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「スマート」という言葉が先入観を生む!?メディアから見たLIVING TECHの現在地

2023.05.02

「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする」をミッションに、2020年に住宅関連メーカーやIT企業などさまざまな企業が業界横断で集まり、業界の垣根を超えてユーザーのより良い暮らしを実現すべく設立された一般社団法人LIVING TECH協会。2023年現在で40社が参加しており、その活動のひとつである『LIVING TECHカンファレンス』は、協会設立前の2017年から開催されているイベントだ。

第5回目となる今回は、『LIVING TECH Week』と称して、ルームクリップの本社スタジオからライブ配信され、YouTubeチャンネルではアーカイブも残されている。。ここでは3月23日に開催されたDAY4、LIVING TECH協会のメディアパートナーが参加した座談会「ユーザーの暮らしと、メディア視点から見るLIVING TECHの可能性」についてリポートする。

「ユーザーの暮らしと、メディア視点から見るLIVING TECHの可能性」登壇者。右からルームクリップ株式会社執行役員CBO/RoomClip住文化研究所所長の川本太郎氏、株式会社小学館第二ブランドメディア局DIME編集室編集長の石﨑寛明氏、UXD KURASHI LAB.ラボマネージャーの永井真理子氏、ルームクリップ株式会社RoomClip住文化研究所研究員の竹内 優氏、一般社団法人LIVING TECH協会PR担当の田形梓氏(リノベる株式会社)。

最終日に行われたメディアパートナーが参加した座談会では、まずスマートホームに関する日本と海外を比較したデータが紹介された。現在、LIVING TECH協会と、住まいと暮らしのソーシャルプラットフォーム「RoomClipと、グローバル統計データプラットフォーム「Statista Japan」による意識調査を実施中で、今回はリリース予定のレポートから一部の結果が公表された。

「日本は海外と比較して遅れていると言われているが、スマート家電の所有率では日本が13%、対してアメリカ81%、中国92%。欧米で普及率が高いノルウェーは66%。日本は、まだまだ普及の伸びしろが大きくある状態で、それが遅れていると言われている要因でもある」(竹内氏)

データ出典は、アメリカ、中国、ノルウェーはStatistaのもので、日本はLIVING TECH協会が行ったネットリサーチのもの。実際に比較すると衝撃的な数字だ。

RoomClipの川本氏と竹内氏。

スマートホームに対しての印象も興味深いデータが紹介された。日本では家電をネットワーク接続できることによる利便性向上や外出時の遠隔操作やモニタリングなどにメリットを感じる人が多い。一方で海外では、セキュリティ性の向上や環境への配慮、経済的メリットに対する意識が日本に比べるととても高い結果になっていた。

「海外のセキュリティや経済性・環境などのイメージは、日本人の肌感覚としてもたしかに共感できる部分は少なく意外な回答だった」(竹内氏)

「日本では、スマートホームは高額、ネットにつながるからセキュリティが心配などの声を聞きます」(永井氏)

日本と海外では、スマートホームに対するイメージのギャップも大きいようだ。

昨年からメディアパートナーとして参加しているUXD KURASHI LAB.の永井氏。UXD KURASHI LAB.は、約3年前に立ち上がった暮らしのアップデートを提案するメディア。

話は変わって、RoomClipのユーザーは、スマートホーム・スマート家電の所有者が48%で、日本の一般(13%)と比較して高い。竹内氏によれば、回答した87.5%が女性で、。RoomClip自体が元々女性の利用比率が非常に高いメディアということもあるが、ガジェットや新しいIT技術が好きというより、家事の効率化などの生活の課題解決に関する興味の延長でスマート家電を活用するアーリーアダプターが多い印象だという。ちなみにスマート家電の所有のきっかけについては、「自分で調べた」、「家電の買い替え」、「SNS」が上位。自分が意思を持って興味や関心を持って接触した情報が購入のトリガーになりやすいようだ。

コロナによる暮らしの変化によるスマート化のキーワード

近年、日本の生活者に起こった暮らしの変化を振り返ると、「共働き・単身・多様化」、「ネットワーク環境」、「住まいの役割」というキーワードにについて各メディアから意見が出た。特にコロナ禍でのリモートワークや巣ごもり需要は、自宅のネット環境の再構築や普段からネット環境を活用することでリテラシーの向上にもつながった。これが住居のスマート化に大きな影響を与えたようだ。

暮らしの多様化では、「オンラインミーティングなどが増えたので、他の家に宅配が来たりリモート越しにスマートスピーカーが反応したり、他の人の生活が見えちゃうんですよ(笑)。でも、そういうところでガジェットが難しいと思っていたのが自分もやってみたいという動機につながっている。便利になることが体感でわかるので、スマート化に挑戦したくなる」(永井氏)という意見があった。さらに毎日の日課などをスマートスピーカーのリマインド機能などを通じて伝えることで、家族間のコミュニケーションを円滑にできるなどの活用術も紹介された。

ネットワーク環境は、コロナ前と比較してもっとも意識が変化した部分といえる。Wi-Fiルーターもエリアの広さや通信速度などを考慮して購入するなど、自宅のネット環境を意識することも増えた印象だ。「スマホがあればいいと思ってWi-Fi環境がなかった人もいたと思いますが、自宅で仕事をしなくてはいけない状況になって、家のネット環境を意識する人が増えたと思います。最近はネットワークにつながる家電も多いのでネットにつなげる抵抗感もなくなってきていると思っていましたが、一般所有率13%という数字はスマート家電を持っていても繋げてない“隠れスマート”な人も多そうですね」(石崎氏)

DIME編集部の石崎氏。

住まいの役割については、家にいる時間が大幅に増えたこと、仕事や学習など環境の種類も増えたことで住宅自体に変化が起きているという。RoomClipでは、コロナ直後にテレビ前にヨガマットを敷いて宅トレのスペースを作る人が急増。ほかにもリモートワークのためのワークスペース捻出など住宅に新しいスペースが必要とされた。そういったことを踏まえた”住宅設計のニーズ”も生まれているという。

普及のためのキーワードは「VRおばあちゃん」!?

今後のスマートホームについて語るパートでは、「VRおばあちゃん」、「節電、省エネ」、「スマートという言葉の弊害」がキーワードとして挙がった。「VRおばあちゃん」では、60代の女性が和室をリノベーションしてプロジェクターやVRを活用していることなどを紹介。「これまで最先端のものは単身で時間がある若者のものだったけど、今後はむしろ好奇心旺盛なアクティブシニアが主戦場になりそうだと思う象徴的な事例。可処分時間があって生活課題がわかっているシニア層は、スマート化でも主役になりうる」(川本氏)

また、2023年の住環境において重要なキーワードになりそうな「節電、省エネ」については、RoomClipで2022年12月以降に節電に関する検索が前年比15.4倍に急浮上したという。

エアコンのスマート家電や電力消費量を見える化するなど、スマート化による節電の事例が多く投稿されて、広くシェアされていることが紹介された。

「日本ではスマート化は、ぜいたく品というかプラスアルファという印象で、なくてもいいと思われることが多い印象です。いまある課題を回避する必需品というイメージが出れば、もっと普及が進むと考えています」(田形氏)

今回の進行役だったLIVING TECH協会のPR担当の田形氏(リノベる)。

石崎氏からは、「節約、省エネ」というキーワードに加えて、若い世代を中心に注目されている時間の節約「タイムパフォーマンス(タイパ)」も挙げられた。スマート家電を導入することで、生活にゆとりが生まれ、エネルギーや時間といった根源的なものを節約できるというイメージが生まれれば、スマート化に対しても「スマート家電というより時短家電」(川本氏)といった認知となり、興味はさらに高まりそうだ。

一方で「スマートという言葉の弊害」というテーマでは、言葉のイメージでハードルがあるという意見があった。いままで「スマート」という言葉が付加価値訴求と連動するようなキーワードとして使われすぎた弊害も生まれているという。

例えばスマートテレビを所有していると回答した人の割合は、アメリカと中国では7割以上だが日本は5.5%と衝撃的な数字だった。だが、昨年のサッカーW杯や今年のWBCをテレビでストリーミング配信を見た人の声も多かったことは記憶に新しい。低すぎる数値には、認知と実態のギャップが起こっている可能性もあると言及された。「米国や中国は、今までの地上波放送を受像できる以上の機能があればスマートテレビと認識する。日本ではスマートテレビがもっと未来的なイメージで、たとえストリーミング配信が見える状態でも『ウチはスマートテレビじゃないです』と恐縮される方もいます(笑)」(竹内氏)

「多分、5年以内に買った大画面テレビだったら、ほぼスマートテレビだと思います。スマートという言葉のハードルの高さは、幼少期からアニメとか『ドラえもん』などを観ていた影響が大きいかなと個人的には思っています。例えば、朝は自動でカーテンが開いてコーヒーが沸いてモテるみたいなスマート化を“朝チュン家電”と呼ぶとか(笑) 僕たちメディア側もスマートを強調しすぎない発信が必要かもしれませんね」(石崎氏)

座談会の最後のまとめでは、各メディアからさらに多様な意見が出た。

「若い世代にスマホの学割じゃないですけど、初めての一人暮らしする家がスマート化されていれば、その人にとってスマートハウスが当たり前になっていくと思います。最近は共働き世帯向けの訴求は各社が行っていますが、若い世代からの啓蒙も必要だと思います」(石崎氏)

「スマートホームは、ハードウェアじゃなくてソフトウェアだと思っています。スマートホームとしてすべてを暮らしと結び付けて人と役割分担することで、スマート化したことが手放せない存在になるような方向へ向かってほしいなと思います」(永井氏)

「人口減少でさまざまな市場が縮小して行く中で、スマートホームみたいな付加価値のところは、市場が伸びる数少ない領域だと思うので物凄い期待をかけています」(川本氏)

「今回のカンファレンスを(DAY1から全て)見ていて、技術的にスマート化されてないハードウェアは最終的になくなると思いました。そういう意味ではスマートという言葉もなくなるかもしれない。その一方でハードウェアをネットワークに繋ぐことによって得られるサービス側のベネフィットをみんなが享受して、情報がシェアされる連鎖が作れるかどうかという課題がある。それが作れないとスマート化しても実際に利用されないので、ここはもっとメディアで訴求していきたい」(竹内氏)

「いまは豊かな暮らしをどういう形で実現していけばいいか試行錯誤している過渡期。トライしてみることで世界が広がると思うので、まずは一つからでもよいので、ユーザーとしてスマート化をやってみることをオススメしたい」(田形氏)

『LIVING TECH Week 2022-2023』

【LIVING TECH Week2022-2023:DAY4】メディアパートナー座談会「ユーザーの暮らしと、メディア視点から見るLIVING TECHの可能性」

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構成/久村竜二

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