2022年は、パンやお菓子、麺類など食卓に直結する小麦製品の値上げラッシュが続いた年でした。
小麦粉や小麦製品が高騰している今、家計や企業の救世主として見直されはじめているのが「米粉」の存在です。
「米粉パン」や「米粉パスタ」などもともと一定のファンがいる米粉製品だけに、近頃はブームの再来ともいえる盛り上がりを見せつつあるのだとか。
そこで今回は、小麦粉の代用品として注目度急上昇中の米粉の魅力を深堀りしてご紹介。生地の後半では、米からできる自家製米粉の作り方や手軽に作れる米粉レシピもまとめています。
そもそも米粉って何?小麦粉との違いは?
値上げが続く小麦粉の代わりとして脚光を浴びている米粉。この米粉、そもそもどういうものかご存じでしょうか?
米粉はその名の通り米を粉砕し粉状にしたものです。小麦粉と似ていることから、本来小麦粉を使用する料理の代替レシピやアレンジなどにもよく使われます。
ただし、米粉は小麦粉に比べると扱いが難しく、製粉するためのコスト高からこれまで普及しにくいといわれてきました。
【米粉の主な特徴と小麦粉との違い】
- 原材料は米
- 小麦粉よりも製造コストがかかる
- 米粉自体にはグルテンが含まれていないためグルテンフリー食として使える
- パンやケーキ、パスタなどに使うとしっとりもちもち食感になる
- 小麦粉より油の吸収率が低いためサクサクとした揚げ物に仕上がる
小麦粉1kgあたり110円前後なのに対し米粉は120~390円前後(※)が相場価格なので、どうしても割高感があります。しかし近年は製粉技術が発達したことなどにより、以前よりも質の良い米粉が大量生産できるフローが整いつつあるといいます。
また、米粉自体はグルテンフリーなので、グルテンアレルギーの方の代替食材としては昔から重宝されてきました。
米に含まれるデンプン成分のおかげで、米粉を使ったパンやパスタは小麦粉を使ったものよりもしっとりとしたもちもち食感になるという特徴もあります。米粉は小麦粉に比べて油の吸収率が低いため揚げ物がサクッと仕上がり、摂取する油の量を抑えることができるのも嬉しいメリットです。
【米粉と小麦粉の栄養成分比較】(100gあたり)
カロリー |
炭水化物 |
たんぱく質 |
脂質 |
|
米粉 |
356kcal |
81.9g |
6.0g |
0.7g |
小麦粉 |
349kcal |
75.8g |
8.3g |
1.5g |
※参考:食品成分データベース|文部科学省より、「穀類/こめ/[うるち米製品]/米粉」「穀類/こむぎ/[小麦粉]/薄力粉./1等」を比較
勘違いされることがありますが、米粉は小麦粉に比べて特別カロリーや糖質が低い食品というわけではありません。
米粉が体に良いといわれているのはグルテンフリー食材であることや、小麦粉に比べて消化が良く、米に含まれる必須アミノ酸をバランスよく摂取できることなどが主な理由です。
グルテンについては諸説ありますが、必ずしも全ての人に毒となる成分ではないともいわれています。ただし、グルテンアレルギーではない(と思っている)人のなかには軽度のグルテン不耐性を持っている人も少なくなく、そのような人がグルテンをカットした食生活に変えることで身体の調子が良くなる可能性は十分あるのだとか。
慢性的な疲れやだるさ、胃腸の不調などを感じている人は、試しに2~3週間程度グルテンフリーの生活をしてみても良いかもしれませんね。
なぜ小麦粉と小麦製品は値上げしているのか?
日本に流通している小麦粉の約90%は、海外から輸入されている「輸入小麦」です。
小麦粉と小麦製品の価格が全体的に値上がりしているのは、主にこの輸入小麦の価格が高騰していることに起因しています。
【輸入小麦が値上げしている主な理由】
- 2021年夏期の悪天候により、アメリカやカナダ産小麦が不作に見舞われた
- ロシアのウクライナへの軍事侵攻が発端でロシアに輸出規制がかかっている
- 円安による輸入コストの高騰
- 電気代や輸送燃料費など製造・物流コストの高騰
2021年夏、高温・乾燥によりアメリカやカナダの広い範囲で小麦が不作になり、小麦の品質低下や北米産小麦の価格高騰の発端となりました。
日本の小麦の輸入元はアメリカ、カナダ、オーストラリアの3国です。そのうち約50%はアメリカから輸入されているため、これにより大きな影響を受けました。
一方でロシア・ウクライナ情勢によって日本の小麦の価格に直接影響が出ることは少ないです。ただし、ロシアやウクライナの小麦輸出量は世界の1/4程度を占めているため、小麦の国際価格には多大な影響を及ぼしているといえます。
他にも、円安による輸入コストの高騰や、国内での製造・物流コストの高騰なども小麦粉と小麦製品の値上げに関わっています。
世界情勢に影響されやすい小麦粉に比べると、自給率ほぼ100%を誇る米を主原料とした米粉製品は安定して供給できるのが大きな強みといえます。小麦高騰による商品の値上げが続くなか、顧客離れを懸念した一部のベーカリーやうどん店が新たな戦略として米粉製品を開発して打ち出しはじめた例などもあるということです。