コアコンピタンスを見つける手順
自社にとってのコアコンピタンスの見つけ方を紹介します。正しいステップを踏んで探求していけば、企業の命運を懸けられるコアコンピタンスを見極められるはずです。
強みを洗い出す
コアコンピタンスを見つける最初のステップは『強みを洗い出す』ことです。自社のコアコンピタンスになる可能性がある強みを、できるだけ多く挙げていきます。
強みを洗い出す手法としておすすめなのが『ブレインストーミング』です。ブレインストーミングとは、複数人でアイデアを出し合い、創造的な発想にたどり着くための会議手法です。ブレインストーミングで自社の強みと思える事柄を挙げていきましょう。
ポイントは、経営陣だけで進めないことです。あらゆる部門の社員に参加してもらうことで視点が増え、思いもよらない気付きに出合える可能性が高まります。
他に『SWOT分析』や『PPM分析』も、強みを洗い出す際に使える手法です。
強みを評価する
徹底的に強みを洗い出したら、導き出したそれぞれの強みを評価します。評価のポイントは、コアコンピタンス経営の3条件をクリアしているかどうかです。
加えてコアコンピタンスを評価するポイント(模倣可能性や代替可能性など) についてもチェックしていけば、その強みがコアコンピタンスとして適切かを判断できます。
強みを評価する上では、数値化が有効です。基準点(ベンチマーク)として競合他社を分析し、相対的に点数を付けていくとよいでしょう。他社との比較が難しければ、求める基準を100として評価していくのもおすすめです。
強みを絞り込む
強みを評価した後は、挙げた強みを絞り込みましょう。評価して点数が高かった項目を機械的にコアコンピタンスとして設定するのはおすすめできません。多角的な視点から精査し、絞り込む過程が必要です。
強みを絞り込むに当たっては、以下の点も考慮しましょう。
- その技術をコアコンピタンスとして育てていきたいか
- 将来的にも競合他社にまねされるリスクはないか
コンピタンスに設定する自社の強みは、企業経営を大きく左右する重要な決断です。自社の将来を見据え、できるだけ幅広い部門を巻き込んで絞り込みましょう。
コアコンピタンス経営の成功事例
コアコンピタンスを経営の中心に据え、成功を収めた企業の事例を紹介します。事例を確認すれば、コアコンピタンスの実像をイメージしやすくなるでしょう。
本田技研工業
本田技研工業のエンジン技術は、成功したコアコンピタンス経営の代表格です。自動車の排ガスによる大気汚染が社会問題化していた時代、規制の強化を見越した同社は、先んじて大気汚染対策の専門研究所を設立します。
企業のリソースを大気ガス研究に注ぎ込んだ結果、生まれたのが低公害技術を生かした新型エンジン『CVCC』です。
CVCCは世界でいち早くアメリカ環境保護局の認定を取得し、厳しい基準をクリアしました。これにより自動車の分野で後発組だった同社は、『技術力のホンダ』というイメージを世界的に確立します。
開発されたエンジン技術は、除雪機やオートバイなどさまざまな商品に応用され、企業独自の技術として同社の経営を支えています。
参考:ヒストリー | 会社案内 | 企業情報 | Honda公式サイト
富士フイルム
富士フイルムの精密技術も、コアコンピタンス経営の成功事例といえるでしょう。同社はフィルムカメラが全盛期だった頃、多くのシェアを維持していました。しかしデジタルカメラやスマホの普及によりフィルムカメラの人気が低迷すると、フィルムの売上は大幅に減少します。
窮地に立たされた同社は、フィルムに活用していた技術を美容や医療の分野に応用し始めました。マイクロレベルの精密な技術と、フィルムに用いていた高品質なコラーゲンを生む技術を生かし、今までに参入していなかった分野に踏み込んだのです。
独自の能力を幅広い分野や商品に応用させ、新しい主力商品を開発するに至りました。
構成/編集部