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30年働いてきてあらためて感じた「出世で抜きん出る人」の特徴

2023.01.12

■連載/あるあるビジネス処方箋

この原稿を書くのは、12月の末日。毎年、この時期は仕事を通じての知人などと連絡をとることが多く、こんなことを話し合う。

「あの編集者が、副編集長(課長)になった」
「副編集長が数人いる編集部の中で、最も上の筆頭デスクになるみたいだ」
「あの編集長(部長)が3年で外れるが、役員との間で何かがあったようだ」

20年程前から続けているが、会社員の出世(昇格)についてしみじみと考えてしまう。今回は同世代の中で出世が抜きん出る人の特徴について、私の約30年の社会人経験から得た考えを紹介したい。

この場合の出世は30代前半から40代前半にかけて課長になり、40代半ばから50代前半にかけて部長、50代前半から後半で役員になるケースにする。対象となる業界は出版、新聞、広告、IT、金融、メーカー、商社で、正社員数で500人以上。これよりも規模が小さいと、人事の仕組み(採用や評価、人事異動、昇格など)に課題や問題点が多く、出世以前のところで組織が行き詰まっているケースが多いので、今回は避ける。

私が確信に近い思いを持っている「同世代で出世が抜きん出る人の特徴」とは、以下のものだ。

1,会社員的な性格、気質

例えば不本意な仕事を担当することになっても、少なくとも表向きは黙々と取り組んでいくタイプだ。組織人ならば当たり前なのかもしれないが、できていない人はいる。

会社員の場合、上司や周囲から認められてはじめて活躍の場や機会が与えられ、その業績や実績で評価される。活躍できうる場がまずは必要なのだが、それがない社員は少なくない。フリーランスの場合、それを自分の力や判断でつくることができるかもしれない。現在の仕事の相手と上手く進まないならば、違う相手を見つけ、活躍のチャンスを探ることができるだろう。

会社員は、これがなかなかできない。大半の職場では、自分で仕事を選ぶことが難しい。まして、上司や部署を部下が決めることはさらに困難だ。生殺与奪の権は、上司やその上の役職者が握っている。だからこそ、上司や周囲と良好な関係をつくることが極めて大切になる。そのためにはまずは組織の秩序やルール、暗黙の了解、風土や文化を心得た言動をとる、いわゆる会社員的な性格、気質が絶対に求められる。

言い換えると、会社員として優秀であることと経営者や自営業者、フリーランスとして優秀であることは根本から違う。会社員は、あくまで組織人なのだ。

2,人間関係処理能力が高い

会社員的な性格、気質でないと、得てして職場ではトラブルメーカーになる可能性が高い。「今は実力主義の時代。仕事ができれば上司や周囲との少々の摩擦があろうとも、認められ、活躍の機会が与えられる」と信じ込む人がいるようだが、それは違うと私は思う。

そもそも、社員数が500人を超える会社では人事や経理、財務、営業などの仕組みが全社的なレベルに浸透している。そうでないと、この規模の組織は動かない。個々の仕事は標準化、規格化、マニュアル化が進み、1人の社員の力量に必要以上に依存しないようになっている。だからこそ、1人の社員が辞めても、社長が退陣した場合ですら、大きな混乱はなく、業績はほぼ変わらない。

こういう中では、上司や周囲と摩擦が絶えないトラブルメーカーや職場の雰囲気ブローカーは不要なのだ。上司からするとあえて、頼る理由がない。むしろ、中庸を得た人格で人間関係処理能力が高く、周囲とインフラ(つながり)を広く深くつくることができる人のほうがはるかに戦力になる。こういう人が上司から認められ、活躍の機会をつかむ傾向がある。繰り返すが、活躍の場がない限り、高く評価されることはまずない。それでは、昇格で必ず行き詰まる。

3,高い処理能力

上司や同僚と人間関係さえ構築できていれば、活躍できるのかと言えばそうでない。もちろん、仕事力は同世代の中での平均よりは常に高くなければならない。ここで注意すべきは、高い仕事力と言うと特別な成績を残すことと思いがちだ。だが、500人以上の会社ならば1人に依然する仕組みにはなっていないのだから、それは難しい。

この規模の会社では、大学受験の一般入社の試験で言えば難問・奇問で点数の差はつかない。むしろ、基本的な問題や頻出問題で差がつく。つまり、半数以上の社員が時間内に確実にできる仕事で必ず差がつくように、仕組みが出来上がっているのだ。

では、頻出問題とは何か。会社員の仕事力で最も基本となり、重要なのが処理能力だ。例えば、時間内で営業用の資料をスマートにつくり、それを上司に丁寧に説明し、了解を確実に得て営業先の相手にわかりやすく伝え、契約に素早くこぎつける。その後のフォローも的確にすることなどを意味する。これらの処理能力のベースになっているのが、小学校から高校までの国語教育で学ぶ「読む力」「話す力」「聞く力」「書く力」だ。

私は2006年から2017年まで大手の新聞社やテレビ局の新卒採用試験を受ける大学生に月に数回のペースで専門学校で教えていた。難易度の高い大学(国公立、私立を合わせて10校程)に一般入試で入った学生と話すと、「話す力」「聞く力」は難易度が平均的なレベルの大学の学生よりも総じて高いことに気づく。メールのやりとりも、平均的なレベルの学生よりもスムーズだ。「書く力」のレベルが高いのだろう。

この学生の一部(学生500人の程のうち、数人)は大手の新聞社やテレビ局に新卒として就職し、さらにその一部は活躍し、同世代の中で30代前半から半ばで課長級になり、早く昇格していく。おそらく、人事評価は毎期高いはずだ。彼らは総じて「読む力」「話す力」「聞く力」「書く力」や処理能力が高く、高いレベルの仕事を安定的にするからだと私は見ている。この安定が社員数500人以上の会社の場合、特に大切だ。

この社員たちの上司の一部と私は同世代であり、20数年前から仕事を通じてつながりがある。上司らは、こう評することがある。「彼に仕事を任すと、安心」「仕事のレベㇽが高いところで、安定している」。こうして信用を獲得し、活躍の機会をつかみ、実績を残すのだろう。

なお、処理能力の低い人は次のような問題を繰り返す傾向がある。

・電話を入れるが、不在の場合が多く、こちらに電話を打ち返すことはほとんどしない。

・メールの返信をしない。するのは、20本程に1本。メールを見落とすことも多い。

・メールの内容の意味がわからない。日本語として成立していない。

・打ち合わせや会議の内容について予習をしない。話し合う最中にこちらの話を真剣に聞くことをしない。メモもしない。終了後、早いうちに内容を忘れる。

・その後、仕事を進めると、打ち合わせや会議で合意をしたことを「聞いていない」「知らない」「(自分は)言っていない」と言い、話が打ち合わせや会議以前に戻る。

・ほかの場でも、「聞いていない」「知らない」「言っていない」が多く、混乱状態になっている。

・仕事のペースが遅い。精度も低く、問題が続出する。

・同じ問題やトラブルを繰り返す。会社に損害を与え、相手にも迷惑をかけている自覚に乏しい。

・一貫して「常に自分は正しく、常に相手が悪い」といった姿勢で仕事をする。

総じて仕事のレベルは低い。

ちなみに私が仕事で接点を持った東大卒の社員はこの30年程で70人ぐらいだが、その7割以上は処理能力が高い。

4,ポータルサイトやハブのような存在

処理能力が高く、仕事のレベルが常時高いと、職場での扱いがネットの世界で言えば、多くの人が見るポータルサイトのような位置づけになる。このような存在になると上司から信用が増し、一段と活躍できうる機会を与えられ、他を圧倒する実績を残し、毎期キープする。それで周囲や他部署から一目を置かれた、言わばハブとなる。

常に注目され、高い評価を受けるから、きっと心が満たされた気分になるのだろう。そんなところから余裕が生まれ、上司や周囲、取引先やクライアントなどのへの配慮が出来るようになる。相手への配慮は、限られた人にしかできないと私は思う。自分を受け入れる範囲でしか、他人を受け入れることはできないものだ。今の自分に強い不満があり、自分を受け入れることができないならば、相手を受け入れることもおそらくできないだろう。

逆に言えば、昇格で行き詰まる人は会社員的な性格や気質ではなく、上司や周囲とトラブルを繰り返す。そして、処理能力が低いから、活躍の場をいつまでも与えられない。おのずと高い評価は受けられない。ほとんどの人が関心を持たないブログのような存在になってしまう。そこでいじけて、投げやりになるから、社内でますます相手にされなくなる。自分で、自分をくさらせてしまうのだ。

読者諸氏が出世で抜きん出たいならば、あらためて自らを振り返ってみることもよいのではないだろうか。

文/吉田典史

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