30代を中心に、20〜50代の女性から人気を集める「3COINS(スリーコインズ)」。記者もファンの一人だ。大袈裟ではなく、最寄りの店舗に週1〜2回は行き、出先で遭遇したら必ず入る。なぜ、こうもリピートしてしまうのだろう。
他にはない商品や体験も用意し、3COINSの世界観を伝える「原宿本店」。
「原宿本店」では、和菓子(2022年10月、取材時)も並ぶ。
3COINSは、新型コロナウイルスの流行を受けてなお、全国各地に続々と出店。2021年11月には原宿へ、売り場面積およそ415平方メートルのフラッグシップショップもオープンした。
また、2022年10月には鳥取県に初出店し、2022年11月8日現在、総店舗数は265と、47都道府県をほぼ網羅(残すところは新潟県のみ!)。そしてInstagramのフォロワーはおよそ158.5万人と、着実にファンを増やしている。
これは・・・単なる○○円均一じゃない・・・そう感じた記者は、商品作りの要であるバイヤー・升川 拓さんと、広報・小林まりあさんを突撃した。
ヒットする商品作りの出発点は“生活者目線”にアリ
――3COINSは、いつ、どのように始まったのですか?
小林 「“あなたのちょっと幸せをお手伝いする雑貨店”をコンセプトに、1994年に大阪の梅田・茶屋町で、店舗面積33平方メートルほどの路面店のから始まりました。当初から300円を中心に、手に取りやすい価格で、価格以上の驚きを意識した商品作りをしています」
――価格以上の驚きでいえば、一つにデザイン性の高さ。シンプルで、暮らしにすっとなじんでくれます。当初から、今のような雰囲気なのですか?
小林 「最初は20〜30代の女性がメインターゲットだったので、北欧やお花、動物などをモチーフにした明るめのデザインが多かったですね。時代と共に、今のような落ち着いたデザインになりました。
きっかけの一つが、新型コロナウイルスの流行です。コロナ禍の2020年9月にアプリとECストアを立ち上げたのですが、会員登録データを見ると、想定していたターゲットよりも大人の方々が多い。ちょうどブランドのバージョンアップも掲げていた時期だったので、現在の方向に舵を切りました」
お菓子やレトルトなどの、プライベートブランドの食品シリーズもある。
――女性がメインターゲットとのことですが、男性も手に取りやすいものも多いような。それに、幅広いジャンルで実用性の高いものがそろいますよね。家事の時短グッズや便利アイテム、デスクワークをサポートしてくれるガジェット、カー用品、アウトドアグッズ、それに食品まで。
升川 「そうですね。とくに最近では、性別を問わず使っていただけるようなものも随分増えました。
商品開発でも、僕は男性だけれど女性目線になるというより、まずは自分が欲しいと思う“生活者目線”を大切にしています。これは、3COINSが始まった当初から、バイヤーたちが意識していること。だから、ちょっと他にはない物作りができるのだと思います」
お風呂などの壁に貼り付けて使用できる「防滴スマホケース」550円(税込)
升川 「ジャンルごとに担当バイヤーがいるのですが、僕はガジェット担当。この防滴スマホケースも、僕の『欲しい』から始まりました。
お風呂にスマホを持ち込んで長湯をするのが好きで、このケースを開発するまでは、ジッパー付きのビニール袋に入れたりサランラップを巻いたりして使っていたんです。でも、それだと腕がだるくなるし、カサカサ音がするんですよね。防滴ケース自体はすでにあったけれど、手持ちするしかない。『壁につけられたらいいのに』という思いを形にしました」
――欲しい物が思い浮かんでから発売されるまで、どのくらい時間を要するんですか?
升川 「この防滴スマホケースは半年くらいですね。2021年4〜5月に開発を始めて、12月に発売しました。
お店の特性上、毎週、各ジャンルから新商品がたくさん発売されます。僕らバイヤーも、自分が作ったものを覚えていないくらい(笑)。でも、お客さまの“今の気分”やトレンドも考えると、スピード感も大事。どれも半年から1年くらいで開発します」
升川 「あとは、売れるものは改良して、より魅力的な商品に育てていきます。このケースも2022年8月に改良して、今は2代目です。もとは横にしか置けなかったのを縦にも置けるようにしたのと、平面だけじゃなく斜めでも置けるようにしました。
縦でも使えるようにしたのは、スマホで漫画を読んだりSNSを楽しんだりするトレンドを受けて。斜めに置けるようにしたのは、実際に使った僕が『なんか見づらいなあ』と感じたことがきっかけです。
改良は、時流やお客様の声も大きいですが、僕らバイヤーが使うことも大事。生活者の一人として商品と向き合っています」