アップサイクルの注意点
アップサイクルに取り組む際は、素材の安定的な回収が難しい点や、そもそも『アップサイクル=廃棄物ゼロ』ではない点を理解しておく必要があります。アップサイクルの二つの注意点について詳しく解説します。
素材の安定回収が難しい
アップサイクルは、本来捨てられるはずだった素材を新たな製品に作り替える手法です。デメリットとして、アップサイクル製品を製造するために活用できる廃棄物の量を、正確に予測するのが難しいという点が挙げられます。
アップサイクル製品を製造するためには、素材となる廃棄物の確保が必要不可欠です。廃棄物を安定的に回収できない可能性が高い点には、十分に注意しましょう。
一般的な製造計画においては、毎月確保できる資源の量を正確に予測しながら製造数を設定しますが、アップサイクルの製造計画は流動的になりがちです。素材によっては、アップサイクルのためにかかるコストが大きくなるリスクもあります。
アップサイクル製品の開発パートナーを見つけるのが難しいというデメリットもあるため、慎重な計画・施策の立案が欠かせません。
アップサイクル=廃棄物ゼロではない
アップサイクル商品に人気が出るということは、新たなアップサイクル商品を製造するための廃棄物が出続けるということでもあります。つまり、アップサイクル製品を製造する限り、廃棄物はゼロにはならないというジレンマが生じるでしょう。
このジレンマを解消するためには、アップサイクルによって廃棄物を循環させながら、最終的にはゼロウェイスト(そもそも廃棄を出さないこと)を目指していく計画が理想的です。
アップサイクルの具体例
国内外を問わず、アップサイクルに取り組んでいる企業や組織は数多くあります。これからアップサイクルに取り組むなら、他社の事例を参考にするのがおすすめです。注目したい事例を四つ紹介します。
日本の事例1:不要なタンスをアートに昇華
株式会社家’s(イエス)では、不要になったタンスをアートとして改修し、月額数千円からの金額でレンタルできるサブスクリプションサービス『yes』を展開しています。同社ではサブスクリプションサービスを始める前から、家具の再生事業を手掛けていました。
事業の過程でまだ使えるタンスが次々と廃棄されている現状を目にしたことで、タンスにアート性を持たせたデザインを施し、寿命を伸ばすアップサイクルの取り組みを開始します。
アップサイクルによって新たな価値を持ったタンスは、多くの消費者から問い合わせを受けるようになり、飲食店やホテルのロビーに設置したいという声もあるようです。
循環型アップサイクル家具のサブスクリプションサービス | yes
日本の事例2:学校備品をインテリアに
アップサイクル家具ブランドの『tumugu upcycle furniture』では、学校で使われていた用具を、アップサイクルによってインテリアや文房具などに生まれ変わらせ、ECストアで販売しています。
校舎に置かれているような落書き・破損のある椅子は、入れ替えのタイミングで粉砕されて廃棄されます。また、児童が使っていたランドセルは自宅に保管されたままになっていたり、規格の変更で販売できなくなったりするケースが多い現状に着目しました。
学校の椅子の背板をハンガーに生まれ変わらせたり、ランドセルの『かぶせ』のパーツを使って時計を作ったりと、ユニークな発想でデザイン性の高い製品を生み出しています。
tumugu upcycle furniture | upcycle interior アップサイクル家具のセレクトショップ
海外の事例1:電子廃棄物を利用した時計
イギリスのメンズアパレルブランド『VOLLEBAK』では、電子廃棄物となったコンピューターのマザーボードやテレビの配線・スマートフォンのマイクロチップなどをアップサイクルして、世界に一つしかない時計を作っています。
年々増加し続けている電子廃棄物の問題にアプローチするこの時計には、『Garbage Watch(ごみ時計)』という名称が付けられました。
廃棄物から作られたとは思えないほどカラフルで印象的なデザインの時計で、電子廃棄物に関する問題を再認識するきっかけを投げかけている事例です。
Garbage Watch. Built from the tech the world threw away in the trash.
海外の事例2:廃タイヤからサンダルを製作
インドネシア・バリ島のフットウェアブランド『Indosole』は、毎年大量に廃棄されるタイヤに着目して、廃タイヤから作られたインソールを活用したサンダルを販売しています。
中間処理場に放置されたり河川に不法投棄されたりした廃タイヤは、環境汚染の重大な原因となっています。また、廃タイヤは蚊が大量繁殖する基点となり、感染症の流行に関与しているという問題も深刻です。
Indosoleでは、廃タイヤからインソールを作成する独自の技術を活用し、インドネシアの環境汚染の軽減に貢献しています。
構成/編集部