商品開発力で他社との差別化を図るセリア
セリアの商品開発チームは少数精鋭で固められていることで有名。月に500アイテム以上の商品開発を行い、バイヤー自身が商品化の決定権を持っているといいます。消費者が実際に購入したPOSデータを活用しつつ、店舗にも足を運んでニーズを汲み取っています。データ分析と売場の観察という地道な方法で、売れる商品を生み出しているのです。
セリアは何か特別なことをしているわけではありません。安く、良いものを提供するという基本を大事にしているだけです。
下のグラフは、マイボイスコムが「直近1年間に利用した100円ショップ」の消費者調査を行った結果です。セリアは2019年4月の54.3%から、2023年1月は61.6%へと上がっています。キャンドゥは2.4ポイント下がりました。
※マイボイスコム「100円ショップの利用に関するアンケート調査(第4回)」より
100円ショップ利用者が重視する点は、「品揃えの豊富さ」が7割、「商品の実用性」「商品の品質」が4割であることがわかっています。消費者の声に応えているセリアが、顧客満足度を高めているということなのでしょう。
ただし、セリアの業績が堅調とはいえ、コスト高に起因する減益となったのは紛れもない事実。100円にこだわり、高品質の商品を提供するという従来の戦略が、長く続くのかはわかりません。
なお、頑なに価格改定を行わないサイゼリヤの国内事業は未だに赤字です。
イオンの子会社化は商品にどう影響するのか
キャンドゥの集客を阻害しかねない要因があります。イオンの子会社となったことです。
イオンは2021年10月にTOBを実施。最終的にキャンドゥの過半数の株式を取得しました。
キャンドゥは全体方針として、「イオングループとの協業によるお客さま満足の最大化」を掲げています。M&Aのシナジー効果を上げるとなると、取引先をイオンと統合して大量仕入れによるコスト削減を行うことが考えられます。仕入先の統合が進みすぎた場合、イオンで販売されている商品と代り映えのしないものばかりとなり、商品力が弱体化する可能性があります。イオンとのシナジー効果で原価を下げられる可能性はあるものの、商品開発力が落ちることになれば、客離れは避けられません。
しかも、キャンドゥはイオン内にオープンする大型店が主力となるでしょう。2022年11月にイオンモール福岡店に170坪の大型店を出店しました。規模の大きい店舗は生活必需品以外の細かなニーズに応える商品を陳列し、大量の顧客を集めなければなりません。
買収後のキャンドゥの底力が試されます。
取材・文/不破 聡