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データサイエンス系学部の新設で日本のデジタル人材不足は解消できるのか

2023.02.01

日本には「統計学部」が存在しなかった

2019年に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査レポート」では、2030年に日本のIT人材が最大で約79万人不足すると試算されている。レポートでは、AI(人工知能)やビッグデータを使いこなして付加価値の創出や革新的な効率化を進めるIT人材の確保を訴える内容が続いた。

このレポートが発表されて以降、より多くの日本企業がDX化(DX=デジタルトランスフォーメーション)を推し進めようと人材確保に動いており、ビッグデータを読み解いて有益な知見を提供できる「データサイエンティスト」の需要がさらに高まっている状況だ。

ただ、昨今のDX化の動きにおいて、「作業の効率化」を追求する企業や教育機関も少なくない。しかし、DXとはそういった概念から一歩進んで、既成概念の破壊を伴いながら新たな価値を創出するための改革を指す。この「改革」を的確に導くことのできるリーダーの育成は、多くの日本企業において急務であり、こうした人材を育成できる教育環境を整えることが必要だとされている。

日本は、データサイエンス分野で世界から圧倒的に遅れている。2017年の段階で、アメリカでは100程度、イギリス・韓国には約50、中国にいたっては300以上の「統計学部」が存在するが、日本には「統計学部」という専門の学部は存在しなかった。経済学部などで統計学自体は学べるものの、あくまで分野に関わる範囲に留まっており、分野横断的な分析を行う専門の学部はなかったのだ。

そんななか、2017年4月に滋賀大学がデータサイエンス学部を設置したのを皮切りに、”データサイエンス系”の学部を置く大学が増加。2023年4月には、京都女子大や亜細亜大など全国約10の大学にデータサイエンス系の学部が新設される。

その1つに、一橋大学の「ソーシャル・データサイエンス学部(以下、SDS)」がある。同大学としては、商経法社の4学部体制となって以来、実に72年ぶりに新設される学部ということになる。SDS設立の経緯や、そこで学ぶことができる学問領域について、SDS学部長に就く渡部敏明氏に話を聞いた。

一橋大学で「文理融合」のSDSを設置した狙いとは

一橋大学SDSのカリキュラム。1,2年次では社会科学及びデータサイエンスの基礎的な知識を吸収して、3年次以降の実践的な学習内容に備える。自学部以外の2学部以上にわたって6単位取得が課される点も特徴だ。

そもそもデータサイエンスとは、統計学や機械学習・深層学習を含めたAIなどを活用して、大量のデータの分析や解析を行って有益な洞察を得る学問を指す。SDSでは、データサイエンス領域に関して、統計学、AI・情報、プログラミングという3つの分野を系統的に学修できる。それだけではなく、社会科学とデータサイエンスを『融合』させて課題を解決できるよう、経営から法律といった幅広い社会科学領域に関しても体系的に学べる点が特色なのだという。

「SDSでは、経営学やマーケティングなどのビジネス領域、法学や政治学などの社会課題領域から、それぞれ1分野以上を選択して学びます。我々としては、データ分析手法を応用する分野に関しても正しく解釈できるだけの知識を備えた人材を育成したいと考えています」

“データを扱うことができるだけ”ではない人材育成を志向する背景には、応用先分野の知識が不十分で適切な解釈ができないデータサイエンティストではいけないという危機感があった。渡部氏は、とある学会を訪れた時に衝撃的な場面に遭遇したという。

「あるデータサイエンスの国際学会に参加した時、そこではテキストマイニング(=新聞やSNS等の文字情報を使って、データから有効な知見を導く手法)を用いて、経済の行方を予測するというテーマでセッションが行われました。当然、経済の質問が場に出てくるわけですが、その質問に対して『自分はデータサイエンティストで、エコノミストではないから答えられない』と答えた人がいました。我々としては、例えばデータを分析した結果導かれた経済に関する知見に対して、経済学の観点から適切に解釈し、現実の社会への示唆を得られる人材を育成したいと考えているのです」

「文系の大学」とみなされることも多い一橋大学だが、例えば経済学部では、実は数字に強く統計学や計量経済学などで力を発揮してきた学生も少なくなかった。そうした学生の中には、データサイエンスに関心を持っていた者も多く、潜在的な需要は学内に既に存在していたのだという。

同大学では、伝統的に学部間の垣根は低く、学生たちは他学部の開講科目をほとんど自由に履修することが可能だ。SDSの新設によって既存学生の需要が満たされるだけでなく、新たに入学したSDS学部生も、より幅広い分野について深く学ぶことができる環境が整っている。

「例えば経済学の領域を深めたいと考えた学生は経済学部の上級の授業を受講できますし、他学部の学生がSDSのデータサイエンスの授業を受けることも可能です。大学全体で、データサイエンス教育を推進する環境づくりを進めていきたいと考えています」

またSDSでは、3年次に「PBL演習」(PBL=Project-Based Learning)を開講し、企業や官庁などで実際に行われているデータ分析に関わることができる。

「およそ20の企業や官庁からデータや現実の問題意識をシェアいただき、学生がデータをどのように扱い、分析すればよいのかを学ぶ実践的な演習の場を整える予定です。学生たちにとって、社会がいかなる課題を抱えているのかを知る良い機会となりますし、企業や官庁との接点を得ることもできるでしょう」

また、ビッグデータの分析・取り扱いや人工知能に関連した、法律や倫理の基礎知識を学ぶ必修科目が組み込まれていることも、SDSのカリキュラムの特徴だ。データサイエンスに関連した法や倫理に精通した専門家を要する学部は、日本全体で見ても非常に少ないのだという。

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