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サウナの次はコレ?滝行にハマる「滝女子」が急増している理由

2022.10.26

現役医師が体験!「マインドフルネス」としての滝行効果

滝行の「修業」「禊」の意味での効果は前述したが、今、ビジネスマンの研修などにも用いられている「マインドフルネス」の観点でも滝行を検証したのが、腎臓内科専門医で、医学博士でもある石川英昭氏だ。

石川英昭(いしかわ・ひであき)
医学博士。医療法人偕行会 偕行会城西病院 内科部長。子育て×健康長寿コーチ×電子書籍作家。また患者向けVRゲームを開発しており、スポンサー募集中。オウンド・メディア「現役医師の40歳から始める「健康寿命」増進生活!

自身の経験を医学的な立場から検証した著書『マインドフルネス、としての滝行体験』(石川英昭著/電子書籍出版代行サービス)

石川氏によるとマインドフルネスとは、「目の前のことを評価しようとせず、集中してただ見つめている」心の状態を意識的に作り出すことを目的としているもの。多くの研究結果から、マインドフルネスによって得られる精神的な安定が集中力や生産性の向上、ストレスの軽減、人間関係の円滑化などをもたらすとして、企業も注目し研修などに用いている。

石川氏は忙しい勤務医生活に疲弊し、大病を経験したこともあって「このままではいけない、なにかを変えなくては」という漠然とした焦りを抱いていた時に、自己啓発のコーチングを受ける中で、滝行をすすめられた。「医者として、その効果を検証してみたら面白いのでは?という興味もあり、広島市西区にある『献水の滝場』で滝行に挑戦する事にしました」(石川氏)。

滝行中の石川氏。※『マインドフルネス、としての滝行体験』より転載

滝行によって、スポーツマンの「ゾーン」の状態を作り出すことができる

その時の経験は、著書『マインドフルネス、としての滝行体験』に詳しいが、石川氏は「ヨガや瞑想の達人が何年かの修練の後に到達している意識状態に近い物を、素人も比較的容易に手に入れられる可能性があると感じた」と語っている。これは医学的にはどのような状態なのだろうか。

石川氏は「滝行による心身への影響については医学としてはっきりした正確なエビデンスはまだ存在しないので、あくまでも私の経験と先行研究をベースとした考察ですが」と前置きをしたうえで、以下のように語った。

「瞑想における精神状態については、脳波の研究に関する論文報告が散見されます。瞑想中には、リラックスや、集中している時に発せられるα波が観測され、それは落ち着いた呼吸パターンで誘発されるとの事です。つまり、呼吸こそが始まりなのです。

リラックスしていながら、非常に高い集中力を発揮できる、いわゆるスポーツマンが『ゾーン』に入るような精神状態を得る鍵、ヒントがどうやら一定のリズムで深く呼吸を続ける行為にあるようです。暇さえあればすぐにスマホを手にしてしまう我々には困難ですが、もし溺れるような事態になれば、深い呼吸に全神経を集中せざるを得ず、いやでも脳波も整うという事になります。陸上で(命の危険なく)呼吸のみを意識する環境を、どうやれば強制的に準備できるのか?という命題に行き着くのです。その答えのひとつが、まさに滝行なのです」(石川氏)。

石川氏が滝行体験時にサーモグラフィで計測した、滝行する前の人(左)と滝行直後の人(右)の体表面の温度の比較 ※『マインドフルネス、としての滝行体験』より転載

上のサーモグラフィは石川氏が滝行を経験した日の記録だが、この日は7月で、気温29.3度。それでもこれだけ体温が下がる。この冷感刺激も、呼吸法とともに大きな影響を与えているのではと石川氏は見ている。冷たい水にさらされることで交感神経の働きが高まり、身体的に緊張した状態になるが、滝行の場合は顔面に打ち付ける冷たい水が迷走神経を刺激し、リラックス状態を作る。これに呼吸法が加わり、マインドフルネスな状態をつくるのだという。

つまり、こういうことだ。

1.滝行では、全身に大量の冷水を浴びると同時に、水圧で呼吸困難になる
2.滝行を続けるには、その環境でなるべく早急に呼吸を整える必要に迫られる
3.冷水に対する迷走神経反射でリラックスが得られ、深呼吸に集中する事で、脳波に変化が現れる
4.滝の中で、ゆっくりした呼吸を続ける事で、いわゆるゾーン、変性意識状態が得られる

滝行をすすめたいのはこんな人

石川氏は自身の経験から、「新しい事に挑戦したい人」「常にイライラしている人」「精神的に落ち込んでいる人」「座禅や瞑想などに興味がある人」そして「滝行仲間が欲しい人」などに滝行をすすめたいとのこと。それは石川氏自身が、滝行の後の雑念がとりはらわれた状態で滝行仲間と会話をすることにより、心理療法でも自己肯定感を高めるのに非常に重要とされている『傾聴(けいちょう)』)を実現できたからだ。

「皆で緊張しながら滝行を体験した後、リラックスした状態で、お互いに気づきについて対話する、この緊張と弛緩から生み出される独特の雰囲気が、傾聴しやすい環境を醸成するわけです。心理学用語のラポール(心が通い合った)の状態ですね。そして、ここでも呼吸が重要な役割を果たします。そこにいる皆が、滝行を思い浮かべながら、深呼吸を繰り返し、話始めるというスタイルも、このラポール形成に一役買っていると考えられます。集団滝行は、傾聴力を高めるための訓練としてとても有意義だったと実感しています」(石川氏)。

石川氏は滝行経験後、相手の話を聞く時に、滝行での体感の追体験を心がけることで「傾聴」しやすくなったという。

医学的に、滝行を避けたほうがいい人は

最後に、主に医学的な観点から滝行を避けたほうがいい人をあげてもらった。

#高血圧の持病があり、薬で治療中の方
#不整脈の持病、治療中、ペースメーカー、埋め込み式除細動器が留置されている方
#妊娠中の方
#膝や足腰に問題がある方、杖歩行の方(滝に行くまでの水路で、滑る危険性が高いです)
#呼吸器系の持病(慢性呼吸不全、喘息など)がある方、在宅酸素治療を受けている方

これに加え、健康に問題がない人でも一般的には「低体温症」リスクが高い冬は避けた方がよいそうだ。もし寒い季節に滝行を行なう場合は、滝行後すぐに保温できる環境は整っているか(暖房器具や暖かい飲み物の提供はあるか)などは、事前によく確認したほうがいい。医師の立場からは、ブームになって滝行がレジャーのようになり、注意喚起がおろそかになることを危惧しているとのこと。

ちなみに前述の「足柄修験の会」では、以下のような注意喚起をしている。
①前日からよく寝て、疲労をとっておき、体調がすぐれないときは入らないこと
②滝に入る直前までベンチコートなどで体を温めておくこと
③滝から出たらすぐに体を温めること
④冷水や滝の衝撃により、呼吸が浅くなったり、体が硬直するような感覚になり、一時的に頭痛や吐き気、低体温の症状が出たりする場合があるが、そのような場合は、速やかに滝から出て着替え、暖かくして安静に休む

取材・文/桑原恵美子

編集/inox.

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