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停滞気味のシェアサイクル事業が静岡市で成功を収めている理由

2023.03.16

数万の放置自転車

そしてこの2018年6月に、oBikeは突如としてオペレーションを停止した。増える一方の放置自転車に対してシンガポール陸運局が1台ごとのデポジットを支払うよう要求した直後、oBikeはまさに逃げるかの如く運営を投げ出してしまったのだ。

その後、スマートシェアサイクル事業者は次々に倒産するか、単独運営を諦めて大手IT企業に買収されるかというシナリオを踏むようになる。ofoとMobikeは日本に進出しているが、いずれも短期間のうちに撤退した。

シェアサイクルの破綻は、誰も引き取り手のない数千数万の自転車が遺棄されるという事態を招いてしまう。オーストラリアのメルボルンでは、oBikeの自転車が重大な社会問題になった。

川へ投げ込まれる車両も後を絶たず、やがて壊れた放置自転車で彫刻を組み上げてしまうアーティストも現れた。これらを処理するための財源は、つまるところ税金である。

静岡市でPULCLEというサービスが始まるのは、これらの騒動が一区切りついたあとのことだ。

「情報の地産地消」の弊害

シンガポールやメルボルン、そしてofoとMobikeにとっての出身国である中国の各都市では、スマートシェアサイクルが地元住民の生活を阻害してしまうという事態が発生した。

が、静岡市では市民生活の邪魔になるどころか、逆に都市交通に欠かせない足になっている。その違いを考察すれば、やはり身勝手な乗り捨てを許さない仕組みに突き当たる。

地元の誇りである清水エスパルスのカラーを身にまとっている以上、PULCLEが市民の嫌われ者になるシナリオは許されない。そして、現にPULCLEは市民の親友になったのだ。

世界各国の都市が参考にすべき事例を静岡市は作ってしまったのだが、しかし当の静岡市は自らの功績に極めて鈍感であると筆者は考えている。

本来であれば、世界各国のメディアが「シェアサイクルと地元住民が共存している例」として静岡市、そしてPULCLEを取り上げていなくてはならない。

それは追手町にある静岡市役所からメディアに対してプレスリリースを出す等のアプローチをしなくてはならない、ということでもある。

ところが、静岡市に住んでみるとここでは「情報の地産地消」でほぼ全てが回っていることに気がつくはずだ。地元発の話題を地元のメディアが取り上げて地元民がそれを見る。

「静岡での出来事を、東京のメディアはどのように取り上げるのだろう?」と考える静岡市民は決して多くない。

静岡市が発表するプレスリリースは、市の記者クラブに加盟しているメディアにしか届かない。当然ながら、それらの大半は地元メディア。

ましてや「海外のWebメディアに英文のプレスリリースを送ろう」などという発想は、静岡市の姿勢からは見て取ることができない。

これではPULCLEがいかに稀な成功例かを、当の静岡市民が窺い知ることは非常に難しい。

スマートシェアサイクル復権をまさに体現しているPULCLEだが、それが該当自治体の姿勢に疑問を投げかけているのは皮肉と言うべきか。

【参考】
PULCLE

取材・文/澤田真一

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