スピーチでの定年退職への挨拶
定年退職者の最終出勤日が近づいてくると、社内セレモニーのような公の場や有志での送別会などの集まりで、送る側を代表してスピーチをする場面もあります。挨拶のポイントや例文を紹介します。
定年退職者への挨拶スピーチの際の注意点
定年退職者への挨拶だからと特別意識することはありません。普段人前で話すときと同様に、ゆっくりと分かりやすい言葉で伝えることを意識します。視線は定年退職者を意識しつつ、スピーチを聞いてくれている人をまんべんなく見渡すようにしましょう。
定年退職者が会社に長年勤めてきたことへ感謝の気持ちを伝えようという意識が強すぎると、聞き手が知らないような個人的なエピソードや昔の話を長々と話してしまいがちです。しかし、知らない時代の話をされても、聞き手は話に共感しにくく、最後の挨拶としてはふさわしくありません。無難なエピソードを添えて、感謝の言葉を伝える内容にしましょう。
送別会など公の場でのスピーチ
諸先輩を差し置いて誠に僭越とは存じますが、一言お祝いの言葉を申し上げます。
○○部長、38年間の長きにわたる勤務、本当にお疲れ様でございました。
○○部長には、社会人、ビジネスパーソンとしての基本から仕事の向き合い方まで懇切丁寧にご指導いただき、本当にたくさんのことを勉強させていただきました。
今思えば若気の至りの無謀なプロジェクトであっても「失敗も成長に必要だ」と背中を押していただき、挑戦の機会を与えてくださった○○部長の度量と熱意、責任感の強さに改めて尊敬の念を抱いております。
○○部長との出会いがなければ体験することができなかった貴重な経験と学びを胸に、今後も会社の発展に貢献できるよう一層精進していきたいと思います。
このたびご定年を迎えられたことは誠にめでたく慶びにたえませんが、会社でお会いできなくなることには寂しさも感じております。
上司としても人生の先輩としても、まだまだ学びたいことがたくさんあります。どうか今後とも変わらずご指導くださいますようお願い申し上げます。
最後になりましたが、○○部長の今後ますますのご健康とご活躍を祈って、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。長い間、本当にありがとうございました。
出勤最終日の朝礼などでの一言スピーチ
○○さん、このたびはご定年ならびにご勇退、誠におめでとうございます。
○○さんが長年の経験や学びによって身に付けた技術や知識を、時にやさしく時に厳しく我々に教えていただき、本当にありがとうございました。
おかげさまで、○○さんに比べればまだまだですが、我々も大きく成長できました。
■■課のメンバーを代表してお礼申し上げます。
これからも○○さんに教えていただいたことを忘れず、メンバーで力を合わせて■■課を盛り上げていきます。
退職後は趣味の××を思う存分お楽しみになると聞いています。
お体には気を付けて、第二の人生を謳歌なさってください。
これまで、長きにわたり大変お世話になりました。
ありがとうございました。
手紙で定年退職へ挨拶するケース
定年退職者との業務の引き継ぎを含め、社内外を問わず仕事の要件はメールで行うのが一般的です。普段から個人的なやり取りがない限り、定年退職への挨拶のために手紙を出す人はそう多くはないでしょう。しかし、定年退職者への挨拶に手紙を使うことは何ら問題ありません。手紙の構成と、2種類の例文を紹介します。
定年退職者への手紙の構成
定年退職への挨拶状は、封書とはがきのどちらを選んでも問題ありません。はがきであれば、縦書き・横書きのどちらでも構いませんが、封書は縦書きの便せんを使うのがマナーなので注意しましょう。
挨拶の手紙は、「前文」「主文」「末文」「後付け」の4項目で構成されます。それぞれの項目に記載する内容は以下の通りです。
- 前文:「拝啓」と時候の挨拶
- 主文:在職中に受けた恩へのお礼や感謝
- 末文:締めの挨拶と「敬具」
- 後付け:日付・自分の氏名・宛名
目上の人に送る手紙の例文
謹啓
向春の候、○○支店長がご退職される日が迫り、お礼と感謝の気持ちをお伝えしたく筆を執りました。
大学を出て右も左も分からない新入社員のころ、いつも温かな励ましの言葉をくださり、くじけそうになった気持ちを助けていただいたことは生涯忘れられません。
また、入社10年をすぎ、まだまだ若輩者ながら一人前になったと思い違いをしていた私へ厳しいご指導をいただきました。あの時の支店長のお言葉の中に含まれていた「優しさ」の意味がしっかりと理解できるようになった今、支店長のお心遣いにはただただ頭を下げるばかりです。
○○支店長のとの出会いがなければ、今の私はないといって過言ではありません。言葉が見つからないほど感謝しております。
これまで支店長から学ばせていただいことを今後は次代へと引き継げるよう精進します。大変長い間、誠にありがとうございました。
ご退職された後も、変わらずご指導、ご助言いただけましたらありがたく存じます。それでは、お体にお気をつけて、第二の人生を謳歌されますことを祈念し、お礼とさせていただきます。
謹白
令和○年○月
○○○○(氏名)
○○ 様
同僚など親しい間柄の定年退職者へ手紙の例文
拝啓 早春の候、まだ寒い日が続きますが、お元気でしょうか。
○○さんが定年を迎えご退職される日が近づくにつれ、いてもたってもいられずペンを取りました。
本来なら直接会ってあれやこれやと昔話を肴に一杯やりたいところですが、決算期が迫り日本に戻ることも難しく手紙にてご容赦ください。
○○さんとは新人のころから時に笑い、時に涙し、充実した時間を過ごさせてもらいました。お互い責任あるポジションを任せられるようになってからは頼りになる相談相手としてこれほど心強い存在は他にいませんでした。
振り返ればまさに激動の30年だったと思います。お互い思っているほど、もう若くはないので、まずはしばらくは歴戦の疲れを癒やしてゆっくりしながら、第二の人生を謳歌してください。
帰国したら必ず連絡します。仕事を離れても、引続きお付き合いいただければ幸いです。
では、最後になりますが、□□様の益々のご活躍をお祈りしております。
敬具
令和○年○月
○○○○(氏名)
□□ 様
構成/編集部