コロナ禍で健康意識が高まったことを実感している人は多いはず。そんな声に応えるかのように医療やヘルスケアの分野では、国がスタートさせる電子処方箋をはじめ、新たな技術の確立や画期的なサービスが次々発表されている。
【話を伺った人】ナビタスクリニック 谷本哲也先生
ナビタスクリニック川崎医師。1972年生まれ。国立がんセンター中央病院やPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)などに勤務し現職。著書に『知ってはいけない薬のカラクリ』(小社刊)など。
急な体調不良でも自宅で療養しながら薬が届くように
2023年はインターネット上で処方箋のやりとりが完結する仕組みが普及していきそうだ。メリットなどについて、医師の谷本哲也さんは次のように話す。
「クラウド上にデータがあることで、ほかの医療機関も含めて過去から現在まで飲んでいる薬の種類や期間、量などの情報が共有されるので、処方の情報管理がしやすくなります。現在は患者さんの記憶やお薬手帳を頼りに情報を得ています。それだと正確な情報が医師や薬剤師に伝わらず、思わぬ副作用などのリスクを抱えてしまうことも。例えば、内科と整形外科を受診して似たような薬が処方されたり、相性の悪い薬が処方されたりするケースです。処方情報が正確に伝わることが適切な治療につながります」
もしもパーソナルな情報をサービスに提供したくない場合は、同意せずに従来の紙でもらう処方箋を選択すればいい。
そして、これからは診察から処方まで自宅から一歩も出ずにスマホひとつで完結することも夢物語ではないという。
「現在も処方箋を写真で撮影し、配送してもらうサービスはあります。ただし処方箋がデジタルになれば、オンライン診療を受けて電子処方箋をもらい、オンラインで調剤を受けて配送をしてもらう流れが非常にスムーズになるでしょう」
デジタル処方箋&処方薬
2023年1月運用スタート
2023年1月から厚生労働省がスタート予定としている「電子処方箋」。紙が主流だった処方箋のやりとりがWeb上でも可能となる。それに伴ってAmazonが日本での処方薬ネット販売サービスへの参入を検討しているとの情報も。医療機関へのアクセスのハードルが下がりそうだ。
患者だけでなく医療機関にとってのメリットも多い!
「電子処方箋管理サービス」に医師や薬剤師がアクセスし、必要に応じて情報の閲覧や登録を行なう。患者はマイナンバーカードや健康保険証を利用することで、電子処方箋を発行できる仕組み。セキュリティーは保健医療福祉分野の公開鍵基盤「HPKI」で確保される。
Amazonのサイト上で薬局に申し込むと、薬剤師が薬を調剤する。その後、オンライン上で薬の副作用などについての服薬指導を実施。薬はAmazonの配送網を使って薬局から集荷され、患者のもとに届く……といった想定だ。楽天やYahoo!が追随する可能性も。