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地方転勤を断ったら解雇…会社を訴えた社員に下された判決は?

2022.12.06

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

今回はニュースのザックリ解説です。

「東北へ転勤してね」

と転勤命令を出された女性社員が断ったところ・・・解雇された事件です。

先日、東京地裁は「転勤命令は嫌がらせでしょ」「解雇は無効だ」と判断しました。

以下、ニュースの内容と転勤命令が無効になるケースについて解説します。

ニュースの内容

転勤を断った40代の女性が解雇されました(以下「Aさん」)。

東京地裁は11月22日、「解雇は無効」と判断しました。

理由は「解雇の権利を濫用した!」というもの。

会社は「あんしん財団」(東京都新宿区)。

中小企業向けの特定保険業等をおこなう一般財団法人です。

財団がAさんを解雇するに至った経緯は以下のとおり。

財団は2000年ごろ、当時の理事長の汚職事件で経営が悪化。

2013年から経営改革の一環として、事務職を営業職に転換する策を講じました。

そこで、あんしん財団は、事務職だったAさんを営業職に転換させました。

その後、営業職に転換させたAさんを能力不足だと評価し、転居が必要な東北や九州地方への転勤を命じました(嫌がらせ目的と認定されたようです)。

しかし、Aさんはこの転勤命令を拒否。

すると会社から解雇された、という流れです。

そして、東京地裁は11月22日、「解雇は無効」と判断しました。

嫌がらせ目的で転勤を命じると無効です。。

この東京地裁判決は、過去に最高裁が出した基準に則って判決を出したと考えられます。

以下、「どんな転勤命令が無効になるか」を解説します。

最高裁の判決

過去に最高裁は、以下のとおり述べました

(東亜ペイント事件:最高裁 S61.7.14)

転勤させる必要性があったとしても、以下の3つの場合は無効。

× 不当な動機・目的で転勤命令が発令されたとき
× 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
× 上記2つに匹敵するくらいやりすぎケース

今でもこの基準に則って転勤命令が無効かどうかが判断されています。

昭和61年当時

この最高裁判決では、転勤は有効と認められちゃいました…。

どんな事実関係だったかというと、神戸から名古屋への転勤を命じられた社員さんの話です。この社員さんは「転勤したら母親(71歳)、妻(28歳、保母さん)、長女(2歳)と別居になっちゃいます!」と主張しました。

しかし、昭和61年当時の最高裁は「仕方ないじゃん(転居に伴い通常甘受すべき程度)の不利益)」と判断してます。昭和時代は、夫婦別居・家族別居となる転勤が普通で、多くの裁判例も転勤を有効とするケースが多くありました。

現代なら

しかし、2022年現在なら、家庭状況や祖父母などの扶養状況によっては判断が変わるかもしれません。テクノロジーが発達してリモートワークが可能になってますから。

あと、その後に制定された労働契約法も「ワークライフバランス大事にしてよ!」って言ってますから ↓

労契法3条3項
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする

実は、

上記の最高裁の事件も、地裁・高裁の裁判官は、社員さんを勝たせているんです。

「転勤命令は無効だ!」と。

働き方についての裁判官の価値判断1つで変わるので、けっこう出たとこ勝負な感はあります(地裁・高裁の裁判官はカナリ家族愛を大切にする方だったんでしょうね〜)。

今回のニュースのケースでは、裁判官は「休職明けで関東地方の病院に通っていたAさんにあえて転居を伴う東北や九州への転勤を命ずることは合理性に疑問がある」と認定したようなので、過去に最高裁が示した【不当な動機・目的】が認定されたと推測できます。

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