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「ほぼ毎日飲酒する人はすでに依存の回路が脳にできている」専門医に聞くアルコール依存症の真実

2022.12.21

働き盛りの世代が知っておくべき健康寿命を延ばす術を紹介する「忍び寄る身近な病たち」シリーズ。今回は多くのビジネスパーソンに忍び寄っているアルコール依存症、いわゆるアル中の解説である。

コロナ禍で“仕事帰りのちょっと一杯”は自粛されたとはいえ、飲酒量が減ったとは聞こえてこない。かくいう私も毎晩、晩酌を欠かせないのである。だからこそ、アルコール依存症は他人ごとと思えない、身につまされる病なのだ。

アルコール依存症とはいったいどんな病気なのか。社会生活にどのような弊害をもたらすのか。60年ほど前からアルコール専門病棟を設置し、アルコール依存症の治療に取り組んでいる独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの副院長、木村充先生にレクチャーをお願いした。

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 副院長 木村 充さん

「依存症の回路が脳に出来ています」

まず、アルコール依存症とはどう診断されるのか。

「よく使われるのが、WHOの疾病分類、“ICD-10”という診断で、次の6項目のうち3項目があてはまれば、依存症と診断を下すわけです。

1飲みたい強い欲求がわきおこる。2飲酒の開始や終了、また飲酒量について、自分の行動をコントロールするのが難しい。3飲酒を中止したり減量したとき、手のふるえ等、離脱症状が出る。4耐性ができる、かつてと同じ量では酔わなくなり、酔うためにより多く飲む。5飲んでいる時間や酔いをさます時間が増え、それ以外の楽しみや興味を無視するようになる。6肝機能障害、抑うつ気分、認知機能障害等、有害な結果が身体に表れているのに、飲酒を続ける。

でも、お酒を飲む人で3つを満たす人は多い。ほぼ毎日、飲酒をする人は多かれ少なかれ、アルコールが癖になっていて、依存の回路が脳に出来ています」

――では、私もすでにアルコール依存症にかかっているということですか……

開口一番、ショッキングな言葉に思わず身を乗り出すと、木村先生は軽くうなずき言葉を続ける。

「問題になるアルコール依存症は、アルコールをコントロールして飲む能力をなくしてしまった人たちです。アルコールが切れると、お酒が飲みたいという強い欲求が起こり、自分では制御できない。依存症の患者さんは酒を飲むことを最優先します。朝から飲む、仕事をしながらも酒を飲む、一日中飲んでいる。職場では“いつも酒臭い”と評判が立つ、仕事もミスが目立つ。仕事を辞めざるを得ない事態につながる」

人には3つのタイプがある

そうなると家庭も悲惨だ。“もう飲まないで!”と止める妻に暴言を吐いて、夫婦喧嘩が絶えない。酒代のためにお金を使い込む。“知り合いに借金を返すから”とか、ウソをついて酒代を作ったり。子供は家に遊びに来た友だちに、酒に酔っ払った父親を見られて恥ずかしい思いをして、みんなから遠ざかっていく。“あの人さえいなければ私たちは幸せに暮らせるのに”次第に妻はそんな思いを募らせる。

止めどもない飲酒と暴言、ときに暴力を振るい、友人も距離を置く。本人は孤立感を深める。病気の進行は、本人はもちろん、家族や周りの人を不幸のドツボに落とし込んでいく。アルコール依存症とはそういう病気である。

「女性は身体のサイズが男性より小さく、肝臓が小さい分、アルコールのダメージが大きい。キッチンドランカーいう言葉もありますが、女性がアルコール依存症になると、家事がきちんとできなくなったり、家庭が成り立たなくなっていきます」

――しかし、アルコールに関しては人それぞれで、酒が飲めない人もいます。

「体内に入ったアルコールは、肝臓に送られアセトアルデヒトという物質に変化し、さらにアルデヒト脱水素酵素の働きより、酢酸へと分解され体外に排出されます。日本人のおよそ8%はアルコールを分解する酵素が弱い。そういう人はお酒が苦手で飲めません。

残りのおよそ90%の人は二つのタイプに分かれます。両親ともにお酒に強いタイプがおよそ50%。この人たちは飲んでもあまり赤くならない。お酒に強くてたくさん飲める。残りの40%ぐらいは飲むと赤くなりますが、鍛えれば飲めるようになる。このタイプは両親の片方が飲めるという人に多いですね。

依存症の患者さん100人のうち、80%以上はもともとアルコールに強くて、たくさん飲む人ですが、鍛えて強くなった中にもアルコール依存症に陥る人は少なくない」

“とりあえず飲もうか”はダメ!

酒飲みの多くは、“酒は百薬の長”“身体にいい面もある”という言葉を信じているものだ。例えば寝酒。熟睡を得るため就寝前に一杯の習慣がある人は私を含め多いに違いない。

「お酒を飲めば、最初のうちはリラックスしてよく眠れるかもしれませんが、それが習慣化すると、お酒を飲まないと眠れなくなります。そうなると気分の安定は得られず眠りが浅くなる。眠れないからお酒の量も増えていく。寝酒の習慣は日常生活に悪影響を与えることにつながっていきます」

確かに寝酒が常態化し飲み過ぎたときなど、熟睡が得られず翌朝、気分が落ち込む。酒飲みなら思い当たるに経験だ。

「お酒と鬱は大いに関係があります。深酒をして、しらふになると気分が落ち込むので、とりあえずお酒を飲んで忘れようと。酔っぱらっているときは抑制のタガが外れ、口数が多くなり楽しくなるのですが、飲酒で気が晴れることはなく、しらふになれば再び憂鬱な気分に襲われる。それから逃れるためにとりあえず飲もうかと。その繰り返しで酒量は増える。自分ではアルコールがコントロールできず依存症に陥っていく。自覚がないまま進行していくのが、この病気の怖さです」

“あなたはもう死に至るかもしれない”

――ちなみに私の1日の酒量は、ホッピーが4杯にウイスキーの水割りがダブルで2杯。

「ホッピー4杯というと、エタノール(お酒に含まれるアルコールのこと)約120g、水割りダブルで20gだから2杯で40g、1日におよそ160gのエタノールを摂取していることになる。かなり多いですね。厚労省が明記している1日の適量は、エタノール20gですからウイスキーの水割りをダブルで1杯。多量飲酒を続けていると、身体に問題が生じやすくなりますよ」

身体に生じる問題として、酒が切れるときの手のふるえ、発汗、不眠、不安、焦燥感、吐き気等を先生は上げる。多量飲酒が続くと特にダメージを受けるのは肝臓だ。

「肝臓の異常を示す数値が上がるのは、肝臓が壊れている証拠です。肝障害の末期の肝硬変に陥ると、もはや壊れる肝細胞がなくなり、逆に肝臓の異常を表す数値が上がりません。そうなると黄疸、嘔吐、全身の倦怠感、肝性昏睡などの症状がみられ、死に至ることもあります」

多量飲酒に対する木村先生の忠告に、いささか青ざめた。アルコールで死なないために私はいったい何をすべきなのか。

後編ではサイレントで忍び寄る、アルコール依存症に陥らないために、しなければならないことを詳しく解説する。

取材・文/根岸康雄

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