Pixel 7 Proは望遠カメラが優秀、Tensor G2の処理能力は?
Pixel 7 Proは、カメラ機能にも注目したい。特筆なのが、光学30倍ズームを実現した望遠カメラだ。レンズだけで標準カメラから5倍拡大できるほか、センサーも4800万画素と高画素なため、2倍程度まで切り出しをしてもある程度被写体のディテールを保てる。10倍ズームまでは、画質の劣化が非常に少ない。スマホのカメラとして、このクオリティはトップクラスだ。Pixel 7 Proは、ここに、AIを掛け合わせることで、30倍ズームを実現している。
Pixel 7 Proはトリプルカメラに対応。右のペリスコープ型カメラが、5倍望遠だ
実際に同モデルで撮った写真は以下の通り。デジタル処理でズームをしていない5倍の写真は、解像感も高く、クッキリと仕上がっている。望遠カメラはF値3.5と暗めだが、明るさが十分ある風景の写真を撮る場合に不足は感じない。そして、10倍まで拡大しても、劣化がほとんどないことがわかる。さすがに30倍まで拡大すると、ディテールが甘くなってくるが、手持ちでここまで撮れるのは驚きだ。
上の画像からそれぞれ0.5倍、1倍、2倍、5倍、10倍、30倍。10倍までは、劣化が非常に少ないのがわかる。30倍はさすがに補正が強くかかっているものの、デジタルズームとは思えないキレイさだ
メインカメラはホワイトバランスの調整がうまく、シャッターボタンをタップするだけでキレイな写真が撮れる。特に人肌や料理の色味などの表現がうまい。暗所に強い特徴も健在だ。まるで“暗視カメラ”のように、光がほとんどない場所で被写体を浮かび上がらせるナイトモードには引き続き対応しており、撮影するシーンを選ばないカメラと言える。デジカメに比べ、小型のセンサーしか搭載できないスマホの弱点をAIで見事に補っているといえるだろう。
ホワイトバランスの調整が自然で、料理もおいそうに撮れる。光の少ない店舗内でも、ノイズは少ない
こうした機能を実現するためのベースになっているTensor G2だが、処理能力は21年に発売されたハイエンドモデルに近い。最新のハイエンドモデルに搭載される「Snapdragon 8 Gen 1」などと比べると、ベンチマークアプリでの総合的な得点はやや低めに出る傾向がある。とは言え、こうした処理能力はあくまでスマホの性能のいち側面を表しているだけにすぎない。AIの処理に特化し、顔認証やボケ補正、超解像ズームといったわかりやすい価値を生み出していることこそが重要だ。
ベンチマークアプリのスコアは、他のハイエンドモデルよりやや劣る
その意味で、Pixel 7 Proは見せ方がうまい。ユーザーに対して提供する価値をしっかり提示できているスマホと換言することもできる。スマホが横並びになる中、ハードウエアだけでなく、ソフトウエアやAIまで含めてトータルで差別化を図っているというわけだ。実用面では、おサイフケータイやeSIMにも対応しており、普段使いにも困ることは少ない。唯一残念なのは、5Gがドコモのn79に対応していないところ。KDDIやソフトバンクで使うぶんには問題ないが、ドコモやドコモ回線を使うMVNOのSIMカードを挿していると、5Gのアイコンを見る機会は少なくなる。
これだけの機能を搭載しながら、Pixel 7 Proは12万4300円からとリーズナブルだ。もちろん、これはハイエンドモデルの中での相対的な話だが、円安ドル高が進み、20万円に迫る端末が増える状況を踏まえると、かなり手に取りやすい。ディスプレイや望遠カメラを妥協できるなら、Pixel 7を選ぶ手もある。こちらは、8万2500円とさらにリーズナブル。両モデルとも、コストパフォーマンスは非常に高い。ミドルレンジモデルには満足できないユーザーや、グーグルの先進的な技術を体験してみたいユーザーには、強くお勧めできる1台と言えそうだ。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★★
持ちやすさ ★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★
UI ★★★★★
撮影性能 ★★★★★
音楽性能 ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★
生体認証 ★★★★★
決済機能 ★★★★★
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。