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上司は「異質な部下」でも受け入れなければならない理由

2023.02.20

■連載/あるあるビジネス処方箋

今回は上司がどのような部下を高く評価するのか、をテーマに取材を試みた。評価の傾向を知ると、上司や部下、会社の文化や経営風土、さらに人事マネジメントのあり方が見えてくる。その意味でも、人事の専門家がどう捉えているかを心得ておくことは大切だ。

話を伺ったのは、大手士業系コンサルティングファーム・名南経営コンサルティング代表取締役副社長で、社会保険労務士法人名南経営の代表社員である大津章敬(おおつ あきのり)さんだ。

自分にとって異質な部下を受け入れられるか?

大津さんは1994年から社会保険労務士として中小企業から大企業まで幅広く、人事労務のコンサルティングに関わる。専門は、企業の人事制度整備・ワークルール策定など人事労務環境整備。全国での講演や執筆を積極的に行い、著書に『中小企業の「人事評価・賃金制度」つくり方・見直し方』(日本実業出版社)など。全国社会保険労務士会連合会 常任理事でもある。

Q.上司が部下を高く評価する傾向は会社や部署、職種や経営状態、社風、人事制度により異なるのでしょうが、多くの会社で共通していることはありますか?その中で特に目立つものをお教えください。

大津:上司は、自分と似たような仕事の仕方をする部下を「使える」と高く評価する傾向はあるように思います。実は、私にもそのような思いがあります。31歳で管理職になり、7年前から役員をしていますが、似たような仕事の仕方をする部下を高く評価したくなる思いは確かにあるのです。

しかし、実際にはそのような思いに駆られることなく、部下を評価し、育成するように心掛けているつもりです。たとえば、私は若い頃から新規提案を積極的にするタイプでした。今もその姿勢は変わりません。ですから、部下を見る時に新規提案に熱心な人を重んじたくなります。

一方、新規提案には積極的ではなかったとしても、仕事ができて、別の面で適性があると思える部下に活躍してもらえる仕事を任せることもあります。管理職に登用する場合もありました。

こういう態勢にしたほうが部署やチーム、そして会社にとって、そして最終的には顧客に価値があるように私は考えています。ただ単に、私と違うタイプを優遇するのではありません。きちんとした仕事をする力がまずは必要で、そのうえで例えば、発想の仕方が違う人を登用するようにしているのです。

Q.自分にとって異質な部下を受け入れるのは、ストレスにならないでしょうか?

大津:部署の責任者である私からすると、仕事の進め方やその考え方が違う人が管理職をしていると、部署の運営について意思疎通をする際に確かにストレスに感じることが時々あります。

しかし、そのような管理職がいることで、少なくとも私の思考に一工程が増えるのです。それが、部署の運営におけるリスクマネジメントになっているように思います。管理職全員が、どんどんと前に進める私と同じような考え方だとすると、組織が崩壊しかねません……(苦笑)。

多様な人材がそろっているほうが、組織は強いと思います。意見や考え方の相違が多少はないと、一面的な物の見方が強くなりがちです。それによって、間違った方向に進んでいく場合があります。

Q.「意見や考え方の相違が多少はないと、一面的な物の見方が強くなりがち」といった指摘は特にどのような企業で目立つのでしょうか?

大津:ここまで述べたことは、この20数年で見てきた多くの企業に程度の違いはあれ、おおむね言えることです。たとえば、社長や役員と似たタイプの管理職が多い会社は、特に社員数が100∼200人の中小企業に目立ちます。

このような会社の総務、人事から相談を受ける時は「管理職に登用する際は、同じタイプの人が増えないように、バランスを考慮されたほうがよろしいのではないでしょうか…」と助言します。それを実行するのは小さな会社ではすぐには難しいのかもしれませんが、多様な人材で組織を作ることを総務や人事として意識の片隅に置いておくだけでも、効果があると思います。

Q.なるほど。多様な人材で構成することが大切であるのはわかりました。それとは反対に、多くの社員のタイプがよく似ている職場ではどのような問題が生じやすいのでしょうか?

大津:多様な人材がいない職場は、パワーハラスメント(以降、パワハラ)が起こる可能性が高くなるとも思います。中小企業よりは人事評価が客観的と思える大企業でも、起こりうるでしょう。むしろ、大企業のほうが、管理職や社員(一般職)がデキナイ人や異質な人に強く当たり、深刻になる傾向があると私は見ています。大企業の人材は中小企業に比べてレベルが総じて高いために、時として仕事の成果や実績に大きな差がつきやすい一面があるからだと思います。

パワハラの研修や講演をすると、質問を受けることがあります。多いのは、パワハラのラインです。つまり、何を持ってパワハラと呼ぶのかといった判断基準を知りたいのだろうと思います。厚生労働省が定めた言わば、最低限のガイドラインは確かにありますが、日々の仕事において詳細な基準は存在しないのです。たとえば、上司で言えば、部下との関係性によって接し方を変えていくしかないのだと思います。これは、私も気をつけているところです。

取材を終えて

「思考に一工程が増える」といった指摘は貴重ではあるが、私の経験論で言えば苦しいことだ。自分が思い描いたようには進まないからだ。例えば、作家やフリーライターと編集者の仕事では、双方のやりとりで考えがまったく異なる場合がある。その時、深く話し合うとその溝がますます深くなることもありうる。沈んだ気分になる場合すらあるのだ。だが、たとえ物別れに終わっても、自分の意識に何らかの刺激となった可能性はある。このように言えるようになるのに、私は30年程の時間が必要だった。

読者諸氏は、「思考に一工程が増える」から何を感じとるだろう。

取材・文/吉田典史

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