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住宅、顔認証、SaaSの事業者視点からみたIoT化の課題とつながる暮らしの未来像

2023.05.01

テクノロジーを取り入れることで日々の暮らしを、さらに便利に豊かにしていくことを目的に発足した「LIVING TECH協会」。住宅、メーカー、プラットフォーマー、メディアなど業界横断で様々な企業が集まり、2023年3月現在、参加企業は40社に上る。

第5回目となる「LIVING TECH Week」が3月に開催。その中からDAY3の「つながる暮らし」の未来像。人と住まい、内と外がつながることで豊かになる私たちの暮らし」のセッションの様子を紹介する。

【登壇者】(左から)

モデレーター/堀江秀一氏:AIoTクラウド マーケティング部 部長

橋本裕介氏:DXYZ(ディクシーズ) BizDevマネージャー
丸紅、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーを経て「DXYZ」に入社、主に事業開発を担当している。「DXYZ」は大手デベロッパー、電鉄会社、自治体等と「街づくり」を文脈とした協業を行い、「顔認証」という最先端のテクノロジーを使って、リアルな世界で手ぶらで行動できる世界を作っていくことをテーマに取り組んでいる。

松本啓司氏:JIBUN HAUS.(ジブンハウス) プロダクトデザイン部 取締役事業部長
設計事務所、ハウスメーカー、不動産デベロッパーにて住宅設計、商品開発を担当。2016年設立の「家はスマホで買う」をコンセプトにし、全国140以上の加盟店を持つ規格住宅(セミオーダー)のブランド「ジブンハウス」の創業メンバーとして、事業の立ち上げや規格住宅の商品開発を行う。

松本融氏:AIoTクラウド 取締役副社長
シャープ入社後、モバイルツール「ザウルス」の商品企画や、液晶テレビAQUOS向けネットサービス企画・運営、電子書籍ストアサービス事業、AIoT家電、COCORO+(ココロプラス)サービスの企画開発運営に携わる。2019年より「AIoTクラウド」にて、AIとIoTを結び付けたソフトウェア開発、ソリューションビジネスとして、外部企業向けのIoT化支援、他社プラットフォーム連携の拡大に取り組む。

「ジブンハウス」「DXYZ」「AIoTクラウド」各社の取り組みとは?

堀江「今回は内と外がつながる暮らしをテーマに、各社のスマートホーム、IoT化への取り組みについてお聞きしていきたい」

ジブンハウス松本「注文住宅の平均建築費用は、2022年では前年より 5.5%(165万円)上昇、それに伴い、フルオーダー(標準)のゾーンが減少して、予算ギリギリ層はセミオーダー(規格住宅)へ、予算余裕層はこだわりを求めてフルオーダー(高級オーダー)に二極化している。特長のない商品はユーザーには響かない傾向が出てきており、コンセプトや特長のある差別化できる商品が求められている。

差別化のひとつが『スマートホーム』。スマートホームの商品化は大手ハウスメーカーが主であるため、積極的に取り組む事で差別化を図れる。

ジブンハウス商品では、家族のつながりを助けるやさしいテクノロジーとして、室内のあらゆるスマートホームデバイスをひとつにまとめるインターフェース『muiボード』を標準装搭載。弊社はニ極化の中で、あえてポジションを取らずに、中間のスタンスを保ちながらより良いものを提供していきたいと考えている」

DXYZ橋本「家やオフィスの鍵の代わりになる『入退』、ホテルのチェックイン、身分証の代わりになる『本人確認』、店舗で買い物する際の『決済』、これらが自分の顔でできるようになるのが顔認証。物理鍵やスマートロックと顔認証が大きく違うのは、手ぶらで外出できる、閉め出し・閉め忘れがない、顔は唯一無二なので不正利用も防げるという点。スマートロック以上に安心・安全を実現できている。

住宅領域では、弊社は国内初の鍵が一切いらない“オール顔認証マンション”を実現し、2023年3月末時点で29棟竣工している。弊社の顔認証プラットフォーム『FreeiD(フリード)』は、顔登録をアプリで簡単にでき、本人だけでなく、スマホを持っていない家族の顔登録や友人等への時間鍵貸しも可能。実際に使ってみるとその便利さが実感でき、入居者からも高い評価を得て97%の入居者が便利だと回答、95%の入居者が次の物件にも顔認証を希望しており、顔認証が今後家を選ぶ条件にもなってくるのではと考えている。

現時点の課題はサービスごとの分断。顔認証可能の施設では専用アプリなどが必要になり、ユーザーは使いたいサービスごとに顔登録をしなくてはいけない。

その点、『FreeiD』は一度の顔登録であらゆるサービスをつなぐことができる。保育園やゴルフ場のチェックインなど住宅領域以外の様々な業種と取り組んでおり、家の中だけでなく家の外の暮らしも、一度登録した顔で手ぶらで繋いでいくことを目指している」

AIoTクラウド松本「日本のIoT市場は世界に大きく遅れを取っている。解決するには、スマートホームという視点のみならず、DXに近いようなIoT化を容易に実現し、価値化を進めていくことが必要だが、その取り組みのひとつが機器の普及。

クラウドにつながるデバイスをどんどん増やしていくことで、個人情報に配慮しながらサービスに必要なデータを集めて、メーカー同士やメーカーとサービスが連携するなど、機器とサービスと人がつながることで新たな価値創造に広がる。

様々な企業と協業しながら開発を進めているが、機器メーカーから聞かれるのが費用や期間の課題。加えて、ハードウェアメーカーの場合、ソフトウェアやクラウドをどこに委託すればいいのか、従来の売り切りではなくサポートを継続していく点への不安などがある。

それら課題や不安を解決すべく、IoTのSaaSとしてまとめたのが、昨年12月からリリースした弊社の『WIZIoT(ウィジオ)』。IoT製品の開発・運用に必要なツールとサポートをまとめてワンストップで提供することで、IoT化開発コストを1/5、開発期間を1/10に短縮。IoTの利用をさらに簡単にする環境を整え、意思決定に関わるハードルを下げている」

事業者視点から見たIoT化への課題とは

堀江「インフラが整っても、機器をIoT化してインターネットにつなげないとスマートホームは進まない。日本でIoTが登場しすでに10年経っているのになかなか進まないのは、何かしらの課題があるからだと思うが、事業者がIoTを進める上で最初にぶつかる課題とは何か?」

AIoTクラウド松本「大手メーカーがIoT対応機器を次々と出す中で、そこまでのコストをかけられずリソースもないという事業者も相当数いて、コストや運用負荷を超えるメリットがあることを理解いただく提案力が、我々が今超えないといけないハードル。

海外ではIoTにしっかりとコストダウンをつなげているが、日本の場合はコストダウンや価値化というところがまだクリアに共有できていないところが課題だと思う」

堀江「IoT化にかかるコストと、得られる価値を体感できないと次のステップに進めないが、できるだけコンパクトにスモールスタート、スモールフィードバックで回していけるとチャレンジしやすい下地につながると思う。

橋本さんに伺いたいが、スマートロックのさらに先にある顔認証を企業が導入する場合、判断基準となるのは、コスト?利便性?収益性?」

DXYZ橋本「どれも大事な要素だが、顔認証を日常生活で体験する人の数をいかに増やせるかが重要で、IoT家電と同様に肌感覚で便利さを感じる人が増えるほど伸びてくると思う」

AIoTクラウド松本「スマートホーム価値向上の段階として、ステップ1はIoT機器の普及で、ステップ2はサービスの普及。ステップ1から2に進むプレイヤーを増やすことがサービスと連携を大きくさせるために不可欠となる」

DXYZ橋本「ステップ2のサービスに行くにはどのような方法が有効か?例えば、住宅情報サイトでこの部屋は西日が強いなどのデータはIoT家電から取得して、販売情報として活用できそうだが」

AIoTクラウド松本「クラウドにつながっている機器で多いものがテレビ、次にエアコン。エアコンもセンサーの塊のようなもので部屋の状況のデータも集められるが、複数のメーカーがそのデータを使える状態にしないといけない。

弊社はシャープ、経産省とも連携してデータカタログを作り、エアコンならこういう情報が得られるというデータをオープンにしメーカーに提供している。しかしそういったデータがなかなか集まって来ないというのが目下の課題になっている」

ジブンハウス松本「断熱性能を数値化して説明することが義務付けられていて、そうした数字と連動してエアコンの性能を紐づけ、データ化してくことは近い将来できると思う。販売にあたり住宅の性能を数値化して示していくことが今後の流れになるのではないか」

ユーザーがIoTに感じる豊かさとは

堀江「みなさんは対事業者のBtoBが多いが、実際に使うエンドユーザーが感じられる豊かさについてお伺いしたい」

ジブンハウス松本「私たちは地域の工務店、住宅会社と共に家づくりをしており、エンドユーザーとつながる窓口として、IoTがもたらす豊かさを積極的に伝えていきたいと考えているが、スマートホームの便利さとしてユーザーが望むのは、実は些細なことではと思うことがある。

私の家で給湯器が壊れたとき、分厚い取説ファイルを引っ張り出し、メーカーや型番など確認して、電話でたらい回しにされた末にようやく修理の段取りにたどり着けた。そういった部分をIoTの力で解消していくことこそ必要とされているのではないか。住まいの管理をIoTでできるようになると、肌感で便利さを実感できると思う」

堀江「確かに機器が壊れたとき、買い替えよりも修理がはるかに面倒なので、そのわずらわしさをIoTで管理することで減らすことができる意義は大きいと思う」

DXYZ橋本「顔認証も同じで、いかに体験をシームレスにしていくか大切になる。我々は顔認証技術を開発しているのではなく、繋いでいるプレイヤーだが、持たない強さがあるからこそ体験をシームレスにしていくことができると思う」

AIoTクラウド松本「ある時期からメーカーの取説はウェブサイトにPDFで上げるようになった。次の時代には入居の際に渡される膨大な取扱説明書もAIに学習させて、ユーザーが型番を言って対処法を聞くとAIがアドバイスをするような形になってくると思う。

自分の経験では便利になったと感じるのが音声コマンドと照明。朝6時になると明るくなるIoT照明を使っているが、目覚まし時計で起きるより、照明で起きた方が爽快に感じ、生活習慣として身についた。些細なことだが暮らしを大きく変えたと実感した。普段の生活で感じる些細な便利さは個々によっていろいろとあるし、その点をお客様に伝えていけば、IoTユーザーを増やすチャンスがあると思う」

DXYZ橋本「現状のIoT機器は、自分の暮らしをパターン化させ、機器にインプットするという、使う側が歩み寄らないといけないのが課題。生活のパターンを機器が学習して、その中から最適なものをユーザーが選べるようになれば、これ無しでは生活できないという流れになってくるのではないか。そのためにはテクノロジーや機器の進化、住宅や顔認証から得られるデータも必要になってくる」

AIoTクラウド松本「家では毎日使うものが多く、例えば顔認証でもお父さんは何時に帰ってくる、土日の行動などパターンがあると思うので、そうしたデータを解析して、その家固有のパターンと別の家のパターンを比較すると発見があるかもしれない。バイタル情報と照らし合わせて、生活ぶりと健康の関係などもわかってくる可能性もある」

DXYZ橋本「IoTの最終目的はユーザーの行動変容を促すことだと思う。松本さんの話のように、行動が変わることで心身の健康につながるのが豊かさなのではないかと。そこにたどり着くまで、みなさんでどのようにしていけばいいのかを考えるのが大きなテーマではないか。

つくばスマートシティ協議会が行った顔認証の実証実験では、顔だけで手ぶらで行動できるようになるとあらゆる年代の半数以上が、外出意欲が高まることがわかった。手ぶらで生活できるようになると外に出る機会も増えて運動量も増える。また東大病院などが行っている研究では、顔を認証する際に撮影した顔から認知症などの予兆を発見できる可能性があるそうで、エビデンスが蓄積すれば、IoT機器が取得したデータを解析し行動変容を促すこともできる。

最終的に人の健康を考えるところまでできれば、健康のために家の中で歩くように設計し、家の中にあるセンサーで人流を見て、想定する動きをしてない場合に運動不足を指摘するという家も面白いかもしれない」

AIoTクラウド松本「現段階で実現できるIoTに関してはウィジオが実装できている。まずはクイックにそのベースを提供していく事業者がどんどん出てきて欲しい。コスト的にも時間的にもあるものですぐに導入できるように整えて、その先の、機器がIoTにつながることで新しい価値を提供できる段階まで、早くサイクルを回すことが大事なのではないか」

DXYZ橋本「できるものを皆で持ち寄って進めることは大前提だが、どこかで非連続的に打ち破るものがないと、目指している世界が実現できないのではないかと感じている。顔認証の事業者同士でつながるだけでは小さな組織になってしまい、事業者目線が消えないので、ユーザーとのギャップが生まれてきてしまう。

弊社の『手ぶらで出かける世界を作る』というような、各社がこの事業をやりたかった目的をベースに持ちながら、横とのつながりができる組織が大事なのではないか。そういうつながりの中で面白い事業が生まれて、非連続な成長ができて、豊かさにアプローチできるのではないかと、今日お話を聞いていて気づきを得ることができた」

日本のIoT化の遅れの原因はどこにあるのか?

ジブンハウス松本「日本でIoT化が遅れているのは事業者側の問題なのか、文化の違いなのか、原因はどんなところにあるのか?」

DXYZ橋本「顔認証で言うと、日本は良い意味でものづくりの国で、良いものを作って売りたいという目線があると思われる。ユーザーが使いたいと思うサービスからスタートしていないので、使ってみれば確かに便利だけど、始めるまでのハードルがすごく高いみたいな、使いづらさがあるのだと思う。米国では『ユーザーの暮らしはどうあるべきか』から始まり、自分たちの一番強い事業に特化し、他に強みのある事業者とつながりながら作っていくことが、IoT化が進んでいる理由かもしれない」

AIoTクラウド松本「日本の企業は差別化やオリジナリティにこだわりすぎているところがある。海外の事業者はさほど付加価値が高くなくてもクイックに市場投入して、まずはやって見るという姿勢があり、そこからイノベーションも生まれてきている。

ツールを提供するベンダー側も個別で対応することが多かったので、我々はイノベーティブな方法としてサービス化して単価を下げハードルを低くしている」

堀江「今回は各業界のお三方から様々な意見をいただいた。最後に一言感想を」

ジブンハウス松本「住宅業界に携わる身としては、禅問答のような『豊かさとは何か』を問い続けることが使命なのかなと改めて感じた。また昨今の事件を見ても安心・安全が家の持つ役割でもあるので、セキュリティとしてのIoT化を積極的に考えていきたい」

DXYZ橋本「どうあるべきかから考える機会は非常に大切だと思う。この場のつながりも大切にしたいし、視聴している方も興味を持ち、こんなことをやると面白そうという会話が自然に繰り広げられるような形になってくれれば、良い方向へ変わっていくのではないか」

AIoTクラウド松本「皆さんとお話ししてキーワードだと思ったのが『体験する』ということ。事業者側もエンドユーザーもスマートホームやIoTを体感できる場を広げられていければと思っている。ジブンハウスさんの家で一泊体験や、顔認証一日体験もしてみたい。やってみるとすごく頭が動くと思うし、異業種間でそうした体験の場を作ることができれば、次につながるのではないかと思う」

『LIVING TECH Week 2022-2023』特設サイト

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文/阿部純子

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