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孤高のギタリスト、ジェフ・ベックに思いを馳せる

2023.01.13

身内や親しい人の訃報に接すると涙が浮かぶ。だが贔屓のアーチストやプロスポーツ選手、芸能人が亡くなって涙したのは、1991年11月24日、フレディ・マーキュリーの死を知った時だけだ。辛いことにたった今日、2度目の涙が流れた。2023年1月12日早朝、前々日の10日にジェフ・ベックが亡くなったことを知る。享年78歳。“突然、細菌性髄膜炎に感染した”という。

ジェフ・ベックの名を知ったのは約50年前、ロックに目覚めた中2の時だ。レッド・ツェッペリンの洗礼を受けた僕は、そのリーダーのジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、そしてジェフ・ベックがヤードバーズに在籍したことから、この3人を3大ギタリストと呼ぶという記事を音楽誌『ミュージックライフ』で読む。後にこれは日本だけの呼び方と知るが、数多いるギタリストの中でこの3人は突出しているという刷り込みが頭に入った。だがその後ジェフ・ベックのインタビュー記事等を読む機会はなく(インタビュー嫌いと言われていた記憶がある)、その人物像を知ることはなかった。

1973年のベック・ボガード&アピスでの初来日こそ見逃したが、1975年の「ワールド・ロック・フェスティヴァル」から2017年の『ラウド・ヘイラー』ツアーまで、ほとんどの日本公演に足を運び、見る度に“前回を上回る最高の演奏”に感動してきた。後楽園球場「ワールド・ロック・フェスティヴァル」での「恋は水色」の瑞々しい音色、2009年さいたまスーパーアリーナでのクラプトンを凌駕した(と僕は思った)エッジの立ったギター、『ラウド・ヘイラー』ツアーでの若き女性ボーカリスト、ロージー・ボーンズを見守る優しい笑顔etc. 、思い出は枚挙にいとまがない。

ジェフ・ベックの人物像を知らない僕はステージを見る度に、あるいは新譜を聴く度に、ジェフ・ベック=求道者というイメージを抱いてきた。職人というより求道者。日々、寝る間を惜しまず、食事も取らず、ギター・テクニックのさらなる向上に時間を費やす、ストイックで崇高なギタリストというイメージだ。

だが実像は異なる。少なくとも『ブロウ・バイ・ブロウ』で大成功するまでは、相当“人間的な”生き方を重ねてきた。その一因にはクリーム以降のエリック・クラプトン、レッド・ツェッペリンを結成したジミー・ペイジ、いち早く大成功を掴んだ“同僚”へのやるせない思いがあったようだ。

『トルゥース』/ジェフ・ベック・グループ。

一例をあげる。ヤードバーズはマディ・ウォーターズの「ユー・シュック・ミー」をカバーしたが、一般にはレッド・ツェッペリンの代表曲として知られているだろう。だがこの曲はツェッペリンの『Ⅰ』よりも先にリリースされた、ジェフ・ベック・グループのデビュー・アルバム『トルゥース』に収録されている。ヴォーカルは、ロッド・スチュワートだ。ニューヨークのホテルで、ツェッペリンのマネージャーとなるピーター・グラントに発売前の『Ⅰ』のアセテート盤を聴かされたジェフ・ベックは、「ユー・シュック・ミー」収録を知りショックを受けて怒る。それに対しジミー・ペイジは、音楽誌で「ベックと僕は同じようなルーツから来ていると理解して欲しい」と弁明する。この2人は学生時代からのギター仲間で、ジミー・ペイジの家で共にレコードを聴きながらギターを熱心に練習していたのだ。

“Deep Story in Rock ロック絶対名曲/名盤シリーズ ジェフ・ベック/『ブロウ・バイ・ブロウ』”。

このエピソードを知る理由を説明しよう。1980年代前半の『FMレコパル』編集部在籍時からお付き合いがあり、僕のロックとオーディオの師匠である音楽プロデューサー/ライターの岩田由記夫さんが執筆し僕が編集する電子書籍、“Deep Story in Rock ロック絶対名曲/名盤シリーズ”は2020年12月にスタートし、2023年1月刊行の“ジャニス・ジョプリン/『パール』”で18冊目となった。その前巻、2022年11月刊行の“ジェフ・ベック/『ブロウ・バイ・ブロウ』”で、未知のジェフ・ベックのエピソードを数多く知ったのだ。

そこには幼き・若き日のジェフ・ベック、ヤードバーズ在籍時のジェフ・ベック、脱退後から『ブロウ・バイ・ブロウ』に至るまでのジェフ・ベックが、生々しく描かれている。幼い頃からの持病ゆえか感情の激しい起伏、ジミー・ペイジとの熱き友情と仲違い、ピンク・フロイドやザ・ローリング・ストーンズからの勧誘、名曲「哀しみの恋人達」のギター奏法の背景etc.、ジェフ・ベックのファンに留まらず、ロック・ファンなら驚くほどの興味深い逸話が詰まっている。

『ブロウ・バイ・ブロウ』/ジェフ・ベック。

そしてもう一つ、岩田さんの文章で刺さったのが『ブロウ・バイ・ブロウ』のレコードの音だ。僕がレコードで1番いい音とされるマト1ことマトリクス1のコレクターであることは@DIMEに度々書いてきた。マト1の“常識”としては、イギリスのアーチストならイギリス盤のマト1、アメリカのアーチストならアメリカ盤のマト1の音が1番いい、となる。ところが岩田さんは、“『ブロウ・バイ・ブロウ』はアメリカのマーケットをターゲットにして制作したアルバムなので、聴いたことはないがイギリス盤よりアメリカ盤の方がいい音ではないか”、と書いている。  

そこでUKマト1(A1/B1)しか持っていない僕はUSマト1(1E/1D)を購入、聴き比べてみた。まずはB面1曲目の「哀しみの恋人達」。UKは聴き慣れているのでUSを先に聴くと、ガッカリする。ノイズが多すぎて、録音の良し悪しどころではない。概して古いレコードの静かな曲はノイズが多いが、それにしても相当聴き込まれたのだろう。UKもノイズが入るが、キーボードがUSより左右に広がりなんとなくUKが勝る気がした。

UK盤『ブロウ・バイ・ブロウ』A面のレーベル。

US盤『ブロウ・バイ・ブロウ』A面のレーベル。

続いてはハードな曲をとA面最後の曲「スキャッター・ブレイン」で比べようとし、妙なことに気づいた。レーベルにプリントされた曲の長さが、UKでは7分10秒、USでは3分39秒だ。テイクが違う? そんな馬鹿な? ついでに言えばその前の曲「エア・ブロウワー」も異なる。だが聴いてみれば、どちらも約5分30秒で同じだ。それにしてもUKもUSも実際の長さとかなり異なるとは、なにゆえだろう。

それはさておき、僕はマト1の“常識”通り、UKが上だと思った。ファズがかかったようなギター音の震えがより深く、ドラムのアタックはより強く、ストリングスの切れもより鋭く聴こえた。ただし前述のように僕のUS盤は相当数再生されたようで、レコードのコンディション次第では優劣が逆転するかもしれないと思える程度の差だ。

ただしどちらの曲も、レコードではどうにも物足りない。ライブで何度も何度も聴き、その度に前回より進化した切なく哀しい、あるいは速くて切れ切れのギターが脳裏に焼き付いているからだ。あのライヴはもう永遠に体験できない……。

ジェフ・ベックのファン、そしてこの記事を読んでジェフ・ベックに興味をもった方に、“Deep Story in Rock ロック絶対名曲/名盤シリーズ ジェフ・ベック/『ブロウ・バイ・ブロウ』”を是非おすすめしたい。この電子書籍にはサブスクリプション=アマゾン、アップル、スポティファイ、ユーチューブで再生できるプレイリストも付き、ジェフ・ベック・グループとレッド・ツェッペリンの「ユー・シュック・ミー」を聴き比べることもできる。

なおこのシリーズの既刊には“レッド・ツェッペリン/「天国への階段」や、ジェフ・ベックと同世代で早逝した“ジャニス・ジョプリン/『パール』”(1月15日刊行・配信)があり、3月15日には“エリック・クラプトン/『461オーシャンブールヴァード』を刊行予定。既に手書き原稿が上がっているクラプトンはシリーズ最長編の400字詰め原稿用紙で91枚、クラプトンに限らずどの巻にもロックの深い話がぎっしり描かれている。

ジェフ・ベックさん、素晴らしいレコードとエキサイティングなライブをありがとうございました。安らかにお眠りください。

文/斎藤好一


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