想像を超える反響で、1年の目標出荷本数を3ヶ月で達成
2022年1月、製品の発売より2週間前にメディアへ製品の発表が行われた。画期的な製品はSNSでどんどん拡散され、発売前から予想を超える反響があったという。出荷本数は、半年ほどで16万本以上を達成した。
「メディアに向けた発表会があった当日の夕方から、Web記事に取り上げられ、我々としても今までに経験したことがない反響をいただきました。もう発売から1年以上経ちますが、いまだに取材依頼をいただきありがたい限りです。今回の真空断熱炭酸ボトルは、複雑な機構を含んでおり、価格設定は従来のボトルの倍ほど。そのため、1年の出荷目標は10万本に設定してスタートしましたが、ありがたいことに3か月でその目標をクリアできたんです。発売当初は生産が追いつかず、お客様にご迷惑をおかけしてしまいました。増産体制をとり続け、同年の春先には皆さんにお届けすることができました」(南村さん)。
ビールテイクアウト容器「グロウラー」との違い
開発当初から、アルコール飲料を持ち運ぶことも想定していた真空断熱炭酸ボトルは、ビールのテイクアウト時に海外で使用される大型容器「グロウラー」を開発時の参考にしたという。しかし、製品としては大きく異なるものだと南村さんは語る。
「アメリカで普及しているグロウラーは、とにかく頑丈に蓋を閉め、蓋が飛ばないようにする作りです。そのため、蓋を開けるときにちょっと怖いんですよね。日本メーカーとしてもの作りをする上で、不安感や危険性は絶対になくしたいと思っていました。毎日快適に炭酸を持ち運んでいただきたかったんです。独自開発のバブルロジックの特徴の一つは、先に炭酸ガスを開放すること。その時点ではまだしっかりと栓がかかっているので、安心して蓋が開けられます。また、海外製の容器はとても重たいですが、真空断熱炭酸ボトルは1.5Lサイズでも非常に軽いです。我々はステンレス製ボトルの軽量化に40年間取り組んできましたので、その技術が活かせていると思います」(南村さん)。
開発において大切なのは「既成概念を覆すこと」
南村さんは、今回のプロジェクトを通じて、既成概念を覆すチャレンジ精神が、ヒット商品の開発には欠かせない要素だと学んだという。
「禁止事項だからといって考えることをやめていたら、今回の製品は誕生していませんでした。既成概念を覆すことで技術のブレイクスルーが起こせ、ヒット商品が生み出せることを学びましたね。直近では、アウトドアシーンにマッチするようなカラーラインナップを新たに2色追加しました。また、世界中で楽しんでいただきたいという想いもこめ、「コカ·コーラ」オフィシャルデザインのボトルを作りました。今後も、飲料メーカーさんや、スポーツイベント、スポーツスタジアムなどとのコラボレーションも積極的にやっていきたいです」(南村さん)。
最後に、南村さんは今後の展望について次のように語る。
「タイガーはこれまでの100年、真空断熱技術と熱コントロール技術の2つの技術を磨いてきました。私たちは『世界中に幸せな団らんを広める』という企業理念を掲げていますので、次の100年は日本のみならず、グローバルに我々の技術で貢献をしていきたいです。直近では、2023年の夏に向け、世界で同製品の営業活動を頑張っていきます」(南村さん)。
取材・文/久我裕紀