人生で大きな節目の一つとなる定年退職者には長年にわたる感謝の気持ちを込めた挨拶を送りたいものです。挨拶におけるポイントやシチュエーション別の例文と併せて、気を付けたい表現も紹介します。
目次
定年退職者に挨拶する方法は4種類
めでたく定年退職を迎える人には、これまでお世話になったお礼を込めた挨拶をしましょう。挨拶をするには対面、メール、スピーチ、手紙といった方法が考えられます。
4種類の挨拶方法(対面・メール・スピーチ・手紙)
定年退職者への挨拶の方法には、主に「対面」「メール」「スピーチ」「手紙」の4種類の方法が考えられます。挨拶する相手との関係性により4種類の方法を使い分けましょう。
急に決まった転職などによって退職する場合とは異なり、定年退職の場合は、会社を去る時期があらかじめ決まっているので、事前にしっかりと挨拶の準備ができます。挨拶するときにスムーズに進められるよう、時間に余裕をもって準備しておきましょう。
定年退職の挨拶に欠かせないポイント
定年退職への挨拶は、仕事で多くの時間を一緒に過ごした先輩への労いや感謝の言葉、この先の人生へのエールを伝える場です。挨拶する際に、必ず気を付けたいポイントを紹介します。
前向きな言葉で感謝の気持ちを伝える
「対面」「メール」「スピーチ」「手紙」のどの方法であろうと、定年退職者へ挨拶する際に何よりも欠かせないのは、労いと感謝の気持ちを伝えることです。
立場によって内容が変わるものではなく、目上の人や上司であっても、同僚や部下であっても、社外の人であっても関係なく必要です。
定年退職者は定年を迎えるまでの仕事人生には大変だった時期もあったはずです。それを乗り越えてめでたく会社を卒業し、新たな人生のスタートを切るのですから門出にふさわしいポジティブな表現をおすすめします。
簡潔にまとめた在職中のエピソードを交える
定年退職者への挨拶の際には、退職者と自分とで共通している具体的なエピソードを交えると、印象に残りやすくなります。退職者とのエピソードによって他の参加書もその場面をイメージしやすくなるので、あなたの挨拶を理解する助けにもなります。社内でのセレモニーや有志での送別会などの挨拶でも意識するとよいでしょう。
ただし、挨拶を聞く人達は、年齢や関係性もさまざまです。全員が在職中のエピソードに興味があるわけではないことへの配慮が必要です。この点も踏まえて、挨拶に入れるエピソードは、退職者の人柄が分かりやすいものを簡潔にまとめて伝えましょう。
やってはいけない定年退職者へのNG挨拶
定年退職時の挨拶は、話し手に悪気がなくても、聞き手が不快に感じる内容を話してしまう可能性があります。失敗を回避するためにも、NG挨拶についてチェックしましょう。
ネガティブな内容を伝える
仕事関係の人に向けて行う定年退職時の挨拶は、仕事の一環ともいえる責任のあるものです。したがって、普段行っているビジネストークやメールの文章と同様にビジネスマナーを守り、聞いている人・文章を読んでいる人が不快にならないように留意しましょう。
特に定年退職は、自分の意志とは関係なく年齢というルールとして職場を去ることを意味するため、定年退職者側が「本当はまだ仕事を続けたい」「思い残すことがある」「これから先のことが不安だ」という気持ちを抱いているかもしれません。
送る側はそうした定年退職者側の気持ちも推し量り、まずは長年の勤めに対する労った上で、第二の人生に対して前向きになれるようなポジティブな言葉で送り出すようにしましょう。
自分本位の内容をダラダラと伝える
定年退職者は人生においても大きな区切りとなるイベントであり、主役は定年退職者本人です。長年お世話になった人だからと個人的な思いが強くなり、ついつい思い出に残るエピソードをダラダラと話しがちです。
もちろん、熱い思いは聞いている側にも伝わりますが、あまりに自分本位な内容を長々と話されると、聞いている人は不快に感じる可能性があります。定年退職者にとっては会社人生を振り返る最後の機会になるため、送る側はあくまで脇役として徹しましょう。
メールで伝える定年退職への挨拶
社内外の両方の関係者に対して、定年退職者への挨拶をメールで伝える機会があります。社内の人へのメールと社外へのメールを分けて、挨拶メールを送るときの注意事項とメールの例文を紹介します。
社内の定年退職へ挨拶メールを送る際の注意点
社内の定年退職者へ送る挨拶メールは「最後の挨拶」の意味合いがあるので、受け手側に好印象を残せるように注意が必要です。メールの内容としては、これまでの退職者との関わりについて感謝の思いを込めましょう。
定年退職後も退職者の人生は続いていくため、先行きの不安をあおるような言葉を使うのはNGです。また、退職者が会社を去ることを喜んだり、退職者の気分を害したりするようなネガティブな内容は避けてください。
定年退職者が目上の人・上司のケースの例文
件名:
ご退職おめでとうございます
本文:
△△部 ○○部長 ご退職おめでとうございます。
○○部長には、□□年にわたりご指導いただきありがとうございました。
日々のちょっとした○○部長の言動からも学ぶことが多く、私の会社員人生にとても大きな影響をいただきました。
○○部長のご支援・ご指導のおかげで会社員としてまた社会人として成長できたといっても過言ではありません。心より感謝いたします。
最後になりましたが、○○部長の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
ありがとうございました。
定年退職者が同僚、部下のケースの例文
件名:
ご退職おめでとうございます。
本文:
△△部 ○○さん ご退職おめでとうございます。
○○さんには、□□年にわたり、たくさんのお力添をいただきありがとうございました。○○さんの人間性や仕事に対する熱意、細やかな心配りは学ばせていただくことも多く、心より尊敬しておりました。
この度、めでたくご定年を迎えられるとのことで、○○さんの存在の大きさを改めて噛み締めている次第です。可能ならずっとお力をお借りしたいとも願う気持ちがありますが、いつまでも○○さんに甘えてばかりもいられず、今は○○さんの今後の人生に感謝を込めてエールを送りたいと思います。
ご定年になったからといって、○○さんとの関係が終わるわけではございません。お時間があるときにはお気軽にご連絡いただけるととてもうれしいです。
最後になりましたが、○○さんの益々のご健勝を心よりお祈り申し上げます。
ありがとうございました。
社外の定年退職へ挨拶メールを送る際の注意点
社外の定年退職への挨拶メールには「お世話になったことへのお礼」を伝えるほかに、定年退職者が会社を去った後もしっかり会社同士の取引ができ、相互に連絡が取り合える環境を整えておく必要があります。
商習慣として、まずは定年退職者から「自分の最終出社日(退職日)」「後任者の情報」が伝えられるのが一般的です。
可能であれば定年退職者と後任者双方と顔を合わせる機会を設けてもらい、業務遂行上に必要な情報が遺漏なく引き継いでもらえるようにお願いするのもよいかもしれません。
定年退職者が社外の人のケースの例文
件名:
退職のご連絡ありがとうございました。
本文:
○○株式会社 ○○様
いつもお世話になっております。✕✕株式会社の✕✕でございます。ご多用のところご丁寧な退職のご連絡を頂戴し誠にありがとうございます。
以前より○○様が定年退職をお迎えになさるお話は伺っておりましたが、いざその日が近づいてくると寂しさがこみ上げてきます。
○○様にはいつも弊社にお気遣いくださり、多数の案件にて相当なご尽力をいただきまして、大変お世話になりました。
手前どもの力不足で、○○様にご迷惑をおかけしてしまうことも多々ありましたが、いつも温かいフォローをくださり大変助けていただきました。
最後になりますが、これからの日々がいっそう充実した毎日となりますよう、○○様のご健勝をお祈りいたします。ありがとうございました。
スピーチでの定年退職への挨拶
定年退職者の最終出勤日が近づいてくると、社内セレモニーのような公の場や有志での送別会などの集まりで、送る側を代表してスピーチをする場面もあります。挨拶のポイントや例文を紹介します。
定年退職者への挨拶スピーチの際の注意点
定年退職者への挨拶だからと特別意識することはありません。普段人前で話すときと同様に、ゆっくりと分かりやすい言葉で伝えることを意識します。視線は定年退職者を意識しつつ、スピーチを聞いてくれている人をまんべんなく見渡すようにしましょう。
定年退職者が会社に長年勤めてきたことへ感謝の気持ちを伝えようという意識が強すぎると、聞き手が知らないような個人的なエピソードや昔の話を長々と話してしまいがちです。しかし、知らない時代の話をされても、聞き手は話に共感しにくく、最後の挨拶としてはふさわしくありません。無難なエピソードを添えて、感謝の言葉を伝える内容にしましょう。
送別会など公の場でのスピーチ
諸先輩を差し置いて誠に僭越とは存じますが、一言お祝いの言葉を申し上げます。
○○部長、38年間の長きにわたる勤務、本当にお疲れ様でございました。
○○部長には、社会人、ビジネスパーソンとしての基本から仕事の向き合い方まで懇切丁寧にご指導いただき、本当にたくさんのことを勉強させていただきました。
今思えば若気の至りの無謀なプロジェクトであっても「失敗も成長に必要だ」と背中を押していただき、挑戦の機会を与えてくださった○○部長の度量と熱意、責任感の強さに改めて尊敬の念を抱いております。
○○部長との出会いがなければ体験することができなかった貴重な経験と学びを胸に、今後も会社の発展に貢献できるよう一層精進していきたいと思います。
このたびご定年を迎えられたことは誠にめでたく慶びにたえませんが、会社でお会いできなくなることには寂しさも感じております。
上司としても人生の先輩としても、まだまだ学びたいことがたくさんあります。どうか今後とも変わらずご指導くださいますようお願い申し上げます。
最後になりましたが、○○部長の今後ますますのご健康とご活躍を祈って、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。長い間、本当にありがとうございました。
出勤最終日の朝礼などでの一言スピーチ
○○さん、このたびはご定年ならびにご勇退、誠におめでとうございます。
○○さんが長年の経験や学びによって身に付けた技術や知識を、時にやさしく時に厳しく我々に教えていただき、本当にありがとうございました。
おかげさまで、○○さんに比べればまだまだですが、我々も大きく成長できました。
■■課のメンバーを代表してお礼申し上げます。
これからも○○さんに教えていただいたことを忘れず、メンバーで力を合わせて■■課を盛り上げていきます。
退職後は趣味の××を思う存分お楽しみになると聞いています。
お体には気を付けて、第二の人生を謳歌なさってください。
これまで、長きにわたり大変お世話になりました。
ありがとうございました。
手紙で定年退職へ挨拶するケース
定年退職者との業務の引き継ぎを含め、社内外を問わず仕事の要件はメールで行うのが一般的です。普段から個人的なやり取りがない限り、定年退職への挨拶のために手紙を出す人はそう多くはないでしょう。しかし、定年退職者への挨拶に手紙を使うことは何ら問題ありません。手紙の構成と、2種類の例文を紹介します。
定年退職者への手紙の構成
定年退職への挨拶状は、封書とはがきのどちらを選んでも問題ありません。はがきであれば、縦書き・横書きのどちらでも構いませんが、封書は縦書きの便せんを使うのがマナーなので注意しましょう。
挨拶の手紙は、「前文」「主文」「末文」「後付け」の4項目で構成されます。それぞれの項目に記載する内容は以下の通りです。
- 前文:「拝啓」と時候の挨拶
- 主文:在職中に受けた恩へのお礼や感謝
- 末文:締めの挨拶と「敬具」
- 後付け:日付・自分の氏名・宛名
目上の人に送る手紙の例文
謹啓
向春の候、○○支店長がご退職される日が迫り、お礼と感謝の気持ちをお伝えしたく筆を執りました。
大学を出て右も左も分からない新入社員のころ、いつも温かな励ましの言葉をくださり、くじけそうになった気持ちを助けていただいたことは生涯忘れられません。
また、入社10年をすぎ、まだまだ若輩者ながら一人前になったと思い違いをしていた私へ厳しいご指導をいただきました。あの時の支店長のお言葉の中に含まれていた「優しさ」の意味がしっかりと理解できるようになった今、支店長のお心遣いにはただただ頭を下げるばかりです。
○○支店長のとの出会いがなければ、今の私はないといって過言ではありません。言葉が見つからないほど感謝しております。
これまで支店長から学ばせていただいことを今後は次代へと引き継げるよう精進します。大変長い間、誠にありがとうございました。
ご退職された後も、変わらずご指導、ご助言いただけましたらありがたく存じます。それでは、お体にお気をつけて、第二の人生を謳歌されますことを祈念し、お礼とさせていただきます。
謹白
令和○年○月
○○○○(氏名)
○○ 様
同僚など親しい間柄の定年退職者へ手紙の例文
拝啓 早春の候、まだ寒い日が続きますが、お元気でしょうか。
○○さんが定年を迎えご退職される日が近づくにつれ、いてもたってもいられずペンを取りました。
本来なら直接会ってあれやこれやと昔話を肴に一杯やりたいところですが、決算期が迫り日本に戻ることも難しく手紙にてご容赦ください。
○○さんとは新人のころから時に笑い、時に涙し、充実した時間を過ごさせてもらいました。お互い責任あるポジションを任せられるようになってからは頼りになる相談相手としてこれほど心強い存在は他にいませんでした。
振り返ればまさに激動の30年だったと思います。お互い思っているほど、もう若くはないので、まずはしばらくは歴戦の疲れを癒やしてゆっくりしながら、第二の人生を謳歌してください。
帰国したら必ず連絡します。仕事を離れても、引続きお付き合いいただければ幸いです。
では、最後になりますが、□□様の益々のご活躍をお祈りしております。
敬具
令和○年○月
○○○○(氏名)
□□ 様
構成/編集部