個人事業主の接待交際費の扱い
個人事業主とは、法人を設立することなく事業を営む個人のことです。法人と個人事業主では、税金の種類や税率、利用できる控除などが異なります。個人事業主の場合、接待交際費はどのような扱いになるのでしょうか?
全額経費として計上が可能
個人事業主は、接待交際費の全額を必要経費として計上できます。年間の上限がある法人に比べ、個人事業主の方が優遇されていると感じるかもしれませんが、必要経費に算入できる範囲は厳格に定められています。
当然ながら、『事業に関係する支出』でなければ、経費として認められない点に注意しましょう。接待交際費であれば、いつ・誰と・どのような目的があって接待をしたのかを明確にしなければなりません。事業内容や規模を考慮して、妥当な金額・回数であることも重要です。
家事費との区別に注意
税務署では、接待交際費の中に事業に関係のない『家事費』が紛れ込んでいないかをチェックしています。家事費とは、日々の生活において生じる生活費のことを指します。
自宅を仕事場にしていたり、家族を従業員にしていたりすると、事業用とプライベート用の支出の区別が付きにくく、税務調査の対象になりやすいのが実情です。税務署に接待交際費の使途が不透明であると判断されれば、経費計上ができません。
原則、友人との飲食代は経費に当たりませんが、友人が事業上のパートナーで、かつ打ち合わせを兼ねて飲食をしたのであれば、接待交際費として扱えます。
接待交際費の扱いで注意すべきポイント
法人や個人事業主が接待交際費を処理するに当たり、いくつか留意しなければならない点があります。特に、接待があった事実を証明する書類については、管理を徹底させましょう。
領収書は必ず保管・管理する
現金払いの場合、領収書やレシートがないと経費計上が認められないのが一般的です。法人にしろ個人事業主にしろ、接待飲食費が生じた際は領収書やレシートを保管しておく必要があります。
なお、法人カードで決済する場合、カードの利用明細が支払いを証明する書類となるため、領収書を発行してもらう必要はありません。『クレジットカードの利用伝票』と『レシート』を残しておきましょう。
法人カード決済時に領収書の発行を依頼すると、『クレジット払い』などのように記載された領収書を渡されますが、こちらは経費計上の証憑書類としては認められていません。
費用が発生した年月日や人数などを記録する
法人の場合、1人当たり5,000円以下の接待飲食費は全額を損金に算入できます。ただし、以下の事項を記録した書類(領収書・経費申請書・レシートなど)を残していなければ、5,000円以下であっても損金として認められないとされています。
- 飲食等をした年月日
- 参加した得意先・仕入先などの関係者の氏名(名称)および関係
- 参加人数
- 飲食等に要した金額・飲食店の名称および所在地
- その他飲食等に要した費用であることを証明するために必要な事項
個人事業主が接待交際費を必要経費として計上する際も同様です。領収書やレシートの裏などに、誰とどのような目的で飲食をしたのかを記しておきましょう。
参考:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁
「税込」と「税抜」の扱いにも注目する
法人の経理処理方式には、税抜経理方式と税込経理方式の2パターンがあります。どちらの方法を採用するかは会社の自由ですが、接待飲食費の処理には少し注意が必要です。『5,000円基準』について、金額の上限は以下の通りとなります。
- 税抜経理方式:5,000円(税抜)まで
- 税込経理方式:5,000円(税込)まで
税込経理方式の会社で1人当たり5,000円(税抜)の飲食をすると、損金算入の基準から外れてしまうため注意しましょう。
構成/編集部