クラウドファンディングが成功のスタート
いわゆるアイドルオタクから自分でアイドルグループをプロデュースし、低迷の続くCD業界で驚きの枚数を売り上げる木本憲志さん(35歳)。オタク界の頂点に立つ人物とも呼ばれています。今、彼は日本を超えてアジアのマーケットに挑んでいます。
木本さんは岡山県出身。中学の頃からアイドルにハマり、応援活動をしていました。大学時代にはオタク代表としてテレビに出演したり、アイドルイベントを手がけたりしていました。
2015年にアイドル事務所を作り、自身のプロデュースによる『煌めき☆アンフォレント』というアイドルグループを誕生させます。しかし、当然、資金もおぼつきません。そこで、クラウドファンディングを利用してみると……。
「ファースト・シングルを制作する費用を募った所、319万円が集まりました。セカンド・シングルの時は511万円、これが地下系アイドルのCD の平均的売上枚数が500~1,000という中で1万5,000枚というヒットを飛ばしました。ニュースでも取り上げられるなどして一気にグループの人気が上がっていきました」
その後もヒットを連発、ついには日本コロムビアと契約しメジャーデビューします。波に乗る木本さんは姉妹グループの「綺星★フィオレナード」も誕生させます。
何が成功の鍵だったのか?その理由の一つが“損して元を取る”という積極的投資でした。
「クラウドファンディングで得た資金を楽曲につぎ込みました。作詞作曲者、アレンジャー、ミュージシャンすべて自分の納得のできる人たちに頼み、レコーディングも繰り返し、こだわり抜いた物を作ったんです。そして、CD販売などで得た資金を、また次の楽曲制作に使いました。普通の地下系アイドルの楽曲制作費の3~4倍なので赤字の場合が多いです(笑)」
野村、オシムに学ぶマネージメント術
成功の別な理由は野村克也さんやイビチャ・オシムさんに学んだマネージメント術でした。
「もともと大学で精神分析学を専攻していたこともあり、人を把握したり掌握する術に興味を持っていました。アイドルと共に野球やサッカーも大好きで、お二人からは強く影響を受けました」
野村さんからは“再生工場”と呼ばれた「人の優れた部分を見出し、それを伸ばしていく」術を、そして、オシムさんからは「チームのバランスを取るための術」を学んだそうです。
その結果として、木本さんの手がけるグループのCD売り上げ総数は13万枚、また『煌めき☆アンフォレント』は地下アイドルとしては稀な渋谷公会堂でワンマンコンサートが実現しました。
日本を超えて、海外へ進出!
木本さんは日本での成功の後、新たな戦場とし海外を選びます。その第一歩目は台湾でした。
「もともとウチのグループのファンが台湾で多く、何度もライブを行なっていたんです。自分たちの作った楽曲で、異国の地のファンが最高に盛り上がっているのを見て震えました」
同時に、先述のようなこだわり抜いた楽曲が海外でも通用することを実感。また現地のアイドルグループが木本さんのグループの楽曲をカバーしていたりもしました。
勝機あり!と考えた木本さんは2019年春、台湾に会社を設立します。
「最初はスタッフ集めからです。幸いにも日本語が堪能で芸能事情にも詳しい人をマネージャーとして雇うことが出来たり、その点では恵まれていました」
良い人材にはしっかりとした見合った報酬を渡さなければらない、と木本さんは信じていて、台湾のスタッフたちにも現地の一般企業より高めのサラリーを出しています。
そして、オーディションを開始。すでに台湾で木本さんのグループの知名度が上がっていることから、所属グループを抜けて応募してきた子たちもいたといいいます。