自然の中で進化してきたとされるヒト。私たちの心の中には先天的に自然や森林を好ましいと思う感覚があるようです。
そんな人間の性質を〝バイオフィリア〟と仮説して、オフィスやおもてなしの空間に採り入れる研究が進んでいます。
パナソニックはそのバイオフィリアに着目。ヒトの心の奥底にある自然への感性を呼び起こすような空間を創りだしました。それが、「バイオシャドー(BioSHADOW)」です。
新時代の明かりとでも呼びたくなる、バイオシャドーとはどんなものでしょうか? 同社のショールーム「BSP-LAB(ビーエスピーラボ)」でチェックしてみました。
新常識①影を使う明かり
バイオシャドーとは、天井に埋め込めるタイプのダウンライト型をしたプロジェクターです。
みなさんはプロジェクターというと、映画を観たり、プロジェクションマッピングのような光による映像を眺めるもの……そう思うかもしれませんね。
しかし、このバイオシャドーの名前は、バイオ=生物や生命と、シャドー=影を組み合わせたもの。その名の通り、本物の自然をモチーフにし、映し出す〝光〟と〝影〟を創り出すのです。
本来、ライティングは明るくするものであり、影は基本的に避けたいもの。その影を使ったことが従来の常識にとらわれない空間を生み出したのでしょう。
バイオシャドーには、「木漏れ日(こもれび)」「水面(みなも)」「滝」「海中」「流れ雲」「オーロラ」「波紋」の7つのコンテンツがプリインストールされています。
海中やオーロラのコンテンツにはご覧のように少々着色されていますが、基本的にモノクロ基調。色温度(色の暖かさ)は調整可能ですが、いずれの色温度にしても、明るい部分と影の部分が美しいコントラストを描き、見ていると心が和んできます。
新常識②気配を消す明かり
バイオシャドーは、〝気配を消す〟工夫がされていることもユニークなところ。〝自然である〟ことが大事なのだそうです。先ほどご紹介した7つのコンテンツが壁などに投影されますが、あくまで景色としてオフィスやおもてなしの場に馴染むことを目的にしています。
光と陰が創る〝自然な光〟ゆえ、観葉植物などと合わせて利用すると、さらに自然や森林を感じさせてくれるのです。
例えば、オフィスのエントランスやホテルのロビーなどに利用すると、日本人なら「わびさび」の心を感じるのではないでしょうか。あたかも枯山水の庭園を臨むように……ちょっとオーバーかもしれませんが、光という無機質な存在を有機的に見せる工夫は、日本人の心象風景と通じる、そう感じるのは筆者だけでしょうか?
そして、このバイオシャドーは光を投影するだけではなく、Bluetoothスピーカーと組み合わせれば音での演出も可能です。こちらは天井にセットしたレールなどへ簡単に組み込むことができます。
実際に聞いてみましたが、自然なステレオサウンドを奏でることが可能。もちろん、大音量で低音を響かせることには不向きですが、波の音や鳥のさえずる音、クラシックなどを流すと、実に快適な空間になるのが印象的でした。