を使っても、大企業やメガベンチャー企業と競い合うのは難しいかもしれませんね。

矢野:そのような一面はあるかと思いますが、中小ベンチャー企業は大企業やメガベンチャー企業とは違ったブランドを持っているはずなのです。それが強みであり、前面に出してアピールすべきところです。実際、そのような手法で「スカウト型」で欲しい人材を獲得しているケースもあります。

これは、大切な動きです。大企業やメガベンチャー企業の後追いをするのは避けるべきです。新卒入社の社員は定着し、近い将来、中核を担う人材なのですからその本質を見誤らないほうがよいでしょうね。いかに自社に合う運命の人と巡り合うか、そこが最も大切なところなのです。

今後、大企業が採用活動を前倒す可能性が高いと私は見ています。大学3年の夏に行っていたインターンシップを4月前後からはじめる企業も現われるはずです。大企業が本気になると、怖い。だからこそ、中小ベンチャーは採用の本質を思い起こすことが必要になるのです。

取材・文/吉田典史

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