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時代を切り開いた画期的な商品、炭酸飲料を持ち運べるタイガーの「真空断熱炭酸ボトル」誕生秘話

2023.04.14

2022年1月にタイガー魔法瓶株式会社から発売された、炭酸飲料の持ち運びができる「真空断熱炭酸ボトル」。人々のライフスタイルに大きな影響を与える画期的な同製品は、2022年度DIMEトレンド大賞の日用品部門で金賞を受賞した。

今回、真空断熱ボトルブランドマネージャーを務める南村紀史さんに、製品の誕生秘話や開発の舞台裏についてお話を伺った。

*本稿はインタビューから一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

タイガー魔法瓶
真空断熱ボトルブランドマネージャー
南村紀史氏

タブーだった炭酸飲料ボトルへの挑戦

真空断熱炭酸ボトルは、炭酸ガスを保ちながらも蓋が安全に開けられ、優れた保冷力を備えている。いつでもどこでも、冷たい炭酸飲料を楽しめるのが最大の魅力だ。南村さんは同製品の特徴について次のように話す。

「従来の真空断熱ボトルには、炭酸飲料を入れることが禁止されていました。それを可能にしたのは、独自に開発した栓の構造です。炭酸飲料に対応する『BubbleLogic(バブルロジック)』と呼ばれる独自の機構を開発したことで、安全に炭酸飲料を持ち運ぶことを実現しました」(南村さん)。

タイガー社がタブー視されていた炭酸飲料に敢えて取り組んだ背景には、炭酸飲料へのニーズの高まりがあったという。

「日本では近年、炭酸飲料の市場が右肩上がりに成長しています。特に、日本の強炭酸水は、世界的に見ても炭酸強度が高いんです。また、コロナ禍で外出ができなくなった影響で、家の中でリフレッシュのために炭酸飲料を飲む方が増えました。そんな中、『なぜ真空断熱ボトルには炭酸飲料が入れられないのか』という声をいただくようになり、世の中のニーズの高まりを実感したんです」(南村さん)。

次の100周年に向けた挑戦

タイガー魔法瓶株式会社が2023年2月に創立100周年を迎えることも、開発を後押しする要因となったと、南村さんは次のように振り返る。

「創立100周年を迎えるにあたり、社内では次の100年に向けてどうしていくべきかについて考えていました。それがちょうど、真空断熱炭酸ボトルの開発を検討していた頃です。それもあり、社内では『何か新しいことに挑戦しよう』というモチベーションが高まっていたんです」(南村さん)。

異例に挑戦することへの不安の声

世の中のニーズや、社内のチャレンジ意欲の高まりを受けて始まったプロジェクトだったが、想像以上に難易度の高い開発になったという。

「プロジェクトのチームメンバーからは、不安の声が多く挙がっていました。特にものづくりに携わるメンバーからは『考え直した方がよいのでは』という声も出ていたんです。ただ、会社として次の100年を考えるタイミングで新しいことに挑戦できないと、会社の未来はないという危機感も感じていました。だからこそ、粘り強くチームを説得しました」(南村さん)。

社内の合意を得るため、数値データを示す必要があったと南村さんは開発当初を次のように振り返る。

「社外に提案する前に、まずは社内の安全面や品質管理面の基準をクリアしないといけませんでした。その際は、しっかりした数値データを用意してロジカルに問題を解決していくことを意識しましたね」(南村さん)。

開発にあたって多くの壁がある中、もっとも苦労したのが「安全弁」の設計だったという。

「安全面から、蓋の部分に圧力が高まる場合に備える必要がありました。液体の温度が上がると、水の中に炭酸ガスが溶け込めず、出ていく一方になります。保冷力を備える真空断熱ボトルといっても、夏の車中に2日〜3日ほど放置した場合には、ボトル内の液体の温度がどうしても上がってしまいます。そうなるとボトル内の圧力が高まるため、安全に圧力の開放ができる設計にしなければなりません。ただ、炭酸ガスを抜くことで安全を保っていては、せっかくの炭酸飲料が台無しになってしまいます。万が一の時に圧力を開放できるように設計するのが、とにかく難しかったですね」(南村さん)。

圧力式炊飯器の知見が役立った

この問題の解決に役立ったのが、同社が培ってきた圧力式炊飯器開発の知見だったという。

「タイガーの主力商品の一つに、圧力式炊飯器があり、圧力を扱う経験が全くゼロではありませんでした。そこで、圧力式炊飯器の機構を参考に設計を始めたんです。ただ、炊飯器で取り扱う圧力と炭酸飲料の圧力を比べると、桁違いに炭酸飲料の方が高く、当初の見込み以上に手こずりましたね。炭酸ボトルと炊飯器は同フロアで開発を行っていて、密にコミュニケーションをとりながら開発をしていました。圧力炊飯器を作っていなかったら今回の製品化は難しかったと思います」(南村さん)。

製品の蓋部分に工夫を凝らしたものの、本体側にも炭酸に適した特徴が欲しいと感じていた南村さん。試行錯誤の末、これまで会社として磨き上げてきた「スーパークリーンPlus加工技術」が炭酸飲料にも適していることがわかったという。

「スーパークリーンPlus加工は、ステンレスを伸ばし磨くことで凹凸をなくし、可能な限り表面をピカピカに仕上げるものです。従来の目的は汚れをつきにくくすること、スポーツ飲料を入れても錆びにくくすることでした。ある日、凹凸のないスーパークリーンPlus加工は、炭酸飲料の炭酸ガスをより長く保持するためにぴったりだと気付きました。炭酸の気化は、凹凸があると、そこが起点となって気化が進むことがわかったんです」(南村さん)。

真空断熱炭酸ボトルの実力

そうして完成した真空断熱炭酸ボトルは、炭酸飲料の品質や温度を十分に維持できる作りを実現した。

「炭酸飲料の炭酸ガスを長時間保持するには、温度を低く抑えることが重要です。温度が低ければ、炭酸ガスの気化は可能な限り抑えられます。真空断熱炭酸ボトルは、朝に炭酸飲料を注ぐと、夕方くらいまでは温度も炭酸もキープし、美味しい炭酸飲料が楽しめます。飲料の温度が下がって炭酸が抜けることや結露の心配がなくなる点は大きなメリットですね」(南村さん)。

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