株式交換のデメリット
株式交換にはメリットだけでなく、デメリット・リスクもあります。完全親会社にとって、株式交換にはどのようなデメリットがあるのかを見ていきましょう。
手続きが複雑
株式譲渡などの方法であれば、手続きに大きな神経を使う必要はありません。相手企業との単なる取引行為であり、必要な手続きが会社法に定められているわけではないためです。
しかし株式交換は、会社法で手続きのルールが定められています。法律に従って適切に作業を進めなければならず、手続きが複雑なことがデメリットです。
法律上の必須行為を省略してしまった場合、手続き無効の訴えを起こされる恐れもあります。それぞれの手続きにはある程度の日数がかかるため、クロージングまでに長い時間を要することも覚悟しなければなりません。
株価が下がる恐れがある
株式交換では、親会社が対価として新たに株式を発行します。親会社の発行済株式総数が増えるため、株主ごとの持ち分比率が下がります。
持ち分比率が下がると株主総会での影響力も下がり、1株当たりの価値が下落してしまう恐れがあるのです。
1株当たりの価値が下落することを『株式の希薄化』といいます。親会社が上場企業の場合は、株式の希薄化で市場評価が下がると、株価も下がるリスクがあります。
株主比率が変わる
株式交換で親会社が新たに株式を発行すると、子会社の株主が親会社の株主となるため、親会社の株主比率に変化が生じます。
株主比率が変わると株主総会の構図も変わり、新たな株主が経営にさまざまな影響を与えかねません。経営者・既存株主にとっては、デメリットになるケースもあります。
株主比率がどのように変わるのか、経営面でのリスクが生じる恐れがあるのかなど、経営陣は事前に考えておく必要があるでしょう。
株式交換の成功事例
近年行われた株式交換の事例を紹介します。企業買収の背景にあったものや、株式交換の種類についてもチェックしておきましょう。
日本コロムビア
日本コロムビアは、国内で初めて誕生したレコード会社です。1910年の創業以来、さまざまなジャンルで音楽業界をけん引してきました。
2017年、日本コロムビアは音楽配信会社フェイスの完全子会社となっています。音楽コンテンツ配信事業を軸としていたフェイスと協業し、両社の企業価値向上を図る目的が背景にあったのです。
通常の手続きによる株式交換が行われ、フェイスの完全子会社となった日本コロムビアは上場廃止となり、上場68年の長い歴史に幕を閉じています。
ヒューリック
ヒューリックは、主に不動産賃貸事業を手掛ける企業です。2019年、ヒューリックは日本ビューホテルを株式交換で完全子会社化しています。
事業環境の変化に伴ったサービス提供や、ホテルの運営による新たな収益軸の獲得が、株式交換に踏み切ったヒューリックの目的です。
ヒューリックは株式交換のスキームとして、簡易株式交換を選択しました。一方の日本ビューホテルは、株式交換契約の効力発生日に先立って上場を廃止しています。
この株式交換により、ヒューリックグループは本来の不動産事業に加え、ホテル運営の収益を取り込むことが可能になりました。日本ビューホテルグループも新規ホテルの展開を加速し、国内有数のホテルグループを目指すとしています。
トヨタ自動車
自動車製造関連企業の株式交換は、主にグループ内でのすみ分けや、資源の有効活用を目的として行われています。
2016年に行われたトヨタ自動車とダイハツ工業の株式交換は、トヨタ自動車が簡易株式交換によりダイハツ工業を完全子会社とする取引です。
この株式交換には、トヨタブランドとダイハツブランドの差別化を進める目的がありました。グループ内での棲み分けを行い、顧客に合わせた最適なラインアップの拡充を狙ったようです。
また、グローバル化が進む自動車業界で、両社のさらなる企業価値の向上を図ることも、株式交換の背景にある目的の一つです。新興国市場において両社の事業基盤を共有し、ダイハツが主体となって事業を展開するとしています。
構成/編集部