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念願叶ってレッド・ツェッペリン「聖なる館」UKマト1を手に入れ話

2022.09.24

 一番音がいいとされるアナログレコード、マトリクス1(通称マト1、詳しくはこちらを)にはまってそろそろ10年、およそ欲しいレコードは手に入れた。特に一番好きなロック・バンド、レッド・ツェッペリンは全アルバムをマト1で所有、しかも単なるマト1ではなく、マト1中のマト1が多い。

『Ⅰ』のUK盤。ロゴの色から通称ターコイズ。UKマト1でもロゴがオレンジの盤の方が圧倒的に多く、ターコイズは希少。今買うと、30万円は下らないはずだ。

『Ⅰ』のUS盤。USにはターコイズはない。

 『Ⅱ』のUK盤。

『Ⅱ』のB面レーベル。2曲目が「LIVIN’ LOVIN’ WRECK」表記はマト1でも希少。

 『Ⅱ』のUS盤RLカット。レーベル左のRLという刻印がその証。

『Ⅰ』のUK盤はターコイズの無修正A1B1、US盤はアトランティックのメイン工場=PR工場製のA/AとC/C(音は圧倒的にC/Cが上だが、A面は左右が逆)。『Ⅱ』のUKA2B2はB面2曲目のレーベル表記が「LIVIN’ LOVIN’ WRECK」(内ジャケットは「LIVIN’ LOVIN’ MAID」)、USはPR工場製の泣く子も黙る轟音RLカット(発売するや音圧が高く針飛びするとのクレームで即刻販売停止)だ。

 『Ⅳ』のUK盤。

『Ⅳ』のUK盤variant1のB面レーベル。ロバート・プラントを表す4番目のロゴの天地逆がvariant1の証。

 『フィジカル・グラフィティ』US盤プロモ。

『Ⅳ』のUKA3B3はB面レーベルの羽ロゴが天地逆のミスプリント、世界的な中古レコード売買&データベースサイト「Discogs」でvariant1とされる初盤中の初盤。『フィジカル・グラフィティ』のUSはプロモ盤で、『プレゼンス』のUKA1B1は「Nobody Fault But Mine」の終盤に針飛びが起きるとされるが飛ばない優良盤(もう1枚A1B1を所有するが、こちらは飛ぶ)だ。

 ところでツェッペリンは、マイ・フェイバライト盤を決めるのが難しい。パープルなら『マシン・ヘッド』、イエスなら『危機』、クリムゾンなら『宮殿』、ピンク・フロイドなら『狂気』等、ほとんどのバンドは僕にとっての最良はこれと断言でき、その選択は何十年経っても変わらない。しかるにツェッペリンとなると、『Ⅰ』、『Ⅱ』、『Ⅳ』、『聖なる館』、『プレゼンス』と、その時々で変遷する。この中でツェッペリンの最良盤としてあまり選ばれないのが『聖なる館』だろう。

 熱いツェッペリン・フリークならこんなことはないが、一般のロック・ファンだとツェッペリンをブルースに根ざしたハード・ロック・バンドながらアコースティック・サウンドにも秀で、その象徴が静と動が融合した「天国への階段」と定義するまでで終わってしまう人が多い。つまり『聖なる館』(『フィジカル・グラフィティ』も)でのハード・ロックでもアコースティックでもない、複雑多様な音楽性に気づいていないように思える。ツェッペリンを知らない人が『聖なる館』を聴いたなら、ツェッペリンというバンドの解釈が単にツェッペリンを知る人とは全くの別物になると思うくらい、『聖なる館』の音楽性は“元祖ハード・ロック・バンド、レッド・ツェッペリン”のイメージとは異なる。

 さらに言えば、世には名盤や名曲と称されるサウンドが多々あるが、“曲順の妙・美しさ”という“聴点”からは『聖なる館』1曲目「永遠の詩」から2曲目「レイン・ソング」への流れは秀逸だ。ツェッペリン・サウンドの静と動、そして陰と陽を、「天国への階段」とは違った形で象徴していると思う。

『聖なる館』UK盤。

『聖なる館』UK盤のA2。レーベル上の刻印A2がその証。

 前置きが長くなったがここからが今回の本題、『聖なる館』UKマト1の話に入る。『聖なる館』のマト1はA2B2だ。A1B1を制作したが、多分ジミー・ペイジがなんらかの理由で気に入らずボツとし、A2B2を初盤としたのだろう。前述のデータベース、Discogsでもマト1はA2B2とされ、もちろん僕も所有している。ところが数年前、僕をマト1の世界に招き入れてくれた後輩のK君から、実は後にA1B1がリリースされて音はA2B2よりいいと聞いて驚いた。改めてDiscogsを見ると、“再発盤”としてA1B1の存在が明記されている。

 となれば手に入れるしかないが、DiscogsにもeBayにもディスクユニオンにもとんと出てこない。K君はeBayの出品を見たことがあり、落札金額はたいしたことはなかった(2万円はしない?)記憶があるという。その時は入札しなかったK君、やはり欲しくてあれこれ探すがもはや幻。だがいろいろ調べて『聖なる館』にはA1B3とA4B1があることを知り、共にeBayで落札する。2枚合わせ技でA1B1というわけだ。金額はどちらも5000円前後と、マト1の世界では高額ではない。肝心の音は、A2B2を明らかに上回るという。

 ならば僕もその手でとeBayを見張り、まずA4B1を手に入れた。価格は4000円ほどで、音は素晴らしい。その経緯は、2019年7月に@ダイムに書いたので参照して欲しい。だがその後、もう一方のA1B3が全く出ない。そしてこの6月、K君からヤフオクにA1B1が出品されているとの連絡がくる。開始価格は1000円だ。3万円くらいまでならどんと来いと戦闘モードに入るが数日で8万円台に突入、最終的には約15万円で落札となった。真っ当な年金生活者の僕は、速やかに途中退場だ。ちなみにこの原稿執筆時の9月中旬、やはりヤフオクにA1B1が即決159800円で出品されていた。出る時には出るものだと思うが、残念ながら手が出ない。

『聖なる館』UK盤A1B3。ジャケットでも帯でも白は色焼けするので、真っ白な帯は珍しい。

帯裏のクレジット。表は同じでも裏は国ごとに違うはずだ。

 さて9月上旬、先輩思いのK君からヤフオクにA1B3が出品されたという連絡がくる。開始価格は1000円。再び戦闘モードだ。果たしていくらになるか、いやいくらまでなら出せるかだ。A1B1が15万円級なら、A1B3は半分の7万円くらい? いやそんなには行くまい。だがこのA1B3には、アルバムタイトルを印刷した帯が付いている。『聖なる館』の帯付きは希少で、A2B2でも値段は倍くらいに跳ね上がる。となれば5万円は覚悟か。幸か不幸か、実はこの時に思いもよらぬ収入(?)があることがわかった。介護保険料を国と区に二重払いしていたことが判明し、還付されるのだ。ラッキー!! とはいえ、もともと僕のお金なのだが……(蛇足ながら前期高齢者=65歳になると、介護保険料は相当高くなるので御覚悟を)。太っ腹で入札して見事落札、4万円弱なり。

レーベル右上に刻印A1。

 いよいよ試聴だ。曲は「永遠の詩」で、まずはA2から。正直、こんなにいい音だった? と思った。というのも愛機LINNのプレーヤー、LP12の回転部をアップグレード(真っ当な年金生活者のやることではないとのツッコミは覚悟)してから初めて聴くA2なので、オーディオが良くなった分、音も良くなったのだろう。A2の音質になんの不満もない。

 ところがA1を聴いてぶっ飛ぶ。音圧がまるで違う。ギターは切れ切れに煌めき、ベースは唸り、ドラムが躍動する。演奏の一体感が遥かに増しながらも、それぞれの楽器の輪郭がくっきりしている。

 ただしヴォーカルの違いがいまひとつピンと来ず、A2を再び聴く。満足していた音なのに、どうにも物足りない。ヴォーカルが演奏に埋もれている。違いはここかと、再びA1に。やはり音圧が凄い。ヴォーカルも演奏と対等だ。もはやA2には戻れない。「レイン・ソング」はイントロの左から聴こえるギターの弦鳴りに大差があり、曲前半は静かなだけにA2に感じる物足りなさは「永遠の詩」より顕著だ。

 B1とB2の聴き比べでは、5段階評価でB1が5対B2が4とした。今回も聴き比べなければなんの不満もなかったA2なのでA2を4とする。ならばA1は6だ。というわけで4万円弱、惜しいとは全く思わない。ただし真っ当を自認したい(!?)年金生活者、欲しいツェッペリンは全て手に入れたし、マト1高額投資はこれにて打ち止めを誓おう……。

PS 僕がオーディオとロックの師匠、音楽プロデューサーの岩田由記夫さんと開催しているレコードを聴くイベント「レコードの達人」で、『聖なる館』A1とA2の聴き比べを実施する。プレーヤーはLINNのハイエンド400万円級のシステム、会場は大音量で聴けるライブハウスだ。来たる10月22日土曜日13時半〜、東京・大岡山のグッドストックトーキョーにて。ご興味のある方は、ぜひご参加あれ。

文/斎藤好一(元DIME編集長)

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