貧しき昭和の泣けるヒモ
『お笑いの日』の放送から、というかオレがこの王子の『H』に行ってから、今この原稿を書いている今日まで、すでに1週間経つのに、いまだに♪ゴイゴイ~ ス~スス~♪っていうフレーズが頭から離れないもん。
呑みながら笑った笑った!呑んでたホッピー噴き出したもん。呑み屋のテレビで、あんなに声出して笑ったの、オレ初めてだなァ~。おかげで、その後の他の芸人のネタ、なんも覚えてない!
でさ、♪ゴイゴイ~ ス~スス~♪の元唄の『ヒットパレード』って番組あったじゃない。バブルの頃の『ヒッパレ』じゃなくて、1960年代後半にやってた『ヒットパレード』ね。ザ・ピーナッツとか出てた、あの番組のこととか思い出しちゃってさ。
まず間違いなく当時の子供は『ヒッパレ~』って歌詞を『引っ張れ~』だと思い込んでいてね。あの唄がテレビから流れると、オレは必ず電灯のスイッチのヒモ(子供の背丈でも引っ張れるように、腰ヒモみたいなものが結んであった)を持って、電灯の回りをグルグル回ったもんだったなァ~、と。
それが週に一度の楽しみ!って、まだまだ日本も貧しかったんだなァ……。
で、二つの上の姉もヒモ持ってグルグル回りたいワケよ。で、毎週番組がはじまると姉と弟で電灯のヒモの奪い合い!!嗚呼、思い返せば思い返すほど、ますます貧しい!
それで、親がケンカにならないようにって、ヒモを2本付けてくれたんですよね。
で、それからは毎週、オレと姉で二人してヒモ持って電灯の下をグルグル回ってました。それが本当に楽しい遊びだったんだよァ……。ここまでくると心底貧しいッ!!
そんなこと思い出してたら、もううれしくなっちゃってね。本当に一杯呑むつもりが、ホッピーは4杯呑んでから、冷酒の小ボトルも呑んでしまった。
いい呑み屋の一番わかりやすい基準って、『軽く呑むつもりが、楽しくってついつい深呑みしちまいました』だからね。
そういう意味でこの王子の『H』、ゴイゴイスーでした。
文・イラスト/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。