裁判での判決は?
近侍、「持ち帰り残業も労働時間とすべきだ」と認定した裁判例があります
(アルゴグラフィックス事件:東京地裁 R2.3.25)
・くも膜下出血を発症して死亡
・発症前2か月間で1か月あたり約100時間の長時間労働
という事件です。
この事件では「自宅で残業せざるを得なかった」と認定されています。
↓ 判決を抜粋(呼び名など一部修正)
Xさんは、会社から貸与され、業務用に使用していたパソコンを自宅に持ち帰り、夜間、深夜及び早朝の時間帯に、見積書や提案書等の作成やメールの送信等の作業を頻繁に行っていたものであり、発症前6か月の期間においては、会社を午後8時頃に退社する日もあった ものの、午後9時以降に退社することが常態化しており、午後11時前後に退社することも多かったかったというのであるから,会社内での作業が終わらな いため、自宅で業務を行わざるを得なかった。そうすると、Xさんが会社外及び所定労働時間外に行ったいわゆる持帰り仕事についても、労働時間として算定すべき
▼・・・労働時間と認められなかった例
反対に、持ち帰り仕事が労働時間と認められなかった事例もあります。
病院の学術発表会の準備を自宅でした時間について、
労働時間ではないと判断されてしまいました。
(医療法人社団明芳会事件:東京地裁 H26.3.26)
裁判所はザックリ、
・学術大会の準備ための資料作成が、作業量からして、自宅に持ち帰らなければ処理できないものとは認められない
・会社の黙示の業務命令があったとはいえない
と判断しました。
結果、自宅での作業時間は労働時間ではないと判断されました。
自宅で業務を行わざるを得なかったとはいえない、
と判断されたといえます。
★ 工夫
いま持ち帰り残業している方は、
報告メールを送るなどして、証拠を残しておきましょう。
自宅で業務を行わざるを得なかったとの立証に使える可能性が高いので。
「長時間労働を上司が容認してた・黙認してた」と認定してくれることもあります。
証拠は合わせで強くなります。
いろいろな証拠を残しておくことをオススメします。
どれだけの労働時間で労災が下りるのか
精神障害の労災認定(厚生労働省)では以下のとおり示されています。
以下に該当すれば、精神的負荷が【強】と認定されます。
発病直前の1ヶ月におおむね160時間以上の残業をした場合
発病直前の3週間におおむね120時間以上の残業をした場合
→「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」に該当
発病直前の2ヶ月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の残業をした場合
発病直前の3ヶ月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の残業をした場合
→「出来事」としての長時間労働に該当
転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の残業をした場合
→他の出来事と関連し、恒常的長時間労働と認められる
精神的負荷が【強】と認定されれば、労災が下りる可能性が高まります。
まとめ
今回は、持ち帰り残業が労働時間になるケースについて解説しました。
自宅で業務を行わざるを得なかったと認定されれば、労働時間になります。
(= 労働時間いかんで労災認定の可能性が高まる)
(= 残業代を請求できる)
証拠が大事です。
・業務内容をこまめにメールで報告する
・上司の指示を仰ぎ返信メールを保存しておくなど、
証拠を残しておきましょう。
今回は以上です。
では、また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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